第17話 大樹からのギフト
ダンジョンで手に入れた苗木が、立派な大樹に変貌を遂げた。しかも、一晩で。
ボクは、大樹に触れてみる。
ちゃんと、脈打ってるな。中身も、スカスカじゃないや。
故郷に帰ってきたけど、最初は荒れ地になっていて不安だったみたい。でも、ボクが大地を蘇らせたから、成長できたと喜んでいる。
気に入ってもらえて、なによりだ。
場違いなほど大きな実が、大樹からボトリと落ちてきた。見た目は、米俵くらい大きなプラムである。
木の実からは、ザバッと大量の種が。
「この種をくれるの?」
もう一度大樹に触れて、確認を取る。
どうやら、植えればいいみたい。
「キミの魔力って、ほんとにすごいんだね」
ショートパンツのパジャマを着たパロンが、目をこすりながら起きてきた。
「こっちの菜園も、育ってるよ」
ボクがあげた枝から、たくさんのトマトが実っている。
果樹園にはブドウだけではなく、いちごやメロンも実をつけていた。
「ここまでくると、交易だってできそうだよ」
すごいな。一晩でここまでの作物が作れちゃうなんて。
「この種を、あちこちに植えてみようと思うんだ」
ボクは、大樹からもらったアイテムを、パロンに見せる。
「一部はそうだけど、違うのも混じっているね。こっちは、ステータスアップに使う種だよ。キミが食べたらいい」
どうやら、ステータスを上げてくれるアイテムも、大樹は用意してくれていたらしい。
「ボクのためのアイテムなの?」
「きっとそうだよ。この苗木を育てたのは、他ならぬキミだからね」
では、いただきます。
一粒食べるごとに、ステータスが上がっていく。
しかし、ランダムのようだ。
やはりボクの能力値やジョブに合わせて、種の効果も変わるみたい。
― ■ *** ステータス表 *** ■ ―
名前 コーキ
レベル 一五
各ステータス
【体力】
四四 → 六〇
【魔力】
七三 → 一〇二
【素早さ】
一五 → 三六
残りステータスポイント
〇
― ■ ************** ■ ―
魔力のステータスが、一〇〇を超えちゃった。
もらった種の中には、スキルポイントを上げる個体もあるらしい。
「スキル表のチェックも、忘れないうちにやっておきな」
「わかったよ、パロン」
ボクは、スキル振りも行う。
― ■ *** スキル表 ***** ■ ―
●戦闘用スキル
【ソーンバインド】
二 → 六
【召喚】
一 → 四
【ロックスロー】
一 → 三
【アタックトーテム】
二 → 七
●生産用スキル
【クラフト】
三 → 八
【探知】
二 → 五
残りスキルポイント
三
― ■ ************** ■ ―
「どえらい強くなったのう」
賢人クコが、ボクの肩に乗る。
「うん。大樹のおかげだよ。水の吸収率もよくなってる。大樹が、浄化してくれたんだ」
魔物との戦闘に地下水を利用したことで、水源は確保できた。
これでボクも賢人クコも、干からびなくて済む。
大樹も、これからは自分の力で仲間を増やしていけるだろう。
果実の枝を枯れ木に接ぎ木して、酒の原料になるブドウを育てる。今はクコしか飲まないから、一本でいい。クコも枯れ木から【ソーンバインド】を喚び出して、光合成の足しにする。
「コーキよ。これからどうするのじゃ?」
「井戸水を拠点に、家を建てようかなって」
自分の身体から伸びてきた苗木を折って、地面に刺す。
「これで、丸太の素材になる木材が育つらしいけど」
ボクが世界樹でできていると言っても、いきなり丸太レベルの木を生やせるわけじゃない。最初は小さい苗木しか作れないようだ。
手持ちの丸太は、もうなくなった。
「パロン。ボク、決めたよ。こんな危険な場所、放っておけない」
ここを拠点として、緑あふれる土地に生まれ変わらせるんだ。
「いいアイデアだと思う」
パロンも、賛成してくれた。
おそらくボクは、自然を再生させるために生まれてきたんだ。ここを緑ある自然を取り戻すために。
「でも、みんなを巻き込むことはできない」
せっかく外の世界に来たんだ。冒険に出られないなんて、ありえない。
この地は、ボクだけで開拓するべきだろう。
「ナニを言ってるんだ? 手伝うに決まってるだろ?」
「パロン、本気で言っているの?」
「もちろん! こんな面白そうなこと、見逃すわけないだろうに」
面白い? 荒野の開拓が?
「そうじゃ。お主の果物から作った酒なら、ワシも付き合うぞよ」
クコまで。
「人生のほとんどを、棒に振るかもしれないんだよ?」
「構うもんか。ワタシたちの人生は長いんだ。人間なら、やめておけって言われる活動だって、長寿族のハイエルフなら特に問題はない。少しずつ、問題を解決していこうじゃないか」
「でも、旅が続けられなくなる」
「可能さ。というか、必須かも。石を破壊できるドワーフを雇ったり、荒れ地に強い作物を探したっていい。とにかく、この荒野を再生させるには、様々な人の手が必要だ」
アプレンテスを開拓するために、旅はとても大事だと教わった。
「ワタシは一旦、自分の小屋を畳んでくる。こっちに移動させるよ」
シドの森にある小屋に、『店をアプレンテスに移動させた』と、看板を立てに行くという。そうすれば、自分の顧客や協力者が、そこまで来てくれるだろうと。
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