第26話 アザレア父娘と再会

 レンジャーの少女は、ボクを見つけるなり席を立って抱きつく。


「父さん、コーキさんよ!」


「おう、コーキじゃねえか!」


 カウンターで飲んでいたガルバが、ボクに向けてジョッキをかざす。


 みんなで、テーブル席につく。

 

「お久しぶりです、コーキさん。雰囲気が変わりました?」


 チキンの照り焼きを食べながら、アザレアが聞いてくる。


「まあね。カブトを新調したんだ」


 前につけていたマスクは、ティンバーさんを助けたときに壊れてしまった。


 なので、パロンに作り直してもらっている。


 今回のカブトは、頑丈にできているため、めったなことでは壊れないはず。


「そんなフルヘルムを被っていて、食いづらくねえか?」


 ガルバが、ボクのためにごちそうを頼んでくれた。


 好意に甘えて、ボクはチビチビとつまむ。


 パロンはまったく遠慮しないで、バクバク食べているけど。


「声をかけてくれて、ありがとう。またいっしょに、冒険をしてくれますか?」


「もちろんだよ、アザレア!」


「やった! 今回は、どちらへ?」


「港町の、コラシェルだよ。パロンの知り合いに、会いに行くんだ」


 ガルバやアザレアたちと昼食を食べながら、旅の目的を話した。


 コラシェルでは、香辛料や新種の豆類の他に、家具を手に入れるつもりである。


「なるほど、コラシェルか。あそこは、高級住宅街だぜ」


 港町コラシェルは、魔王との戦いのときも、あまり被害が出なかった土地らしい。


「魔王が北の王都・ダリエンツォにかまけていたからな。南にあるコラシェルはたいした損傷がなかったそうだ。で、海路を経由して、王都と連携を取っていたらしい」


「そうなんですね」


「有名なのが、発明家のティンバー殿だな。幅広い馬車や、下水処理設備なんて、あの方が作ってくださったんだ。冒険者証も、ティンバー殿がいなかったら、未だにデカい木の板だったろうよ」


 ティンバーさんって、世界にかなり貢献している発明家さんだったんだなぁ。

 

「そのコラシェルで、何がほしいんだ?」


「調味料、主に香辛料ですね。それと、おしゃれな家具を手に入れようかと」


「家具か。いいな。オレたち冒険者からすれば、家具なんて便利であればいいやって思うが、カカアからすると、案外大事なもんだって聞くぜ」


「奥さんなら、そういうでしょうね」


 ボクには家具なんて、必要ないかもしれない。ボクはゴーレムだし、洋服もある程度あれば足りるだろう。とはいえ、小屋だけというのも寂しい。 


 パロン用の家具はあるが、ボクやクコの分がない。なにかあると、生活感が出ていいなと。

 作るから、廃材でも構わない。


「じゃあオレらは、カカアにあいさつをしてくるから。馬車乗り場で落ち合おう」


「また会いましょう、コーキさん」 


 ガルバと一旦別れて、ボクは馬車を購入した。四人乗りにしては、大型馬車である。牽引する荷台も大きい。


「そうだ。馬車を強化するね」


 荷台の車輪を大きくして、接合面も太くした。これなら、悪路でもちゃんと進めるだろう。大きい馬車の移動を、想定できるし。


 また、規格外の大きな馬車が横断するかも知れない。なので実験用として、大型の馬車に設定をしてみた。


「なんなら、土壌を整地していこうよ。道だってわかるように」


 馬車となると、揺れもひどくなる。そんな状態で薬品なんて作れば、酔ってしまう。


「土魔法で、なんとかできるだろうし」


「ありがとうございます、コーキさん」


「じゃ、出発しよう」


 港町に向けて、ボクは馬車を引いた。


 馬車から土魔法を地面に振りまいて、道を整地していく。


「ホントに、これをコーキがやったのか」


 整備された道を進みながら、ガルバが口を開いた。


「魔物除けの陣を、施しておくね」


 ボクが整地した土ブロックに、パロンがさらに魔法の粉を振りまく。


 カラフルな砂が、魔方陣を描いた。


 これが、魔物除けになるらしい。


「そうだよ。コーキってすごいんだから」


「すげえとは思っていたが、コーキはガチで立派なことを成し遂げているぜ」


 ボクは、みんなの役に立ちたいだけなんだけどね。


 さっそく、カマドウマモドキのモンスターが現れた。数は少ないけど、ガルバからすれば脅威だろう。


 根絶やしにしたはずのカマドウマモドキが現れたのは、港町に近づいたからか。


【アタック・トーテム】は大樹と連結させていて、根っこを伝って自動発生するようには作ってある。けど、まだコラシェルの方は魔物撃退が進んでいない。


 ティンバーさんたちは、どうやって帰ったんだろう? 執事さんたちに守ってもらったのかな?

 

「ファイアボール!」


 ボクは、火の玉を飛ばす。


 カマドウマは、一瞬で焼け焦げた。


「ちょっとまって」


 威力が高すぎる。


 ファイアボールの火力が、アタック・トーテムを軽く超えていた。


 こんなに強かったっけ? ボクって。


「コーキ。なんか、前より強くなってねえか?」


「どうなんだろう?」


 なぜか、定期的に経験値が入ってきていたけど。 


「トーテムやマッドゴーレムが倒した分も、経験値が入っているみたいだね」


 召喚したトーテムやゴーレムが、魔物をやっつけてくれているからか。

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