トゥエルブレーシングプロポを握れ

@amaguriko

第1話

速い と言う言葉ではありきたりで

風のように・飛ぶように・滑るように・そんな表現には意味が無く           操る者の意志を持つかの如く その小さなマシンは

突き進む方へと残像を残し・・突如現れ・・また消えてゆく・・・

                それが トゥエルブレーシング!!」


この物語は半世紀の歴史を持つ

JMRCA12/1電動レーシングカー全日本選手権を舞台に 

親から子 子から孫へと 日本一を目指した「イチムラ」を

名乗る者たちの物語である。



「ここには 私の好きな人がいて 

  沢山の仲間たちと一緒に

 大きな瞳を キラキラさせながら

   ミニ四駆を 走らせていた」




影炉の中 大きな建物の窓を覗き込む 一人の少女

麦わら帽子 白いワンピース 水色のサンダルのかかとを浮かせ

少し背伸びをした目線の先に 一人の少年の姿を追いかけている


真剣なまなざしの少年 疾走するミニ四駆 コースの中を

縦横無尽に駆け回り 仲間たちが一喜一憂する

両手をギュっと握りしめ 自分のマシンがゴールを切った時

満面の笑顔でよろこびを表していた。


歓喜の中の中心にいる少年の笑顔に 少女も自然と笑っていた

少し恥ずかしく そう少しハニカミながら少年の笑顔を見つめている

大切に 大切に見つめている 大きな瞳をキラキラさせながら


一人の女性がホースを使いけだるそうに打ち水をしている

大きな麦わら帽子 白いTシャツ ジーンズにハイカットのスニーカー

彼女がこの建物の店員さんだと一目でわかる

RCパークとプリントされたTシャツ 胸元の名札 

そして何より 彼女の大きな胸を少し締め付けたエプロンには

赤と青の星のマークが並んでいた


大雑把に打ち水を済ませ ホースを片付け一息ついた彼女の視線の先に

一人の少女の後ろ姿があった。

両手で窓枠を掴み 少し背伸びをしながら店内を覗き込む少女の姿に

興味とかわいらしさを感じた ゆっくりと少女に近づく

声をかけるより少女が覗き込む何かを知るため 少女の背後に近付き

膝に手をやり目線を落とす


気配に気付く少女 振り返るとニコッと笑う知らない女性

驚く少女 憧れの少年をのぞいていたことを悟られないように

視線を逸らすも 顔が赤くなってしまう


逃げ出す少女 


あっけにとられる店員の女性 

走り去る少女の後ろ姿を少しの間眺めていた

小さなため息を一つ 気お取り直し少女の覗き込んでいた窓から

店内をうかがう


そこには表彰台の一番高いところに上る「石原匠」と言う少年の姿があった


彼女は知っていた 石原匠と言う少年を


彼女は理解した 少女の見ていたものを


かつて自分が経験した幼き恋心を思い出し 

心をくすぐられたような

笑みを浮かべた


蝉時雨 入道雲 影炉立ち込める


夏の日の出来事




四年後


東京都府中市にある RCパーク「さいくろん」 

あの日と同じ 影炉の中 お使い帰りの少女が 

RCショップの窓を覗いていた


あの日と同じ あの窓から「石原匠」を探していた

小さめの麦わら帽子 ひざ下までの白いワンピース 

ビーズのちりばめられた水色のサンダル 

もう背伸びをすることなく 成長した少女は 膝に手を当て

腰をかがめて 店内の様子をうかがっていた


悲しげな顔をする少女 あきらめのため息を付いた時



聡美 「そこからじゃ 見えないわよ た く み 君」


あの時の女性店員がニコリと笑いながら少女に声をかける

慌てふためく少女 お目当ての石原匠を言い当てられてビックリして

気が動転して恥ずかしくなり顔を赤くしながら女性店員から目線を逸らす


聡美 「こっち こっちよ」


手招きをする女性店員 もじもじする少女 ためらう少女の手を引き

少し強引に歩き出す女性店員 鼻歌を歌いながら建物の角を左に曲がる

目的の窓がある 同じ大きさ同じ高さの窓 女性店員が店内を見渡す


聡美 「ほらぁ いた いたぁ」


少しビックリする少女 心の準備が出来ていない

恐る恐る窓から店内を見渡す少女 石原匠の姿を探す


店内の一番奥にある 青いカーペットのラジコンコース

操縦台の上 プロポを握る 石原匠が立っていた

少し冷めた目線の先 白地に赤のファイヤーパターンの

自分のマシンを追いかけていた


自然と笑みがこぼれる少女 匠の姿と匠の操縦する

ラジコンカーを追いかけている


少女の横に立ち 匠の姿に視線を置きながら 

女性店員が嬉しそうに語り始める


聡美 「石原匠君 凄いよねぇ小学六年生でミニ四駆の全日本チャンピオン

    オープンクラス 大人も交じっての日本一だよ 

          ホント 凄いよねぇ  知ってた?」


少し腰を曲げ少女の顔を伺う女性店員 


憧れの少年石原匠が日本一になっていた事の驚き 喜びと

そのことを知らなかった自分への悔しさ 複雑な感情が少女の口を開かせた


咲良 「日本一?  でも小学校別々だったから知らなかった」


石原匠を見つめる瞳が下を向きどことなく寂しげな少女  


苦笑いする女性店員


聡美 「あははは  そうなんだぁ~」


一瞬の沈黙 少女を元気付けようと急ぎ早に話を進める女性店員


聡美「いっ 今はねっ 匠君 ミニ四駆卒業して 中学からラジコンに

 夢中になって夏休みは ほぼ毎日ここで自分の車走らせてるからぁ~

  あなたも毎日くればぁ~」


早口で匠の事を話す女性店員に 初めて目を合わせ一言つぶやく少女


咲良 「ラジコンですか?」


少しあっけにとられる女性店員 それと同時に初めて目を見て答えてくれた少女に丁寧にそして熱く語り始める


聡美 「ラジコン そうラジコンカーね! 今匠君が夢中になって

  走らせているのはトゥエルブレーシング 12/1電動レーシングカー 

   すっごく速くて すっごくシビアで すっごく難しいんだけど


「空気を切り裂き 車を前へ前へと蹴り飛ばす

               タイヤ モーター バッテリー

 

50年近い歴史の中で究極の速さの結晶を追い求めた人間が

  試行錯誤を繰り返し一切の無駄をそぎ落とした車体コンセプト


百分の一秒を争うレースの中 

 繊細なスロットル ステアリングワークを駆使しながら

  操る者の意思を持つかの如く コースを駆け巡るあの残像感!!! 


 他のカテゴリーでは絶対に絶対に絶対にぃ~味わえない


 スピードの魅力 魔力 そして暴力が あの小さなマシンに 

    ぎゅ~っとぎゅ~っとぎゅぎゅ~~っと 凝縮されて・・いてっ」


      「ハァハァハァ・・・」


息を粗くし熱く語る女性店員 ふと我に返り咳払いをする


聡美 「んっうんっ!」


 「いやぁ~ごめんね こんな話 女の子にはつまんないよねぇ~」


苦笑いの女性店員 しかし少女は目をキラキラさせながら

小さな声を段々とそして力強く彼女に応える


咲良 「匠君すごい! ラジコンすごい! 

         匠君凄いです! ラジコン凄いです!!」


意外な応えに驚いた女性店員 少しの間を置き 

うれしくなり自然と笑みがこぼれ

目を輝かせる少女にハニカミながら優しく語りかける


  聡美 「そうね  そんな車  そんなラジコンカーを

       大好きで 恋していて 愛しているのよね 彼 匠君は」


女性店員のその言葉にはっとさせられる少女 

店内の匠の姿を追う瞳に少しだけ涙が滲む 

そして今は亡き父のことを思い 心の中でつぶやいた


咲良 (パパも  パパも 同じ気持ちだったのかな?)


見つめる匠の姿に亡き父の姿を重ね合わせる少女 

一粒の涙が彼女の左頬をつたう


聡美 「そうだ あなたもやってみない? ラ・ジ・コ・ン♡」


いきなりの提案に驚く少女。 


聡美 「大丈夫 お金ならかからないし 私が教えてあげるから」


エプロンのポケットからラジコンレンタル無料券を取り出し少女の前に

差し出す女性店員 それを見て受け取る少女


聡美 「もしかしたら 匠君と仲良くなれるかもぉ~なんてね!」


女性店員の言葉に 顔を赤くしてあたふたする少女 

無料券を突き返し逃げようとする


聡美 「じゃじゃーん!! ダメよ! 今日は逃がさないんだから!!」


少女の逃げ道を塞ぎ コンビニ袋を持つ少女の左手をつかむ女性店員


聡美 「つぅかぁ~まぁえたぁ~!」


腕をつかまれジタバタする少女


聡美 「逃げてちゃ 何にも始まらないよぉ~」


必死になって掴まれた手を振りほどこうとする少女


咲良 「うぅ~恥ずかしいぃ~恥ずかしいですぅ~」

怖いし 嫌われたらいやだし それに・・・」


聡美 「それに?」


咲良 「アイス  溶けちゃうし   」


少女の煮え切らない言い訳に 少しイジワルな質問をする女性店員


聡美 「アイスと匠君 どっちが大切なの?」


掴まれた左手の力を抜き 抵抗を止める少女 ポツリとつぶやく


咲良 「・匠  君   」


聡美 「う~ん 素直でよろしい!!」


鼻歌を歌いながら少女の手を引いて店内へと向かう女性店員


聡美 「タラァ~リっ リッタラ~ ふん ふん フン♡」


咲良 「えっ? えっ?  えっ~~~?」





自動ドアが開き 店内に入る二人 女性店員は意気揚々と 

少女はオドオドしながら レジの方へと向かう


レジ横にあるアイスケースに少女のコンビニ袋を放り込む女性店員


聡美 「これで ヨシっと!」


ラジコン貸し出しの用紙を少女に渡す女性店員


聡美 「これに名前書いてね」


渋々名前を書く少女


聡美 「どれどれぇ・イチムラ サクラ・ちゃん?・でいいのかな?」


コクリとうなずく咲良


聡美 「素敵な名前ね! 咲良ちゃん」


自分の名札に手をやる女性店員


聡美 「私は横堀聡美!! 

聡美さんでも 聡美ちゃんでも好きなように呼んでね!!」


満面の笑顔を咲良に向ける聡美


聡美 「にひぃ~♡」


聡美は知っていた。初めての出会いから四年間 

咲良があの窓から何度も石原匠を探しに来たことを


聡美はうれしかった その一途な少女の思いを 恥ずかしがり屋の

少女の背中を押してあげることが出来たのならば と


無邪気な聡美の笑顔に少し安堵の表情を浮かべる咲良。ぎこちなくだが


咲良 「よぉ  よろしくお願いします」




聡美 (さてと 何で遊べばいいのかな?)


レンタルラジコンコーナーで物色する二人


聡美 「う~ん?」

(女の子だからコミカルなバギーとかいいと思うけど

 屋外のオフロードコースだと匠君と離れちゃうし・・・

  かと言っていきなりトゥエルブやらせるのは無理があるしぃ~・・)


悩む聡美の横で「パーマンプロポ」を見つめおもむろに手に取る咲良


聡美 「それ 可愛い形してるでしょ パーマンの胸のバッチに

      似てるから通称パーマンプロポって呼ばれてるのよ」


コクリとうなずきプロポを握りしめる咲良


聡美 「そうだ! MiniZレーサー ミニッツがいいよぉ~」

   (これなら室内で遊べてコースもオンロードの隣で匠君の視線に

     入ることだし 多少ぶつけても壊れたりしないから ♡)


聡美 「それじゃぁそのプロポのペアの車体はぁ~  げッ?」


ポルシェのCカーボディに所狭しと描かれた昔の美少女アニメキャラ

完成度の高い 痛車


聡美 「このぉ 悪趣味な車はぁ~ 」


レジに座るある人物に視線を向ける聡美


聡美 「店長ぉ~~」


ラジコン雑誌を読みながら二人の動向を見ていた大柄でちょっと

太っているこの店の店長「石政徹」腕を組み顔をあおりながら

聡美に向かって ドヤ顔する。


聡美 「何でドヤ顔? 何かムカつく!」


聡美 「咲良ちゃん その車よりこっちはどうかな?」


プロポと痛車を胸にだきかかえ 大きく首を「フンフン」と横に振る咲良


聡美 (あぁ~気に入っちゃったみたいねぇ~)




店内がざわつき始める ミニ四駆で遊ぶ小学生たち

 

「女子だ 女の子がラジコンするの? 」

「どうせぶつけまくって終わりだよ」「女には 無理だよ」と言う陰口が


匠たちのいるオンロードコースのピットからも冷やかしの目が向けられる


「女子ならコミカルバギーでしょ(笑)」

「女の子のお手並み拝見といきますか(笑)」

「どうせ 飽きてすぐに帰るっしょ(笑)」

「あのレンタルラジコン終わったな(笑)」


心無い言葉に聡美のエプロンを掴み委縮して陰に隠れてしまう咲良 その時


匠 「お前ら!  人のこと言えるほどうまくなったのかよ!」


静まり返る店内 リーダー格の匠の一言に冷やかしの言葉が消えていく。


匠 「全く どいつもこいつも ラジコンに興味持ってくれたんだから

     それでいいじゃねぇかよ!」


聡美 「さすが 匠君!」

(やっぱりミニ四駆全日本チャンプの言葉は伊達じゃないのね

 プップぅ~見てみて小学生のお子ちゃま達のしょぼくれたあの顔

  あなたたちからして見れば憧れの人 

   いや神様から怒られたのと一緒だもんねぇ


おっとぉ~こっちのグループは お通夜ですか? お葬式ですか? 

匠君よりずぅ~とへたっぴ~で昔からおんぶにだっこだったもんねぇ~(笑)


 匠君カッコいいよぉ~ホントにもぉ~ 十年若かったら私惚れてるかも♡)


聡美 「さぁ~咲良ちゃん 今ならミニッツのコース

  貸し切りだから 思う存分にやっちゃいましょうぅ~」


安堵の表情を浮かべ コクリとうなずく咲良 

ミニッツのコースに背を向けて

黙々と自分の車を整備する匠の姿にホッとする。



咲良と聡美 二人のやり取りを目で追いながら近藤健太が匠に声をかける


健太 「匠 あのコ 俺の隣のクラス 一組の 一村咲良って子だよなぁ チョット可愛いし お前のタイプかぁ~(笑)」


セッティングの手を休めず即答する匠


匠 「バーカ! そんなんじゃねぇよ・・・

あっ健太 グリップ剤塗っとけよ 充電終わったらコース出るぞ!」


健太 「相変わらずだよなぁ匠は 俺たち中二だぜ! 

好きな女の子の一人や二人いないのかよ!! 

せめて可愛い子の情報くらい頭入れとけよ!」


匠 「あぁ~ん? 三組の俺が何でわざわざ一組の

女子の情報入れとかなきゃいけねぇんだよ・・・

あっ健太 お前の車 トー角0.5度戻せ 高速コーナーアンダー出てたぞ」


健太 「もしかして あの子 匠のこと好きなんじゃね?」


セッティングの手を止めて 深いため息をつく匠だが

何事もなかったように 手を動かし始める 


健太が饒舌にしゃべりだす。


健太 「だってよぉ さっきからこっち お前のことチラチラ見てるし

あれは 恋する女の視線だな 間違いない

彼女通い始めるぜぇ~ そのうち匠も意識し始めてさぁ~

やがて二人は 恋から愛へ そして衝撃の告白」


健太 「匠君・・私・匠君の事が  ちぅ・ちぅ・・ちぅきぃ~~♡」


イライラの限界を超えた匠 テーブルのラジオペンチに手をかけ

健太の鼻をつまみ 少し痛いようにグリグリとねじりだす。


匠 「お前の饒舌な口を動かすサーボモーターのトリム調整は 

      右かな? 左かな?」


痛がる健太


健太 「右も左もありませっん!!! 

 ニュートラル ニュートラルでお願いしまっす!!!」


追い打ちをかける匠


匠 「おや? よく見たらお前の唇 スポンジタイヤより柔らかそうだな(笑)」


健太 「硬いぃ~硬いですよぉ~僕の口はぁ~!!! 

チタンのビスより硬く出来てますよぉ~~!!!」


匠 「丁度いい 新しいタイヤを 探してたんだよぉ~ 

その唇切り取ってこのリアホイルに接着すれば 

さぞかしグリップするとは思わないかなぁ(笑)」


健太 「ぼっ僕のお口は一つですよぉ~!!! 

二つ無いとバランス取れませんよぉ~~!!!」


匠 「おぉ~ 言うようになったなぁ~ 安心しろ!! 

  上唇を右のリア下唇を左リアに履けば 

        車は真っすぐ走ってくれるぞぉ~(笑)」


観念する健太


健太 「ごめんなさい! ホントすんません!! もう二度と言いません。

  もう金輪際 匠さんを 茶化すような真似は 致しません。

       タミヤの星のマークに誓いますから~!!!」



ふぅ~っと一息つき 椅子に腰かけセッティングの手を

動かしながら健太を諭す匠


匠 「年頃なのはわかりますよぉ~垢ぬけて来ましたからねぇ~最近の君は


健太 (えっ?イヤミ?・・これってイヤミだよね)


匠 「異性に対する興味 好奇心 熱意 分かります

 先生とっても分かります


健太 (先生? いつから先生になったの?)


匠 「だがしかし!!! 今はラジコンの時間です 悲しいです

先生とっても悲しいです


健太 (だから 先生ってなんなの?)


匠 「君の抱く その思い その好奇心 その熱意情熱のぉ~

 半分いや10/1いや12/1だけでもいいからさぁ~

  今はラジコンに費やそうとは思わんのかね? 近藤健太君」


健太 「相変わらず しゃれたイヤミが 効いてるんだよなぁ~」




手を止めて健太に物言う匠


匠 「言っておくけどなぁ 健太 俺はお前と組む気はない」


立ち上がり食ってかかる健太


健太 「なんでだよ 俺にマシン組んでくれねぇのかよ? 

 一緒に全日本取りに行くんじゃねぇのかよ」」


自分のマシンをぼんやり見つめながら語る匠


匠 「俺は自分より 下手なやつとは組まない 

 今のお前は俺より へたっぴ~だろ」


事実を突きつけられ ふて腐れる健太


健太 「そっ・そんなの 匠が異常なんだよ そんな型落ちの車で

この店のAメイン張ってる方がどうかしてるんだよ!」


上目づかい 健太の目を見て語る匠


匠 「関東でしかも東京都内でこれだけ広いカーペットコースのこの店だ マジでやってる奴らはここに集まる。

その中でのAメインだ さぞかし立派に見えるだろうがな」


いつになく真剣なまなざしで見つめる匠。固唾を飲む健太。




匠 「全日本選手権 なめるなよ 健太!!」


「この店のトップ3 レースのたびに俺を周回遅れにして行きやがる

その3人でも全日本では 決勝はおろか準決の下位を走るのがいいとこだろそんな世界なんだよ あの場所は   Aメイン決勝に出るヤツらなんか

頭がどうかしているぜ ネジの締め方一つで走りが

変わっちまうこのマシンを


笑いながら 冗談飛ばしながら キッチリ組み上げていく 

全国のラスボスクラスが操縦台にひしめき合うんだぜ 日本一目指してな」


委縮する健太 声が震える


健太 「そこまで・・差があるのかよ?」


ニヤリと笑う匠


匠 「ビビっちまったか 健太?

俺はなぁ しびれちまったんだよぉ

あこがれちまったんだよぉ 恋焦がれちまったんだよぉ

いつかあのラスボスたちをやっつけるって決めちまったんだよぉ」


「あの人に追いつき 追い抜くことをなぁ」


匠の視線の先 気だるそうに上の棚の商品に

パタパタとハタキをかける男性店員


匠 「あの人をまた 本気にさせるんだよ」


匠の視線の先を目で追い つぶやく健太


健太 「トドロキ ハヤテさん」


匠 「まっ そぉ~言う事だ! 俺にマシン組んでもらいたかったら 

 早く上がって来いよAメインにな」


健太 「わかったよ やるよ!! やってやるよ!! 

 ぜってーマシン組んでもらうからな」


匠 「おぉ~期待してますよぉ 万年Bメインの近藤健太くん♡」


健太 (ちっくしょうぉ~ 

俺のヤル気スイッチの押し方がいつも乱暴でスパルタなんだよなぁ)



自分の席に座り マシンのセッティングを始める健太


ふぅ~っと安堵のためいきを尽き 振り向きざまにボーっと

咲良の姿に目を向ける匠


匠 (いちむら? イチムラ? イチムラサクラ?

知ってるような 知らないようなぁ~?)


充電器が終了のアラームを鳴らす。


匠 「おっと 充電完了っと」




店長に新しい電池を入れてもらい一通りのレクチャーを受けて

コースに向かう咲良と聡美。 


聡美 「最初はゆっくり ゆっくりでいいからね」


コクリとうなずく咲良


操縦台に立つ咲良 パーマンプロポを左の肩にのせ独特のポーズを取り

深呼吸をしようとしたその時


聡美 「咲良ちゃん プロポはそう持つんじゃなくてぇ~」


隣にいる聡美に持ち方を直されそうになる咲良 首を振りそれを拒む


聡美 「ごめん ごめん プロポの持ち方なんて人それぞれだもんねぇ」



二人のやり取りを見ていた健太


健太 「やっぱり女の子だよなぁ かわいいよなぁ~あの持ち方♡」


匠 「いいんじゃねぇのぉ 好きなようにやってもらえば」


振り向き咲良の斜め後ろ姿を目にする匠 心の中でつぶやく


匠 (あのプロポの持ち方どこかで?) 




トクン・トクン  と心音が聞こえる 深呼吸する咲良 

人差し指をゆっくり ゆっくりと握ってゆく それにこたえるように

ステアリングホイールにそえた三本の指が小刻みに反応して 

小さなミニッツレーサーを右へ左へと舵を切り綺麗な八の字を描いていた。


聡美 「咲良ちゃん凄い!! 凄い上手よぉ~」


うなずく咲良 マシンの動きを凝視する 徐々にスピードを上げてゆく


啞然とする聡美 目を丸くして綺麗な八の字に


聡美 「えっ?」

 (もしかしてこの子経験者? 私より上手い八の字なんですけどぉ~)



寸分の狂いなく美しい八の字を描く咲良

 今は亡き父 純矢の言葉を思い出す


それは小さなころ初めてプロポを握った咲良にかけた優しい言葉




純矢 「いいかい咲良 初めての車さんと仲良くなるには

 車さんにお願いするんだよ」


咲良 「車さんに・おねがい・・・?」


膝を折り咲良と同じ目線に立つ純矢


咲良の握るプロポにそっと手を添えて八の字を描く


純矢 「車さん 車さん 

右に曲がってくれますか・・・

左に曲がってくれますか・・・

真っすぐ走ってくれますか・・・」




遠い記憶の中 忘れかけていた父の言葉 咲良の目に力が宿る


咲良 「車さん 車さん 

右に曲がってくれますか・・・

左に曲がってくれますか・・・

真っすぐ走ってくれますか・・・」




咲良 (それは魔法の言葉 大好きだったパパが教えてくれた 大切な言葉)




トクンと脈打つ心音が 力強く変わる 


消えかけた思いが鼓動と共に強い光に変わり心を満たしてゆく


取り戻した情熱が心臓を焦がす 


駆け巡る血潮が マシンとのつながりを求めずにはいられない




咲良 「私は     プロポを握る!!!」




マシンの挙動を頭の中に 刷り込むイメージを描く


左右に切り返すマシンの重心移動 スロットオンオフのピッチングの変化


スロットルを煽りマシンをスライドさせながら探るタイヤグリップの限界値


全ての動きを連続写真の一コマに置き換え スローモーションに再構築


映像の解像度を上げていく マシンとのつながり 見えない糸を紡ぐように




コースの中央を正確無比 なぞるように走るマシン

ラップタイムを告知する音声が2回3回と9秒9を告げる




ハタキの手を止め マシンの走行音に耳を澄ませ 振り向き

ミニッツのコースに目をやる男性店員 スタスタと店長の元へ歩み寄る


トドロキ 「誰なんです? あの子」


店長が目を潤ませ感動している!!


石政 「見ろトドロキ!!! あんな可愛い女の子が 初心者の女の子が

 俺の作った車 俺のこしらえた車を あんなに上手に走らせてるよぉ~」


トドロキ 「初心者じゃないですよ!」


石政 「えっ? 違うの?」


トドロキ 「経験者ですよ それもかなり上手い!」


石政 「なっ何で 分かるんだよ?」


トドロキ 「音ですよ 音! スロットルワーク!!」


石政 「音? スロットルワーク?」


トドロキ 「モーター音の伸びるフィール

メリハリの中に上手くつないでいくスロットルワーク


車が「気持ちいい」って 言ってるんですよ!」


トドロキ 「あんな初心者いてもらったら困りますよ

 天才通り越して化け物じゃないですか」


(まだまだ気付けないかな?   あいつには)


ミニッツのコースに背を向ける匠の姿に目を移す トドロキ 




トドロキ 「店長 あの車「赤モーター」積んでますよね」


石政 「あぁ ミニッツカップのレギュレーション

 いっぱいいっぱいだぁ」


トドロキ 「ラップタイム 上がりますよ!」


興奮を隠せない トドロキ ゆっくりとミニッツのコースに近付く




少しずつ走行ラインをイン側に寄せていく咲良 9秒8  9秒7 9秒6と

計ったようにコンマ1秒ずつ タイムを詰めていく


トドロキ 「上手い! そして見事だ! これこそがレコードライン

   イケる? いけるのか? このコースのベストラップ9秒2 

   ミニッツカップファイナリストがたたき出したコースレコード!!!」


9秒5このタイムで周回を重ねる咲良 マシンを見るというより

コース全体に視野を広げる ぼんやりと五つのポイントをマークする


トドロキ 「頭打ち? 上出来だ!! 

 初めてのマシン 初めてのコースでこのタイム

  こんな可愛いらしい女の子が 相当の練習量  いや鍛錬を!」




美しいレコードラインを描くマシンから操縦台へ 少女の姿に目を向ける


あどけない表情を想像した 

トドロキ ハヤテ   背筋が凍り付く




トドロキ 「うっ!? なんだ今のは!? 

なんなんだ? このザラつく違和感」


「有り得ない  いやあり得るのか     ?


   彼女は 今   車   マシンを   見ていない・・・!」




一瞬の静寂   全ての解放     モーターの音色が変わる!!!


「ヂュィィィィ~~~~~~~~~~~~~~ン!!!」




トドロキ 「来るぞ スーパーラップ」


ガタンと音を立てて立ち上がる匠 

振り返り二歩近づきコース全体を把握しようとする


アイコンタクトを取る トドロキ


トドロキ 「遅いんだよ 匠!」


匠 「気付いてましたよ ハヤテさん!」




二人の動向を察して沈黙を守る聡美




車速が乗り高速コーナーへ駆けるマシン


トドロキ 「はらむ オーバースピード!」


スロットルを抜かない咲良


咲良 (大きく ゆっくり スピードをのせて)


コースいっぱい アウトフェンス 1センチまで寄せてコーナーをクリア


トドロキ 「なに?  ヘアピン突っ込むぞ」


咲良 (アウト イン センター)


匠 「車速が 落ちない シケイン 二つ」


咲良 (小さく 小刻みに リズム  合わせて)


匠 「速すぎる! 何が起こったんだ? 来るぞヘアピンと中速コーナー」


咲良 (アウト センター アウト)


トドロキ 「ラインを くずした!?

シケイン ヘアピン 最終コーナー」


咲良 (車重をフロント グリップ 小さく 

スロットル 重心移動 リアグリップ)


トドロキ 「インリフト しながら  立ち 上がった」




咲良 (みんなパパが 全部パパが 教えてくれたこと

             後は点と 点を 結んで   駆け抜ける!)




「9秒0コースレコード」


沈黙が 店内を包み込む



聡美 「うおぉぉぉ 凄い すごいよ! 咲良ちゃん!」


店内の静寂をかき消すように 聡美がはしゃぎまくる


聡美 「コースレコードだよ! 咲良ちゃん!」


アツい抱擁 咲良の頬に自分の頬を摺り寄せる聡美


聡美 「むひひひひぃ~♡」


咲良 「聡美さん 苦しい チョット苦しい です」


我に返る聡美


聡美 「はっ ゴメンね咲良ちゃん 嬉しさのあまりつい」


店内の視線が二人に集中する


聡美 「えっへん!」


腕を組みあおるようにドヤ顔する聡美


聡美 「咲良ちゃ~ん 疲れたでしょう あっちで少し休もうかな?」


コクリとうなずく咲良を連れてレジ横にいる店長に車を預ける聡美




聡美 「店長メンテよろしく!」


勝ち誇ったように強い口調で物言う聡美


石政 「うん! うん!」


感動の余り泣きながらそれにこたえる店長


店の入り口横のベンチに座る二人




咲良を凝視しながら立ちすくむ石原匠 健太に向かって呟く


匠 「健太  あの子 何者だ?」


咲良の走りにあてつけられた健太


健太 「だから  俺の隣のクラスの」


目を見開き自分のマシンに目線をやりながら


匠 「あの子 俺のマシン 操ってくれないかな?」


何かを察した健太 匠に食って掛かる


健太 「それってどういう事だよ!! 自分のマシン預けるって

どういうことなんだよ 匠ぃ!」


ニヤリと笑う匠


匠 「悪いな健太 俺はあの子と組む  いや組みたいと思っている

あの子がOKしてくれればの話だけどな」


納得の行かない健太


健太 「何だよ それ! ミニッツが少し上手いだけで 

トゥエルブで通用するとでも」


健太の言葉を遮る匠


匠 「イコールだ ミニッツ=トゥエルブ トゥエルブ=ミニッツだ!」


 「あの小さなマシンにオンロードの基礎が詰まってるんだよ

お前にあのコースレコードは出せない  俺にも無理なのは理解している

 簡単な話だよ 健太  あの子は特別 俺たちとは格が違うんだよ!!」


事実を突きつけられても納得できない健太


健太 (悔しいな  ちくしょう!)


店の外へと歩き出す健太 何も言わずに見送る匠




店内のミニッツのコースを凝視するトドロキ  


咲良のスーパーラップの考察を始める


トドロキ 「新設のコースレイアウト 路面確認で9秒9を流しながら

レコードライン  お手本どうりのアウトインアウト 

タイムの出し方 計ったようにコンマ1秒を周回ごとに削っていくリズム感


 「そして 頭打ちと思われた9秒5の周回ラップタイム

この時点であの娘はマシンのフィードバックを完了していた

目視からの情報 人並外れた動体視力 全日本クラスのエキスパートが

辿り着けるあの領域  彼女はあの年で自分のものにしている」


トドロキ 「そしてあのスーパーラップ  わからない理解に苦しむ」


「だが確かに感じた違和感 あのザラついた感覚

             あの時 彼女はマシンを !?」


何かを思い出し確信するトドロキ


トドロキ 「俺は知っている!! あの気持ち悪いもの」


 


ミニッツコースの中央を見つめ自問自答するトドロキ


トドロキ 「全日本チャンピオンとして唯一負けを認めたラウンド

地獄の8分間 20周以上  常に後ろから かけられ続けたプレッシャー」




 (心の折れる音がした   ファイナルラップ  俺は自滅した)




「あの時あの人が全てを支配していた

自分のマシン ライバルの車 コースコンディション 時間も空間も


掌の上で踊らされていた

まるで空の上から全てをコントロールしていたように !?」


天井を見上げ ミニッツコースの中央から視野を広げ

コース全体をぼんやり眺める


トドロキ 「時間と空間 !? 彼女はマシンを見えていた?


もっと広い視点  もっと大きく  コースの全てを」




トドロキ 「空間認識能力  スーパーラップコンマ5秒 タイムの削り方ラインを変則的に変えた五つのポイント 彼女はラインではなく

点と点を最短距離で結び 一つのポイントでコンマ1秒タイムを削る


その全ての結果には 人並外れた動体視力 絶対的なリズム感 

そして理解不可能な空間認識能力 

恐らく彼女の頭の中で 一度走ったレコードラインから

いくつもの走行ラインを イメージシュミレーション


最適化されたものを 鍛錬につぐ鍛錬 超絶技巧の操縦テクニック」 


 


青いオンロードのカーペットコース見つめるトドロキ


トドロキ 「これが  答えですか   純矢さん?」




トドロキ 「あの娘が  イチムラと名乗るのなら」




物思いにふけるトドロキに興奮気味の匠が声をかける


匠 「ハヤテさん!!」


我に返るトドロキ アイコンタクト 阿吽の呼吸 お互いがニヤリと笑う


匠 「俺あの子と組むよ 彼女がOKしてくれればだけどね」


余り予想していなかった問いかけにトドロキが言葉を返す


トドロキ 「ドライバーはあきらめるのか? 専属のメカニック?

  両立出来るだろ お前なら」


笑って答える匠


匠 「マシンを開発出来るくらいのレベルにはなったでしょ」


全てを理解したトドロキ


トドロキ 「匠 お前」


笑って答える匠


匠 「ラジコン 楽しいですよね 一生懸命 車組み立てて

プロポを握って遠隔操作して レースになればドキドキして」


おもむろに自分のマシンに目を向ける匠


匠 「変わり者なんですよ俺  職人気質? エンジニア? 

死んだ親父の影響かな? 鉄とアルミとカーボンで出来た車体に

何してるのかな?  俺って」


「でも一つだけ たった一つだけ知りたい答えがあるんですよ」


トドロキ 「それは全日本選手権」


匠 「日本一の最速マシン」




匠 「その答えが俺の作った車で有ることを」





店内のベンチに二人 咲良と聡美


聡美 「もぉ~♡ 咲良ちゃんがあんなに凄いなんてビックリしたよぉ~♡

ビックリなんてもんじゃないよぉ~感動しちゃったよぉ~まったくぅ~♡

経験者なら最初に言ってよねぇ~もぉ~♡」


少し照れる咲良


咲良 「ごめんなさい 久しぶりだったから 」


聡美 「久しぶり? 今はラジコンしてないの?」


うなずく咲良


咲良 「小さい頃から四年生まで」


聡美 「何でやめちゃったの?」




うつむく咲良


咲良 「パパ  お父さん死んじゃったから」






聡美 「そっか ゴメンね  変なこと聞いちゃって」


咲良 「ううん  大丈夫  今は平気です」






天井を見上げる聡美 咲良につぶやく


聡美 「咲良ちゃん ラジコン楽しい?」


咲良 「え?  うん  楽しいです」


聡美 「咲良ちゃん ラジコン好き?」


ゆっくりだが力強くうなずく咲良


咲良 「 好きです 大好きです 」




目線を咲良に向ける聡美


聡美 「良かった 好きでいてくれて」


コクリとうなずく咲良


聡美 「良かったよ 楽しんでくれて」


うなずく咲良


聡美 「咲良ちゃんのお父さんも 大好きだったんでしょ ラジコン?」


ゆっくりうなずく咲良


咲良 「大好きでした」




聡美 「お父さん 喜んでるよ  きっと」


聡美の目を見る咲良




力強くそして優しく咲良に語る聡美


聡美 「違う きっとじゃない   絶対に 絶対に喜んでる!!」




聡美の言葉 その一言に救われる咲良 心の靄が晴れたように

今までため込んでいた感情が 涙になって溢れ出す


咲良 「聡美さん 私 聡美さん 聡美さぁん」   


ぽたぽたと涙をこぼす咲良 そっと咲良の頭をなでる聡美


聡美 「色々 あったのかな?」


うなずき 感極まって聡美の胸に飛び込む咲良


咲良 「ありがとう  ありがとうです  聡美さぁん」


更に咲良の頭をなでる聡美


聡美 「よしよし よしよし   ん!?」


店内にいる 全員からの冷たい視線 聡美チョットあせる


聡美 (えっ? 私っ?  違うよ チョット 違うんだから)


咲良 「ありがとう  聡美さぁん  ありがとうですぅ~」


泣き止まない咲良 更に冷たい視線 聡美かなりあせる


聡美 (えっ? だから違うんだってば 私が泣かせたんじゃないんだから)




聡美 「さっ咲良ちゃん もう泣かないでぇ~みんな見てるか ねっ!!」


聡美の胸に顔をうずめる咲良 聡美の顔を見上げるも 

その眼にはまだ涙があふれてる 咲良もう一度胸に顔をうずめる


咲良 「ふえぇぇ~~~~~ん」


聡美 「咲良ちゃん お願いぃ~お願いだからもう泣かないでぇ~~!!」




しばしの時 咲良泣き止む



店内からの特別な視線に気づく聡美


聡美 「見てみてぇ~咲良ちゃん♡ あなたに 

あつぅ~い視線を送る男たちが 一人ぃ~ 二人ぃ~ 三人ぃ~ん ん!?」


「さっ 三人目は大丈夫よぉ~見なくていいから 見ちゃだめだよぉ~!」


咲良の視界から外される 店長




聡美 「いつもクールな匠君か あんなにキラキラした目で 

咲良ちゃんを見ているなんてぇ~ ?

こっこれは? 恋する男の視線! 間違いないわ!」


顔が真っ赤になり目の焦点が合わなくなる咲良


饒舌に語り始める聡美


聡美 「咲良ちゃんが通い始めてぇ~ 

二人の距離もぎゅ~っと近づいてぇ~

    やがて二人は 恋から愛へ そして衝撃の告白」


聡美 「咲良  俺 咲良のことが  ちゅ ちゅっ  ちゅきだぁ~!!」


頭の中が爆発してしまう咲良


咲良 「もうぅ 聡美さんは いじわるですぅ~」


聡美 「いやぁ ゴメンね」


聡美「おっほん」

気を取り直して 咳払い 匠の隣にいるトドロキに 視線誘導をする聡美


聡美 「そしてもう一人 あなたに特別な視線を送っているのはぁ~

この店の店員 トドロキ ハヤテさん」


咲良が心の中でつぶやく

咲良 (あの人 知ってる)


聡美 「元トゥエルブレーシング全日本チャンピオン!

しかも三連覇した 凄い人なんたよ!

今は チョット訳ありでうちの店員やってるんだけどね」


トドロキについて 語る聡美


「すっごく 強いチャンピオンだったんだけど

4~5年前かな? やる気なくしちゃってね

何でも 突然ライバルがいなくなっちゃってね」


咲良 「そうなんですか・・」


聡美 「でも 咲良ちゃんのあの走りを目の当たりにして

心に火が付いたって 感じかな?」


聡美 ひらめく!!


聡美 「咲良ちゃん トゥエルブの経験は? やってみない?」


懐かしさを噛みしめる様に 咲良うなずく


咲良 「はい! いっぱい走らせました やりたいです」


聡美 万遍の笑顔


聡美「にひぃ~♡」




ラジコンバッグを抱えて 意気揚々とオンロードのコースに向かう二人


石政 「メンテナンス 終わったぜ!」


ドヤ顔とサムアップで答える店長


レジにいる店長の前を素通りする二人


店長 泣いてしまう




トドロキ 「あの子にトゥエルブやらせるのか? 聡美ちゃん」


匠  「あの車 ハヤテさんが組んだんでしょ?」


トドロキ 「頼まれちまったからな  普通に組んだ」


匠 「なら あの車も立派なトドロキスペシャルだな」


アイコンタクト 阿吽の呼吸 二人で ニヤリと笑う




オンロードコースのピットに陣取る 咲良と聡美

それを見ていた近藤健太 物申す


健太 「ミニッツが速いからって トゥエルブはまだ

早いんじゃないの? 聡美さん」


食って掛かる健太に ムッとするも大人の対応 聡美言い返す


聡美 「あ~らぁ近藤健太くん 何か御用かしら?

これからこちらの咲良ちゃんが トゥエルブレーシングで

初走行なさいますのよ 実力の伴った女の子にその言葉

チョット失礼じゃありません事? おぉ~ほほほほっ」


悔しがる健太 言い返す

健太 「おぉ~それは失礼いたしました それほどの実力者の方でしたら

ワークス活動もしていないメーカーの そんな型落ちの車では

失礼になるんじゃないですか? ぷぅ~クスクス」


素に戻り チョットキレる聡美

聡美 「キィ~型落ち言うなぁ~ 私のマシンをバカにするなぁ~

あんたなんか金に物言わせて最新の外車使ってるけど

いっつも万年Bクラスのくせにぃ~」


図星を言われてダメージを受ける健太 だが負けじと言い返す

健太 「確かに俺はBクラス だが金のかかるマシンも

これから上手くなるための言わば先行投資 

万年Cクラスの 聡美さんに言われる筋合いはない

最下位クラス走るなら その型落ちで頑張ってくださいね」


ブチ切れる 聡美

聡美 「ムッキィィ~型落ち言うなぁ~私のマシンをバカにするなぁ~

だったら勝負しましょうよぉ~ 白黒ハッキリ付けましょうよぉ~

あんたの金持ちボンボンスペシャルと

咲良ちゃんが操る

全日本チャンピオンが組んでくれたこのトドロキスペシャルでね!」


健太 「やってやるよ まけて吠えずら描くなよ」


聡美 「いいわよ 負けるはず無いから 

負けたら あんたの下僕にでも何でもなってあげるわ」


健太 「いい覚悟だ 俺が勝ったら メイド服 いやビキニ姿で

接客させてやるよ」


聡美 「やるわよ メイドでもナースでもビキニでも

その代わり あんたが負けたらパンツ一丁でこの店の周り

8分間 駆けずり回ってもらうからね」


二人が火花を散らす


咲良の両肩を掴み 目を潤ませる聡美


聡美 「咲良ちゃん お願い  私をビキニにさせないでぇ~」



咲良 「えぇ?  頑張って見ますぅ」




練習走行をする咲良 心の中でつぶやく


咲良(この車 凄い パパの作った車とはちょっと違うけど

真っすぐ走って よく曲がる)




聡美 「勝負は10周 先に10周した方が勝ちよ」

      」


今 ビキニとパンツ一丁を賭けた 勝負が始まる


聡美 「よ~い どぉ~ん!!」


勢いよく飛び出す 健太のマシン 引き離される咲良のマシン


聡美 「えっ? 何で?  しまった 熱くなりすぎて

肝心なこと忘れてたぁ~ 健太の車は17.5Tのストックモーター

私の車は21.5Tのモーター こんなのいくら咲良ちゃんでも

勝負にならない まさかアイツ それを知ってて勝負を?」


ニヤリと笑う 健太 怒る聡美


聡美 「何よ 確信犯じゃない こんなの中止よ」


勝負を止めようとする聡美 その腕を取るトドロキ

トドロキ 「落ち着きなよ聡美ちゃん 

        あの子はまだ諦めてない」


長いストレート一本分の差が開く 

モーターパワーで健太のマシンが引き離す

コーナーリングの鋭さで咲良のマシンが差を詰める


オーバースピードでコーナーに侵入 限界を迎えるマシン

小刻みに車体を震わせ 躍動する 咲良 ねじ伏せる


匠 「すげぇ まるで生きいるみたいだ」


健太のリードが半分に縮まる

健太 「ちくしょう 何でちぎれないんだよ 楽勝レースの

はずだったのに でも10周 何とか持ちこたえてやる」


5周目 健太のマシンから 3mまで詰め寄る咲良のマシン

走行ラインを健太のマシンに合わせていく


トドロキ衝撃を受ける

トドロキ 「スリップだ スリップストリーム」


聡美 「スリップストリーム? そんなことラジコンで出来るの?」


トドロキ 「ダウンフォースを得るために 空気抵抗の塊

そんなボディーを載せてるんだよ トゥエルブは」 


トドロキ (だか 理論や理屈じゃねぇ えぐ過ぎるんだよあの入り

直線だけじゃない コーナーにまで付きまとうのかよ

ご丁寧に車体半分 アウト側のボディーに風を当てて

ダウンフォースを稼ぐ 荷重の乗ったフロントが 車を曲げる)


7周目 射程圏内 咲良捉える

健太 「追いつかれた なんなんだよ 絶対有利な条件なのに

だが後3周 強引にブロックしてでも 抜かせねぇ」


聡美 「咲良ちゃん 頑張ってぇ ビキニで接客無理だからぁ~」

両手を合わせ 祈る聡美


トドロキ 「健太だって下手じゃない レベルの高いこの店で

2年間揉まれてきたんだ ここからはレースの勝負勘」


咲良に目を向けるトドロキ あの感覚ふたたび

トドロキ 「こっ これだ! この感覚 この空間の支配を

時の支配を 彼女には見えている 未来が・・・」


隣にいる匠に声をかける トドロキ

トドロキ 「最終ラップ 最終コーナー 行け匠!

       特等席は譲ってやる」


うなずく匠 最終コーナーに向かう


健太のマシンを追走する 咲良のマシン

一回 二回とアウト側に フェイントを入れる


健太 「コーナーの侵入速度が違い過ぎる 突かれてる

アウト側? フェイク? クロスラインのイン側?」


トドロキ 「上手くなったな健太 相手のマシンの理解力

クロスラインへの警戒 お手本通りのディフェンス」


     「だが彼女は その上を行く」


9週目 アウト側へのフェイントを織り交ぜ

少しイン側を突く咲良 健太のミスを誘う


健太 「何だよ 何なんだよ気持ち悪い 

インなのか? アウトなのか? どっちなんだよ」


咲良 仕掛ける

リズムよくS字のラインを描く健太マシン 

その後ろパイロンギリギリを直線で結び

次のコーナーのインを狙う咲良のマシン 車間が詰まる


トドロキ 「仕掛けた  何ぃ?」

匠 「えっ?」


次のコーナーへの繋ぎ 車速を乗せるため

最適と思われるラインを取る健太のマシン


一瞬のフラットスポット イン側ギリギリ

    マシン一台分の空間


 咲良のマシンが  突如現れる


並走する二台のマシン


トドロキに衝撃 そして確信する

トドロキ 「聡美ちゃん あの子の名前は?」

聡美 「何よいきなり 咲良ちゃんの事?」

トドロキ 「下の名前じゃない フルネーム フルネームは?」

聡美 「確か イチムラ? 一村咲良よ どうしたの急に?」


一歩 後退りするトドロキ 武者震い 鳥肌が立つ



匠 「何だ 何で突然現れて?  こんなの見たこと ?

いや見たことがある 俺はこの走りを目撃したことがある」


10週目ファイナルラップ

コーナーのたびに 並走してはピタリと後ろに張り付くを

繰り返す咲良のマシン プレッシャーに押しつぶされる健太


健太 「勘弁してくれ 気持ち悪い 気持ち悪いんだよ」



 今あるものの支配 時間も空間も そして未来も


ライバル車の挙動を把握 頭の中でイメージシュミレーション

     最適化した走行ラインを未来予測

     全てのコーナーにポイントを絞る  


その走りは美しく 強く そして気高く

             理解得る者に 至福を与える 




立ちすくむ匠 感動に酔いしれる

匠 「全日本選手権  あのラウンドの再現 

     タミグラ?  イチムラの  おじさんの・?」


走馬灯を巡る 匠の記憶

匠 「思い出したぜ あの子のことを

タミグラ 掛川 あの時の 泣き虫迷子の 女の子 

       イチムラ!  一村咲良だぁ!!」




最終コーナー手前 スリップを抜ける咲良のマシン

ダウンフォース 車体を路面に押し付ける

クロスライン インに付ける咲良のマシン

オーバースピード コーナーへの侵入 ハイサイド?

左のリアタイヤを浮かせながら限界を迎えたマシン


刹那の時

 

舵角を戻す咲良の指先 フルスロットルの人差し指

横Gに抗い続けたフロントタイヤが 解放される

全開のモーターが マシンを前へと蹴り飛ばす!

 

風切り音が 匠の頬をかすめる


匠 「これが 本物の  トゥエルブレーサー!」


咲良のマシン 駆け抜ける 全開のモーター音を響かせて


 


一息つく 咲良


咲良 「ふぅ~」


ガクッと膝を落とす健太 プレッシャーから解放され安堵する


健太 「終わった  やっと 終わった」


操縦台の階段から降りる咲良 聡美に恥ずかしそうに笑顔


聡美 「さくらちゃ~ん 咲良ちゃ~ん」

目に涙をためながら 咲良に駆け寄り抱きつく


聡美 「さくらちゃ~ん 凄かったよぉ~ かっこよかったよぉ~

 感動したよぉ~ 私のビキニを守ってくれてありがとぉ~」


咲良 「聡美さんの車 最高でしたよ」


号泣する聡美

聡美 「ふえぇ~ん なんて優しい子なのよぉ~ もぉ~」




トドロキ 「ラジコンはメンタルのスポーツだ 

心を乱しての勝利は有り得ない 最終最後の土壇場 

アレを平然とやるのかよ!! レースでの勝負勘?

そんな生易しい物じゃねぇ 修羅場だ いくつもの修羅場を

あの子  一村咲良は」




一歩ずつ咲良に近づく足音 匠が語りかける


匠 「ラジコン 続けてたんだな  

おじさん 一村のおじさんは元気かい? 元気にしてるのか? 


咲良 「えっ? うそ? た く み くん」


匠 「すげぇよ しびれたよ 感動したよ

見てくれよ 手の震えが止まらないんだよ!!」


「頼みがあるんだ 聞いてくれないか?」


コクリとうなずく咲良


匠 「一緒に ラジコン やらないか?」


「俺の作る車 100%のオリジナルマシーン  操ってくれないか?」


「その車で 二人で トゥエルブ 全日本選手権」


咲良の目に涙が溢れる


浅い深呼吸 匠 声を張り上げる


匠 「俺と一緒  俺と一緒に! 日本一を目指してください!!

一村咲良さん お願いします!!!」


頭を下げて右手を突き出す匠


聡美 (えっ? これって告白?)


咲良 「うえぇぇ~~~ん!!」


大粒の涙をこぼし大泣きしてしまう 咲良


匠 「えっ?」

トドロキ 「えっ?」

聡美 「えっ?」


匠 「ええぇぇぇ~っ?」


咲良 逃げ出す

咲良 「ふぇぇ~~ん!!」


咲良を追いかけようとする聡美 匠に怒る


聡美 「女の子泣かして何してんのよぉ~ 匠君そこで反省してなさい」


しょぼくれる 匠

匠 「あっ はいぃ~・・・」


店内に聡美の声が響き渡る

聡美 「咲良ちゃ~~ん! 待ってぇ~!」




レジ横のアイスボックスのモーター音

咲良のアイスがコンビニ袋からコロンっと落ちる






逃げ足の遅い咲良 店の外近くの公園で聡美に捕まる


聡美 「咲良ちゃん 待って」


捕まった咲良 聡美に抱きつく


咲良 「グズっ さとみさ・ん ごめん・なさい 私 わた・し」


なだめる聡美


聡美 「落ち着いて ゆっくり ゆっくりで良いから」


咲良 「たくみ・くん が・・パパのこと 覚えて・・いてくれて

 わたし・の・事も・・覚えて・・いてくれて


パパが・言ってたの・・咲良が・いっぱい・練習して・・上手くなったら

匠くん・が会いに来てくれるって・・一緒にラジコン・しようって

だから・・いっぱい練習したの・・毎日・毎日練習・・したの

匠くん・・に会いたくて・・・いっぱい練習したの


名古屋の・小学校で・・ラジコンばっかり・・・だったから

他の・女の子たちに・・・イジメられ・たけど」 


咲良の頭をなでる聡美

聡美 (そんなことが この子にもあったのね)


「匠君が・・言ってくれたの・・・一緒にラジコン・しようって


パパの・言ってたことが・・本当になって

パパの・言ってたことが・・・嘘じゃなかったって・・私うれしくて」


少しの時を待ち 咲良の涙を拭う聡美


聡美 「おめでとう 願いがかなったのね」


聡美の一言に気づかされる咲良


咲良 「えっ?・・・うん」

両手で涙を拭きぬぐう 咲良


一筋の風が公園を吹き抜け 二人の髪を揺らす




帰り道 聡美の言葉を思い出す 咲良


聡美 「答えはもう決まってるんでしょ?」


咲良 「はいぃ  でも私逃げてきちゃったし」


聡美 「簡単よぉ~! 咲良ちゃんが明日くればいいだけの話よ

  匠君には上手く言っとくからね」


「匠君だけじゃなくぅ~私にも会いに来てねぇ~♡」




思い出し笑う 咲良

咲良 「クスっ 聡美さんいい人だなぁ 今日はいっぱい泣いちゃったけど

聡美さんにはいっぱい感謝だなぁ」


咲良の心に少しの不安がよぎる

咲良 「・・お母さん・・許してくれるかな?」



10階建てのマンション 3階の角部屋 咲良の自宅

鍵を使い中に入る 少し口ごもりながら 


咲良 「ただいま」


ダイニングテーブルでアイスコーヒーを飲んでる 咲良の母純子


純子 「お帰り 寄り道? 遅かったのねぇ」

咲良 「うん そんなとこかな」


咲良の声のトーンで微妙な変化を感じる純子

純子 「どうしたの? 何かあったの? 友達と喧嘩でもしたの?」


のんびり屋の純子だが 心配して声をかける


咲良 「お母さん 話があるの 大事な話・・・」


純子 「どうしたの? 改まって」


咲良 「あのね お母さん  ラジコン やっちゃダメかな?」


その言葉に キョトンとする 純子


咲良 「もう一度 ラジコン  していいかな?」

今 凄く ラジコンがしたい どうしても」


「昔お父さん・・パパと遊んだラジコンがもう一度したいの

     許して くれないかな・・・お母さん」


アイスコーヒーを一口 ふぅっと一息つきおもむろに立ち上がる純子


純子 「こっちにいらっしゃい 咲良」


咲良 「うん・・」


玄関横の一室 以前の純矢のラジコン部屋 優しい笑顔

純矢の遺影が置いてある 手を合わせる純子


純子 「一村純矢さん あなたの可愛い愛娘

一村咲良が 帰って来ましたよ」


咲良 「えっ? お母さん」


純子 「純矢さん 今 大喜びしてる 間違いないわ」


ふと 聡美の言葉を思い出す 咲良


聡美 (違う きっとじゃない 絶対に 絶対に喜んでる)


咲良 「聡美さん・・・お母さん・・ありがとう」


純子 「もう 相変わらず 泣き虫なんだから」




咲良 「でも お母さんはいいの? パパが死んじゃって

この部屋 かたずける時 お母さん泣いてたから

もうラジコンはしてほしくないのかなぁって」


咲良の頭を抱き寄せる 純子

純子 「馬鹿ねぇ でもすごく優しい子」


「咲良の大好きなこと 純矢さんが愛したもの

それをやめろだなんて 思ったりしないわよぉ」


覚えてるかな? 咲良が四年生の頃 名古屋での最後のレース


咲良 「覚えてる 私が パパに勝ったレース」


純子 「純矢さん あなたに負けて 

すっごく悔しがってた でもその10倍 喜んでた


あなたには 凄い才能が あるんでしょ?


やるんだったら やりなさい

   思いきり  やりなさい」


純子の肩に 手を回す咲良


咲良 「ありがとう・・・お母さん」




咲良 就寝前 ベランダから夜空を見上げ 誓いを立てる


咲良 「パパ 見ててね 私は匠くんと一緒に・・日本一になる」




同じ夜空の下 自室で一つのモーターを手に持ち ニヤニヤする匠


匠 「たまんねぇ~なぁ この輝き! 3.5Tモデファイドモーター

どうなっちまうんだよぉ~俺のマシンはよぉ~笑いが止まらねぇ~なぁ


あの子なら・一村咲良なら・・・あぁ~早く明日に なりやがれ!!」


                            

                             つづく


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トゥエルブレーシングプロポを握れ @amaguriko

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