第3章: 記憶の谷

**(16年前)**


ミユキのレーニン村への到着。旅人の謎が村にやってくる。


「*あぁ…あぁ…あぁ!*」


「*逃げるな! - この女め!*」


「(原初の力 – 呪われた血:永遠の茨)」


ミユキは攻撃を繰り出し、茨の壁を作り出して追ってくる者の進路を断つ。壁を避けながら手を上げ、素早く後ろを振り返り、黒い霧を召喚して視界を遮る。


「*ちっ、くそっ、何も見えないじゃないか*。」


「*逃げるな! - 遅かれ早かれ捕まえるぞ*…。」


霧雨の夜、冷気が谷を覆い始め、視界はほとんどゼロ。ミユキは全力で走り続けるが、体力は尽きかけていた。彼女は背中に背負った荷物を守るように抱え、絶望的な状況でも息を切らしながら走り続ける。


彼女の後ろには、武器と鎧を持った3人の追っ手が殺気を放ちながら走っている。ミユキはその荷物を強く抱きしめながら必死に守ろうとする。


「*バァ! - バァ!*」


「*…!!*」


「*しっ、泣かないで、大丈夫だから*。」


その荷物は赤ん坊だった。赤ん坊の泣き声が追っ手たちを警戒させる。ミユキは赤ん坊をなだめようとするが、その声には不安と恐怖がにじみ出ていた。


ミユキはこの場所から逃げ出す方法を必死に探る。


彼女は奇妙な言語で呪文を唱える。


「(神聖の起源:星の夢)」 - 【古代語】


呪文が完成すると、彼女の手から白い不思議なオーラが放たれ、それが赤ん坊の額に触れると、赤ん坊は深い眠りに落ちた。


その直前、追っ手たちは赤ん坊の泣き声を聞きつけた。


「*聞こえたか、あっちだ!*」


「*ちっ、あの女め、待っていろ!*」


「*落ち着け、お前たち。焦るな。この状況では忍耐こそが最も重要だ。女王が遊びたがるなら、行動を促してやれ*。」


他の2人が焦る中、3人目の男は冷静だった。彼は殺し屋としての余裕を見せ、言葉でその力を示す。


雨が止まず、冷たい谷で追っ手たちの足音が次第に近づいてくる中、ミユキは赤ん坊を守るための方法に迷っていた。


彼女は反射的に行動し、手で必死に穴を掘り始めた。その手は傷つきながらも、穴の中に何かを隠す。


そして再び全力で走り出した。その足音は大きく響き、追っ手に気づかれるほどだった。


「*あそこだ、早く!*」


「*ちっ、あの魔女め、逃げやがった!*」


ミユキは迷うことなく走り続け、追っ手たちを引き寄せる。3人目の男はミユキの行動に疑念を抱き、他の追っ手たちに言った。


「*待て!…何かがおかしい*。」


<隠れるためにあれほど努力したのに、安全だった場所からわざわざ出てくるなんて意味がない。何かがおかしい。*女王様、一体何を考えているんだ…?*>


「*お前たち、あの女を捕まえろ。俺は別のことを調べに行く。この女は何かを隠している。俺たちに知られたくない何かをな。*」


「*ちっ、好きにしろ。俺たちはお前の命令なんて聞かない。俺たちはボスの指示に従ってるだけだ。*」


「*急げよ、楽しいところを見逃すぞ…ははは!*」


「*まあまあ、焦るな。最後の楽しみは俺に残しておけよ。*」


ミユキが全力で走る中、男たちは彼女の後を追い、周囲の葉や枝をかき分けながら迫ってくる。ミユキは赤ん坊を守りながら、谷の先に光を見つける。


「*…!*」


「*ははは!逃げ場はもうないぞ!*」


「*この魔女め、谷全体を走り回らせやがって。ただその遺物を渡せば、見逃してやるのに。*」


「*あんたたちなんか…信じられるわけない…ただ楽しみのために殺すだけの最低なやつらだ。*」


「*ちっ、この口の悪い女め、その汚い口を切り裂いてやる!*」


「*待て。下手なことをすると遺物を取り戻せなくなる。それに見ろ、もう行き場がない。一歩でも間違えれば、あの崖から落ちるだけだ。*」


ミユキは追い詰められていた。谷の終わりには底が見えない崖が広がり、彼女の体は限界を迎えていた。脚は震え、呼吸は荒く、意識が徐々に薄れていく。


「*バァ、バァ!*」


ミユキは意識を失いかけながらも、その場を逃れるために耐え続けていた。そして追われる前の記憶がフラッシュバックする。


(*お姉ちゃん、ここから逃げて。幸せはここにはないから、遠くへ行くんだ。*)


(*これが最後だ、絶対に諦めない。この悪を終わらせてみせる!!*)


(*ボス…ごめんなさい…もう無理です…俺たちは負けました…ボス――*)


(*原初の力………。*)


「*バァ、バァ!*」


「*…!*」


赤ん坊の泣き声を聞いたミユキは意識を取り戻し、低い声でつぶやいた。


「*落ち着いて、必ずここから連れ出すわ。この谷を出て、あなたたちが成長し、私のように苦しまない場所へ…。*」


ミユキがそう繰り返す中、彼女は左手をお腹に当てる。実は彼女が守っていたのは2人の赤ん坊だった。


ミユキは顔を伏せ、手を下ろして拳を握りしめた。そして、次第に声を荒げて、兵士たちに向かって怒りを込めて叫んだ。


「*お前たちには情けが一片もない!母親が子供を守る痛みを理解しようともしない!お前たちは…お前たちは…*」


「*心なんて持っていないのか?!恐怖に生きる気持ちがわからないのか?!子供たちが成長する姿を見るために生きる意味がわからないのか?!お前たちこそ殺人者だ!!こんな奴らが英雄だとでも言うのか?!…そうだろう、『堕ちた者たち』よ!*」


「*ちっ、くだらない女だな。苦しみを終わらせてやるんだから感謝しろ、この愚かな女め。*」


「*兄さん、落ち着けよ。焦らず楽しもうぜ。ははは!*」


他の兵士たちがミユキを脅す中、3人目の兵士が突然現れた。彼の腕には奇妙な物体が抱えられ、殺し屋としての血の渇きを示すオーラを放っている。


「*ほう、俺たちのことを知っているのか。まあ、女王様なら当然か。*」


「*おい、このクソ野郎。どこに行ってたんだ? この魔女がわけのわからないことをほざいている。何を待ってるんだ? 今こそこれを終わらせる時だろう。*」


「*ククク、もう待てない。あの女の血の色を見たいな。どんな色だろう? 赤、白、それとも女王様らしく…金色か?*」


「*まあまあ、落ち着けよ、お前ら。いいものは待つ価値があるんだ。*」


「*ハハハハハハハ!*」


「*何がそんなにおかしいんだ?*」


2番目の兵士が3番目の兵士に尋ねる。ミユキは状況に疑念を抱き、笑っている兵士にこう問いかけた。


「*何がそんなにおかしいの?*」


「*ハハ、まあな。お前が俺から逃げようとするその滑稽な試みか、それとも…これを隠そうとするその哀れな努力か。*」


「*……!!*」


「*ハハハハハ!*」


「*これで終わりだ、女王様。*」


白い首飾りが3つの円で繋がり、赤い炎のように鼓動する白いオーラを放っていた。その円の中心には、それぞれ古代の言葉が刻まれている。


兵士はミユキが逃げる前に埋めたものを見つけた。兵士たちは笑みを浮かべ、満足した表情を見せながら、もう探す必要がなくなったことを喜んでいた。


ミユキはその様子を見てうつむき、拳を握りしめていた。彼女の計画が思うようにいかなかった悔しさを抑えているように見えたが…実際にはそれを演じていただけだった。


「*フフ。*」


「*…!*」


「*何がそんなにおかしいんだ、女王様?*」


「*フフ、別に。ただ…感謝を伝えたかっただけ。*」


「*はぁ!? お前、何を言ってるんだ、魔女。ついに気が狂ったか?*」


ミユキは顔を上げ、微笑みながら兵士に言った。


「*呼んでくれてありがとう。*」


「*はぁ?*」


「*…!?*」


「*な、なんだとぉ——*」


「*オオオオオオオオオッッッ!!!!!!!!!!*」

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