科学の子
@amaguriko
第1話
近未来 核戦争後の地球
半分以上の人口とほぼ全てのデジタルデータをうしなっても
たくましく発展を続ける人類
富士山
(鉄道と道路が頂上まで敷かれ遊園地のようにデコレーションされている)
その富士山をバックに一人の少年が両手で
エネルギーの塊りを練りこんでいる
自分を覆う影に気付き空を見上げる
空を覆いつくす黒い飛行物体
空気を震わせながら無数の物体を降下させている
ほくそ笑む少年
練り上げたエネルギーの塊りを凝縮 拳銃を放つように
降下して来る無数の物体に狙いを定めて身構える
臨界に達したエネルギーの塊り
両脚を踏ん張り今まさにそれを放とうとした瞬間
ハネト 「あっ!!!」
何かに気付き慌てふためくハネト
エネルギーの塊りを持て余し右往左往するハネト
ハネト 「マ・マズイ!?」
不本意ながらもう一度狙いを定めるハネト
ハネト 「チックショー! 富士山の馬鹿野郎ぉ~」
放たれたエネルギー 一瞬で全ての曇をイオン化し
無数の落下物を融解爆発させていた
ガッカリと肩を落とすハネト
ハネト 「はぁ~カッコ悪りぃ」
学校内の視聴覚室(ちきゅうぼうえい軍)
先程のハネトの戦闘データをオペレーターの
学生たちが博士と呼ばれる男に報告している
黒板に映し出される大型モニターに眼を奪われる少女 ふと我にかえる
響 「みんな 状況報告を!」
しおん「敵飛翔体の99%消滅確認」「融解温度4300℃」
「粒子演算プログラム(トミー)を経由して
データのシュミレーションを開始します」
かのん「各種センサー正常」
「ガンマ線レベル機械式マイクロマシンでの中和反応確認
自動収集データバンク(フラワーズ)バックアップを進行中」
淡々と業務をこなす双子の姉妹しおんとかのん
キャンディーをしゃぶりながら少し気だるそうに報告する少女
カブ 「熱線によりぃ~遮熱プログラムマイクロマシン~12%消滅~!
セーフティレベルまでぇ自己増殖頑張ってまぁ~す」
くすりと笑い隣りの席に座る少年
タクト 「バイタルスキャン完了!オールグリーン!」
「タンパク質マイクロマシンリミットの20%で稼働中」
「ハネトは今元気でぇ~す」
口元がほころぶ博士と呼ばれる男
Dr寺西 「くっくっくっく」「わっはっはっは」
「ガっはっはっはっはっは」「ガぁ~っはっはっはっはっはっは」
「ガぁ~はっはっはっはっはっは」
教室中に響き渡る博士の笑い声
何かを確信し興奮を抑えきれず机を叩く博士
Dr寺西 「笑いが止まらん!!!」
一瞬の静寂もまた何事も無かったかのように作業に集中する全員
Dr寺西 「素晴らしい 素晴らしいですよぉ ハネト君」
カチっカチっと音をたてゆっくりと博士にコーヒーを差し出す少女
ティースプーンの上には角砂糖一つ
Dr寺西 「この香りは? エリカ君は私の心をくすぐりますねぇ~」
嬉しそうに眼を見開いて大きく2回うなずくエリカ
エリカ 「ふん!ふん!」
エリカの頭を撫でながら一口付けたコーヒーを机に置き
「ハネト」と書かれたボタンに指を伸ばす博士
Dr寺西 「ど~ですかハネト君!この星の絶対者となった今のご気分は?」
座り込み富士山を見上げるハネト ポツリとつぶやく
ハネト 「博士 全然ダメ!!」
拍子抜けする博士
Dr寺西 「はい?どうしましたかハネト君」「いきなりダメ出しですか?」
不満をぶつけるハネト
ハネト 「だからぁ~!全然カッコ良くないんだよぉ~!」
困りながら声をかける博士
Dr寺西 「いやぁ~とてもカッコ良かったですけどねぇ~!」
教室内の大型モニターに「グラビィティーウェイブ」のサイン
響が報告する
響 「重力波感知 翔子来ます!」
ハネトの上空に現れた少女 ゆっくりと滑るように地上に降り立つ
一息つく少女
翔子「ふぅ~」
待ちわびた翔子をモニター越しに見つめる博士
ふと我に返りハネトに話しかける
Dr寺西 「ハネト君 先ほどの話 後ほど伺いましょう」
ふてくされるハネト
ハネト 「チェ! 何だよ 後回しかよ!!」
翔子と書かれたボタンに指を伸ばす博士
Dr寺西 「これはこれは 翔子君ご機嫌いかがですか?」
空を覆い尽くす黒い飛行物体を見上げて無言で立ちすくむ翔子
翔子 「・・・・・」
振り向くタクト 博士とアイコンタクトをかわし望遠監視カメラを操作して
翔子の胸もと太ももなどのアングルを二人だけの卓上モニターに映し出す
ニヤリとする二人
タクトのモニターを覗き込むカブ
カブ 「忍先生ぇ~!変質者二名発見ぇ~ん!」
博士の右後方に座り白衣を着る女性 読んでいた文学小説から眼を外し二人を睨み付け大きな咳払いをする
忍先生 「んっおっほん!!」
慌てふためく二人
軽蔑したまなざしでタクトを見るカブ
カブ 「兄貴の変態!!」
何事もなかったようにソッポを向くタクト
敵の第二波攻撃を告げるアラートが鳴る 黒板の大型モニターから
各種センサーカメラなどの情報が次々と映し出され
優先順位の高い順に報告 指示を出す響
響 「敵第二波飛翔体マッハ21で降下中 総数800体
予定降下ポイントをモニターへ」
各種防御 遮熱 中和反応のマイクロマシンレベルをフェイズ3へ移行 ハネト及び翔子の体内マイクロマシン リミットの20%をキープ スペクトル解析トミーを経由してデータをフラワーズへバックアップ 解析結果をモニターへ 並びにハネト 翔子のレシーバーにデータ送信」
振り向き博士に助言を求める響
響 「博士!!!」
手をたたき響を称える博士
Dr寺西 「完璧です パーフェクトですよ 響君」
コーヒーに口を付け翔子のボタンに指を伸ばす博士
Dr寺西 「聞こえていますね 翔子君」
翔子 「・・・・・」
Dr寺西 「「これから君が起こす奇跡を 今回も楽しみにしていますが」
翔子 「・・・・・」
Dr寺西 「あまり無茶をしないで下さいね」
翔子 「・・・・・」
Dr寺西 「君はまだ神のご加護を受けて、いないのですから」
翔子 「問題・・ない!!」
ゆっくりと眼を閉じて詠唱をとなえる翔子
翔子 「我は契約する 心の陰りを供物に変えて」
詠唱をとなえる翔子をぼんやりと見ているハネト
翔子 「我は召喚する 光の加護を勇気に変えて」
詠唱の言葉が翔子の体を取り巻く 驚き眼を丸くするハネト
ハネト 「・・・おい!」
翔子 「紅い月 青き石 緑葉の風 光の羽 紫の炎」
立ち上がり翔子の元へ駆け寄るハネト
ハネト 「すっ スゲー! なんなんだよ それ!」
翔子 「絆を結び」「我思い 我願う時!!!」
左手に集めた五つの光を地面に叩き付け力を入れて言葉を放つ翔子
翔子 「ムート!!(勇気)」
翔子と同じ身の丈の五色の魔法陣が地面に浮かび上がっていた
翔子 「我に勇気を! 我光の守護者なり!!!」
上手く出来た魔法陣を見つめはにかむ翔子
衝撃波を放ちながら降下を続ける飛翔体 近づく敵に眼を向ける翔子
翔子 「来る!」
青い魔法陣 黄色の魔法陣に手をかざし言葉を発する翔子
翔子 「フェーデルン!(羽)」
時計回りの青い魔法陣 反時計回りの黄色の魔法陣
重なり浮力を作り出し砂煙を巻き上げる
浮遊する魔法陣に飛び乗る翔子
赤い魔法陣に左手をかざし詠唱をとなえる
翔子 「我は契約する 心の迷いを供物に変えて」
「我は召喚する 光の加護を力に変えて」
「紅い星 青き結晶 緑流の泉 光の羽 漆黒の炎」
「絆を結び」「我思い 我願う時!!!」
高速で回転する赤い魔法陣 発光しながら空気を切り裂きうなりを上げる
翔子 「マハト!!!(力)」
赤い魔法陣の外周を回転する のこぎり状の刃。翔子の身を守るように
ゆっくりと周回している
翔子 「我に力を! 我光の守護者なり!!!」
目に涙を浮かべて感動しているハネト 武者震いが止まらない
震える声で博士に問いかける
ハネト 「聞いてるか 博士」
Dr寺西 「どうしましたかハネト君」
ハネト 「これだよ これ!」
「俺がやりたかったのは これなんだよぉ~~!!!!!」
「俺も出来るんだろ? いつ出来るんだ? 今できねぇ~のかよ?
出来るようにしてくれよぉ~「博士 たのむよぉ~」
困り果てる博士
Dr寺西 「ハネト君よく聞いて下さい 彼女の特化した能力は量子と量子を結び付ける接着剤のような力(強い核力)な訳で
ハネト君の特化した(弱い核力)ではベータ崩壊を
引き起こすだけですからぁ~」
博士の話を聞いて怒りが込みあがってくるハネト
ハネト 「さっきから聞いてりゃ 強いだの 弱いだの 言いやがって!! だいたい何で女の子が強い力のナントかで
男の俺が弱い力のナントか何だよぉ!!!」
半分べそを掻きながら必死で博士に訴えるハネト
「おかしいだろぉ おかしくないかぁ~ おかしいよなぁ~絶対に!!!」
本当に困り果てる博士
Dr寺西 「ハネト君 そんなこと言われましても・・・
君のわがままでこの世の物理法則を 捻じ曲げることは出来ませんよ」
泣き止むハネト 何かに吹っ切れて冷めてしまい博士につぶやく
ハネト 「もう帰る」
マジで困り果てる博士
Dr寺西 「エぇ~~」
ハネト 「やりたいことが出来ないなら帰る」
Dr寺西 「それって何ですか?」
ハネト 「だからぁ~今日は俺のデビュー戦だぜ 華々しい俺の歴史の
一ページなんだよ颯爽と登場して 魔法陣作って 呪文を唱えて
その呪文がクルクルってなって
あの花火 打ち上げる前にさぁ~カッコいい決めセリフいってさぁ~
バババンってやりたかったんだよぉ~・まったく!!
笑いをこらえ必死にお腹をつねる博士 バレないようにハネトに話しかける
Dr寺西 「わかりましたハネト君 是非とも叶えてあげましょう」
ハネト 「本当にぃ~?」
Dr寺西 「うちの技術部の一番偉い人に」
ハネト 「絶対にぃ~?」
Dr寺西 「間違いなく」
ハネト 「本当に 本当に 本当に 本当にぃ~?」
Dr寺西 「頼んで 差し上げます」
ハネト 「うおぉ~やったぁ~やったぁ~やったぁ~!」
大はしゃぎで走り回るハネト 翔子の魔法陣が目に止まりもう一度駆け寄る
ハネト 「これ本物だろ 凄いよなぁ~ きれいだよなぁ~ 感動しぞ!!」
突然の称賛に戸惑いながらもまんざらでもない笑みを
浮かべて言葉を返す翔子
翔子 「あっありがとう」
お礼を言われ自然と笑みを返すハネト しかし感動が収まらない」
ハネト 「カッコいいよなぁ~!
呪文を唱えたら言葉がグルグルって取り巻いてさぁ~
手を掲げたら五色玉が浮かび上がって そいつを地面にバーンって
魔法陣だろぉ~! たまんねぇ~よなぁ~まったく しびれたぜ!」
身振り手振り説明するハネトに一つの間違いを指摘する翔子
翔子 「あれは呪文ではない 詠唱だ」
初めて聞く言葉に不思議そうな顔をするハネト
ハネト「詠唱~? 詠唱かぁ~知らなかったなぁ~俺今日が初めての戦いだろまだわかんねぇ~事だらけなんだよ 今度色々教えてくれよ」
キョトンとする翔子 分からない事を素直に認め教えを乞うハネトに
少しだけ親近感を抱いた
翔子 「少しだけなら・・問題・ない」
ちょっと恥ずかしくなって目線を斜め下に向ける翔子
喜びはしゃぐハネト
ハネト 「うおぉ~やったぜ! ありがとう!ありがとうなぁ! ・えっと~?
翔子 「私の名前は翔子!! 魔法戦士の天使 翔子」
少しの沈黙
初めて打ち明かす魔法戦士の称号にとても
恥ずかしくなりあたふたする翔子
翔子 「えっえっ えっとね あのね
まぁ魔法戦士もまだ見習いみたいな感じで
そっ そんなに強く無いと思うし! 天使もね なりたての半人前で・・・・
しょっ 翔子って言う字は 羽と言う漢字に子供の子て・・・・・・・・」
顔を真っ赤にして意気消沈してしまう翔子に笑みを
浮かべ語りかけるハネト
ハネト 「似合ってるぜ! その名前」
翔子 「えっ?」
ハネト 「似合ってるよ! その羽」
〇自作のコスプレ衣装と名前を褒められてまた少し親近感を抱く翔子
翔子 「あっ ありがとう!」
少しだけ力強く応える翔子
ハネト 「ハネト!」「ハネトでいいぜ! 俺のこと」
気さくな態度で接してくれるハネトに少しずつ打ち解けていく翔子
翔子 「ハネト! うん いい名前だよ! カッコいい名前だよ
うん 私ハネトって呼ぶ! 問題ない!
私も翔子で構わない! うん 問題ない!」
コーヒーを飲み干し卓上モニターの二人を見つめている博士 口元が緩む
ハネトと翔子のレシーバーに響からの連絡が飛び込む
響 「二人とも自己紹介はもういいわね
ゴーグルを着用データを確認して」
首にぶら下げたゴーグルを付ける二人
響 「今から約三分後 敵第二波飛翔体は今の翔子の迎撃限界高度7000mに到達すると予想されます 翔子はこれを迎撃 ハネトは後方で支援」
響の指示に納得いかないハネト 口を挟む
ハネト 「後方支援? 何だよそれ!! 俺がデカいの一発撃ちあげれば
簡単にけりがつく話だろ!!!」
さとすように ハネトの問いに答える響
響 「ハネト 聞いてくれる 確かにあなたの言う通り
あの一撃は全てを解決してくれるけど 防御 遮熱 中和のマイクロマシンの自己増殖が間に合っていない今の現状で あの一撃は大きすぎるの
分かってくれるかな ハネト」
目を閉じて大きく首をたてに振り納得したハネト
ハネト 「口を挟んで申し訳ない 謝ります ごめんなさい」
口答えせず謝罪するハネト 一瞬戸惑いながら咳払いする響
響 「ぉっホン!! 素直でよろしい でもそう言うところ 女子にはポイント高いわよ!!」
二人のやり取りを聞いていた忍先生の口元が緩む
和やかな雰囲気から一転してアラートが鳴る
翔子 「ハネト! 背中は預けた 任せたぞ!!」
翔子の決めセリフにあてつけられるも切り返すハネト。
ハネト 「おうぅ 任せろだぜ!!」
片膝を付き発進の衝撃にそなえる翔子
高速で回転うなりを上げる二つの魔法陣
翔子 「フリーゲン(飛ぶ)」
土埃を上げながら飛び立つ翔子 それを見送り感動するハネト
ハネト 「すげぇ~やっぱかっこいいなぁ~おいぃ」
敵目指して飛行する翔子 先程の決めセリフのやり取りを
回想し妄想を膨らませる
翔子 「いやぁ~カッコ良かったよねぇ~(背中は預けた 任せたぞ!)
一度言ってみたかったんだぁ~ ハネトもカッコ良く応えてくれたし
うんうん いい人そうで良かったよぉ~
そう言えばあの服装からすると・・剣士・・聖騎士・・
剣は持ってなかったから・格闘家・武闘家・戦士・かなぁ~?
私の詠唱と魔法陣に驚いていたから魔法使いではないよねぇ~
はっ・後方支援・遠くから援護するんだから
弓使い! そうだよ 弓使いだよぉ~いいなぁ~ かっこいいなぁ~
ロビンフッドだよぉ~!!!
いつか二人で冒険してぇ~ 私がピンチになったら颯爽と現れて
助けてくれるとかぁ~ 逆にハネトが敵に捕まった時に私が助けに
行ってカッコいい決めセリフを (ハネトは私が守って見せる!!)
うぉ~!!! もう考えただけで 辛抱たまらん!!!!!!!
ゴーグル越しに見るハネトの視覚 一本の赤いボーダーラインが
浮かび上がる
響 「ハネト 赤い横線の確認は?」
ハネト「あぁ~何か見えてるぜ!」
響 「そのボーダーラインはあなたの動きに合わせて高度7000mの
位置確認を示すものです」
上下左右首を動かすハネト 何かに気付いたように響に切り返すハネト
ハネト 「なるほどね! 要するにラインの下は狙うなって事だろう?
翔子に当てちまうからな」
的を得た回答に少し驚く響 照れ隠しに咳払いをする
響 「ぉっホン!! 吞み込みが早くてよろしい
でもそう言うとこ私的にポイント高いわよ」
少し照れるハネト
ハネト 「どういたしまして」
響 「それとね一つお願いがあるんだけれど 月に向かって撃たないでね」
言葉の意味を理解してジョークを飛ばすハネト。
ハネト 「わかってるよ! お月見団子が食えなくなる」
ジョークを返すハネトにすかさず切り返す響。
響 「かぐや姫も帰れなくなるのよ(笑)」
響の素早い切り返しに笑ってしまうハネト
ハネト 「面白れぇ~ お餅をついてるウサギさんに迷惑はかけないぜ」
笑うしかない響
響 「うっふふふ 君のそう言うところ 嫌いじゃないけどね」
〇気合いを入れるハネト
ハネト 「よっしゃい!!!」
ボーダーラインの上の飛翔体に狙いを定めて小さなエネルギーを乱射するハネト。
援護射撃の中 左手の魔法陣を投げつけ敵陣に突っ込む翔子
風に乗り 雲を切り裂き 波乗りを楽しむように
翔子の無双が今始まる
翔子「シルト!!(盾)」
翔子に追随する緑色の魔法陣が発光 半分のサイズ二つに分かれて
翔子を守るために浮遊している
翔子「ハァ~!!」
赤い魔法陣を操る翔子 のこぎり状の刃がうなりを上げ
大きな円を描きながら敵飛翔体をなぎ倒してゆく
黒板の大型モニターに映し出される翔子の勇士
ガクガクブルブルしている博士
Dr寺西 「震えてる・・震えていますよ 翔子君!!!!!」
「私は今 猛烈に震えているのです」
込みあがる感激を抑えきれず 机を叩く博士
Dr寺西 「ハァハァハァ」「脳みそが デレっと 溶けてしまいそうです」
息づかいの荒い博士 響に指示を出す
Dr寺西 「ハァハァ ひっ 響君 翔子君の魔法陣
スペクトル解析の結果を」
「それからエリカ君」「ミルクとお砂糖たっぷりコーヒーのお代わりを」
大きな瞳を見開き二回うなずくエリカ。
エリカ 「ふん!ふん!」」
スペクトル解析結果に目を奪われる博士
Dr寺西 「これは・・・タングステン・炭素・鉄・セラミックス・・・
発光体には塩化ストロンチウム・・・・これが赤い魔法陣!」
驚きを隠せない博士
Dr寺西 「強度と柔軟性 カーボンナノチューブ・ホウ素・ベリリウム・
耐熱特性に・セラミックスを敷き詰めて発光体には・バリウム!!!
・・・盾となる緑の魔法陣!!!」
小走りで博士のもとに大きいマグカップのコーヒーを手渡すエリカ。
一気に飲み干す博士。唇が腫れあがりヒリヒリしている
Dr寺西 「ぶぁはぁ~~」
ドサッと椅子に体を預ける博士 体内マイクロマシンを使い
唇の腫れを治していく
口元がほころぶ博士
Dr寺西 「私は理解します この奇跡を!!」
「そしてこの奇跡が 科学であることを!!!」
興奮冷めやらぬまま自分に言い聞かすように語る博士
Dr寺西 「見事ですよ あの空飛ぶ魔法陣 ジャイロ効果を打ち消す
二重反転プロペラの 応用」
「構造的には電磁気力で磁界を発生させ
円を描くように回転するリニア駆動」
「それを操る 翔子君も見事ですが」
紫の魔法陣のデータを不思議そうに目をやる博士
Dr寺西 「しかしこの魔法陣」「ケロシン・アルミニウム・トリニトロトルエン・・・
「爆発物のオンパレード! これを使ってどんな奇跡を起こすのですか
翔子君」
今の限界高度7000mに達した翔子。少し息が粗い
レシーバー越しに「大丈夫?」と声をかける響に言葉を返す翔子
翔子 「ハァハァ・・・問題ない」
すかさずタクトに指示を出す響
響 「翔子の体内マイクロマシンを25%の稼働率へ」
高度7000m薄い酸素濃度の中 深呼吸する翔子肺に取り込んだ酸素を体内のマイクロマシンが強制的に身体の隅々まで運び届ける
翔子 「ありがとう・・響ちゃん」
自分の撃ち漏らした飛翔体が眼下に広がる 悔しい顔をするも
落ち着きを取り戻し紫の魔法陣に手をかざし詠唱をとなえる
翔子 「我は契約する 心の闇を供物に変えて」
「我は召喚する 光の加護を怒りに変えて」
「赤い爪 青結の刃 緑の嘆き 光の羽 紅蓮の炎」
「絆を結び」「我思い 我願う時!!!」
ドクンドクンと脈打つ魔法陣。脈打つ度に少しずつ大きくなっていく
翔子 「エルガー(怒り)」
「我に怒りを!! 我光の守護者なり!!!」
翔子の頭上に直径20m程の巨大な魔法陣が鈍い光を放ちゆっくりとまわっている
両腕をかざし 眼下に広がる飛翔体目掛けて巨大な魔法陣を投げつける
翔子 「はぁ~~!はぁ~!!!」
一辺5m四方の板状の飛翔体 折り紙を作る折り線が浮かび上がり
落下傘のような形に変化 200体程の群れをなしてゆっくりと降下を続ける。
降下する飛翔体の群れの周りを旋回する巨大な魔法陣。
白・黒・銀の粉末をまき散らしながら
旋回を続ける魔法陣が次第に小さくなっていく
飛翔体の群れを取り囲むように粉末状の物質が
太陽光を乱反射して虹色に輝く
翔子 「マハト!(力)」
左手の人差し指に小さな赤い魔法陣を作り出し天に掲げる翔子
翔子 「エクスプロジィオーン!!!(爆発)」
紫の魔法陣目掛けて人差し指の魔法陣を投げつける翔子
赤い魔法陣が紫の魔法陣を打ち砕いた瞬間。火花が散り
虹色に輝く飛翔体の群れを大爆発の渦が飲み込んでゆく
黒板の大型モニターに映し出される映像に啞然とする全員
Dr寺西 「粉・塵・爆・・発!」
神々しい者を見るように翔子を見つめる博士
Dr寺西 「君こそが・・科学の・・・申し子・」
衝撃波の到達に目を細め髪をなびかす翔子爆風の中から破壊された飛翔体の残骸が翔子目掛けて飛んでくる
翔子 「シルト!(盾)」
緑の魔法陣が残骸を弾き飛ばす。余裕を見せたその時 残骸の一部が
青い魔法陣を直撃「パリん!」と音を立てて砕けてしまう
翔子 「えっ?」
バランスを崩しジャイロ効果の影響で反時計回りに大きく弧を描く翔子
翔子 「あわぁ~あわぉ~あわぉ~~」
立て直そうとするも魔法陣に振り回されて逆さまになり時計回りに大きく弧を描きながら落ちていく翔子
翔子 「うぉ~~目がぁ~目がぁ~ぐるぐるぐるぅ~」
モニターに映し出される翔子の姿に 指示を急ぐ響
響 「翔子!!魔法陣を切り離して! カブ!防御のマイクロマシンを
翔子の落下する軌道上に展開! 急いで!!」
薄汚れた昔のギャル雑誌をめくりながら 右手一本で複雑なプログラミングを入力していくカブ ちょっと不満そうに響に報告
カブ 「響ちゃ~ん パワーが全然足りないよぉ~これじゃぁ~
気休め程度にしかならないしぃ~」
モニターを睨みつける響 タクトに指示を出す
響 「タクト! 翔子の三半規管の感度を上げて脳内の
ドーパミン量を3%増量」
「筋肉の増強を最大20%まで!!」
イエローのシグナルが点滅するタクトのモニタータクトが
少し申し訳なさそうに響に警告を促す
タクト 「いやぁ~それやっちゃうと翔子ちゃんの身体に
負荷がかかり過ぎるよ」
間髪入れずに響 タクトに命令! 少しイラついている
響 「それを上手くやるのが アンタの仕事でしょ!!
振り向きざまににらみを利かせる響。
響 「いいから早くその目障りな黄色の点滅を消しなさい!
さらに上から目線でタクトに物言う響
響 「そぉれぇかぁらぁ~翔子の体に少ぉ~しでも変なことしたらねぇ~」 アンタの左のほっぺたにぃ~ 私の渾身の右手形
プレゼントしちゃうからねぇ~」
自分の顔面に響の平手がめり込む姿を想像して背筋を凍らすタクト
タクト 「そぉ・そんなこと す・する訳ないじゃないですか
響さん・・・・」
筋力増強バストアップ16.55%のコマンドをバレないように消去するタクト
響 「アンタが 超ド級のアブノーマルなのは
誰かさんのお墨付きなのよ!」
煽る様に博士をにらみつける響 自分のモニターに隠れる博士
「今だって 小数点以下のマニアックな数字入れようと
してたんじゃないのぉ~?」
青ざめる博士とタクト
Dr寺西とタクト 「バレてるぅ」
響 「何かあったら とっても怖~い人に
お仕置きしてもらう事になるわね」
響が忍先生とアイコンタクトを取る その二人を遮るように
博士がタクトに指示を出す
Dr寺西 「タクト君 何をしているのですか!
早く響君の指示に従って下さい!!!」
博士に合わせる様に慌ててプログラムを打ち込むタクト
タクト 「わっわかりました師匠!! じゃなかった 博士!!」
大きく息を吐く響
響 「ふぅ~後は彼女次第ね 頼むわよ翔子!
私にこのボタンを押させないで!」
机の上に蓋のしてあるボタンを見つめる響。(超法的措置)と書いてある。
真っ逆さまに落下を続ける翔子 タクトのアシストのおかげで
意識を平常にまで取り戻す
翔子 「おろ?」
目に力を宿す翔子
翔子 「問題ない」
幾重にも張られたマイクロマシンの薄い皮膜を翔子の体が突き破っていく
翔子 「ちっぃ~」
手足を広げ降下態勢を取る翔子。落下速度を時速200㎞まで落としていく
息を整え詠唱をとなえる翔子
翔子 「我は契約する。心の歓喜を・・」
翔子の詠唱に割って入る響
響 「翔子!! 時間がないのよ! 詠唱なんか唱えてる暇なんてないのよ!!」
ムスッとする翔子 響に口答えする
翔子 「それはダメ! 絶対にダメ!」
右手に握り拳を作り震わせながら翔子を問い詰める響
響 「なぁ~にぃ~がぁ~ダメなのよぉ~この非常時にぃ~」
負けじと喰ってかかる翔子 少し上から目線の物言いをする
翔子 「詠唱を唱えて契約を結ぶ それ即ち私のアイデンティティ!!」
自慢げにアイデンティティを語られ怒りを覚える響
響 「あなたねぇ~このクソ忙しい時にのんきに
アイデンティティ語たってんじゃないわよ!!
いいからサッサと空飛ぶ魔法陣作りなさいぃぃぃぃ」
左の頬に貼り付けたレシーバー 骨伝導を伝って翔子の頭の中で
響の怒鳴り声がこだまする。
翔子 「おっかないよぉ~響ちゃん」
脅しをかける響
響 「なんか言ったぁ~?」
動揺する翔子
翔子 「あうぅ~」
深呼吸をして目を閉じ左手をかざす翔子
翔子 「我は契約する。心の歓喜を・・・以下省略・」
「フェーデルン(羽)」
不本意ながら空飛ぶ魔法陣を作り出した翔子
真下に迫る魔法陣に飛び移るために衣装のスカートを両手で抑えながら
魔法陣目掛けて落ちていく
教室内で翔子の姿を凝視する博士とタクト二人共同じ事を
ブツブツ唱えている
Dr寺西とタクト 「もう少し・もう少し・もう少し・あと少しぃぃ~」
呆れた顔で二人のモニターの翔子のスカートの部分にモザイクをかける響
Dr寺西とタクト 「おぉ~! これはこれで何か興奮するぅ~!!」
ムスっとした顔で二人のモニターの電源を落とす響。
響 「ド変態が!」
Dr寺西とタクト 「NOぉ~!!!!」
近づく魔法陣 飛び乗った瞬間 翔子の落下速度に耐え切れず
「パりん!パりん!」と割れてしまう
翔子 「おっ?あれぇ~~!!!」
「やっぱり! やっぱりちゃんと詠唱を唱えなかったから
神様がぁ~神のご加護がぁ~!!」
「・私・・もう・・・ダメかも・・・」
緊迫する教室内 強い口調で博士を呼びつける響
響 「博士!!!」
目線を隠すように中指でかけているサングラスを直す博士
Dr寺西 「構いません この星の全てを止めてでも
彼女を守るのは・・必然!!」
一点を見つめる響 超法的措置のボタンの蓋を開ける
響 (超法的措置01 全世界の 経済 インフラ 治安 物流 情報・・
全てを管理する量子演算プログラム「トミー」その演算処理能力の全てを
マイクロマシンへ投影
量子集結 結合 原子生成 硬質化 物質化・・落下する翔子の周囲に
展開させれば・・
与えられた時間はフルで10秒 それが・・我々人類 英知の結晶
そして 我々人類の限界!!)
しおん かのん に指示を出す響
響 「かのん! カウントダウンと同時にフラワーズへのバックアップを
一時凍結」
「しおん! 超伝導個体電池をトミーに直結電源供給の安定化を最優先に」
カブに視線を向ける響 この超天才プログラマーに
絶対の信頼を寄せている
響 「見せてもらうわよカブ! あなたの超絶技巧!!」
カバンの中に手をやるカブ キャンディーの入った瓶と特殊な形状をした
キーボードを取り出す
カブ 「軽る~く言ってくれるよねぇ~響ちゃんは!」
ボタンに手をかけ一瞬だけ思いにふける響
響 (こんな時あの力が使えれば このボタンを押さずに済むんだけど・・)
(全くどこほっつき歩いてんのよ あのギター小僧の風来坊は!!)
カウントダウンを開始する響
響 「カウントダウン・10・9・8・」
カウントダウンを遮るハネトのインカムが響の耳に届く
ハネト 「響!! 翔子の落下ポイントは?!」
ハネトのいきなりの言葉に驚く響
響 「ハネト? あなた何してるの?」
落下する翔子目指して全速力で走るハネト
ハネト 「アイツを助ける!」
インカムに手をやり堰を切る響
響 「助けるって どうやって?」
息を切らしながら走るハネト
ハネト 「ハァハァ・ウダウダやってる・ヒマはねぇー!!」
タクトに指示を急ぐ響
響 「タクト!! リミットいっぱいまで ハネトの身体能力を・・」
モニター上にハネトの体内マイクロマシンの稼働率が
29.9%の数値を示している 響の指示の途中で
仕事をこなしていたタクト
タクト 「はぁ~あぁ男子の体いじくるのって趣味じゃないんだよねぇ~」
薄ら笑いを浮かべるタクトに目をやる響
響 (やってくれるじゃない ド変態!)
モニター上の走るハネトを見つめる響
響 (あなたには 何か期待しちゃうのよねぇ ハネト!!)
アシストされたハネトの身体 心臓が脈打つ度にマイクロマシンが
体内を駆け巡る
筋肉が収縮し肺の膨張率があがり力がみなぎる
ハネト 「ありがてぇ~! これならイケる!!」
右手にバレーボール大のエネルギーの塊りを作り出すハネト
ゴーグルに翔子の落下地点が記される
ハネト (落下地点の少し先
爆風で軌道を変え45度の角度で放物線を描ければ!!)
走るハネト 落ちていく翔子の姿がゴーグル越しに映る
意を決してジャンプ!! 体をひねり思い切りエネルギーの塊りを
投げつける
ハネト 「いっけぇぇ~!!!」
ヒュン! と音をたて突き進むエネルギーの塊 目標に到達。ハネトが叫ぶ
ハネト 「弾けろぉぉぉぉぉ~!!」
閃光が走る 爆発に飲み込まれていく翔子の姿
爆風が翔子の体を弾き飛ばし 軌道を変えてハネトに向かって飛んでくる
衝撃波の中で身を伏せるハネトの頭上を飛んでいく翔子の姿
ハネト 「えぇぇぇ~いぃ!!」
翔子に向かって走るハネト 下半身の筋力が膨張収縮し右足に
力を貯めて一気に蹴り飛ばす
翔子に向かって体を飛ばし受け止めようとするハネト
ハネト 「うぉぉぉぉぉ~!!!!」
差し出した左の手 翔子の肩を掴み 抱き寄せ 頭を守るように抱え込む
翔子を守りながら背中から落ちていくハネト 二回 三回と
バウンドしながら地面に打ち付けられ
やがて滑るようにして二人の動きが止まった
二人の姿を映し出す教室内の大型モニタータクトが報告する
タクト 「バイタルスキャン! オールグリーン
二人は今元気にしてまぁ~す」
歓喜に沸く教室内 体を小刻みに震わせ呆れた物言いをする博士
Dr寺西 「なっ・何というアナログ的な事を!!」
この短時間で何の計画も計算も無しにアレだけのことを
やってのけるとは!!」
「これは君の中の(イメージ) 想像力いや妄想力のなせる事なのですか
ハネト君!!」
一息ついて腰を降ろす響 モニター上のハネトに好意の視線を向ける
響 「やってくれたわねハネト!!
学年2コの年下かぁ~私的に問題ないけどね!!」
自分のゴーグルを手入れするカブに目を配り礼を言う響
響 「カブ助かったわ ありがとう」
少し照れ笑いしながら応えるカブ
カブ 「小麦色に日焼けした翔子ちゃんなら
ギャルっぽい感じでいいけど
真っ黒の炭になった翔子ちゃんは見たくないからねぇ~!」
あの爆発から身を守る為に遮熱のマイクロマシンを翔子の周りに
展開していたことを示す大型モニター
その大型モニターを自分のゴーグル越しに見つめてため息をつくカブ
カブ 「はぁ~あっ」
ゴーグル越しの視線 カブとお揃いのゴーグルを身に着ける少年
ユニオンジャックのタンクトップ 少し大きめのシャツを羽織り
スリムのジーンズに安全靴のブーツ
零士 「あと少し・・・5㎞ってところ だな」
発掘用の簡易ロボットを操縦して(ちきゅうぼうえい軍)のある
学校へ向かっている
自分を覆い尽す陰に気付き視線を空に向ける
零士 「なんなんだぁ ありゃ~?!」
全長3mの簡易ロボット コクピットから梯子を伝い屋根の上に飛び乗り
ゴーグル越しに辺りをうかがう
零士 「なるほどな! 宇宙からの侵略者と 魔法使いの翔子がいて」
「おろっ? こっちは新顔だなぁ~!」
カブ特製のスチームパンク風ゴーグルがモーターと歯車を解して
複数のレンズを動かしズームインとズームアウトを繰り返す
零士 「楽しそうな事 やってんなぁ~おいぃ」
かけていたゴーグルを頭の上にずらし目を輝かせる零士
零士 「待ってろよ みんな! 待ってろよ カブ!!!」
ロボットの背中の荷台には 核戦争以前の 雑誌 マンガ レコード
音楽機材などが泥だらけの状態で積まれている
零士 「うっひぉぉ~!」
声を上げながらみんなの待つ学校へ急ぐ零士
気を失っている翔子の頬を軽くたたくハネト
ハネト 「おい! おい! 翔子!」
ゆっくりと目を開けてハネトを映し出す翔子の瞳
翔子 「ハ・ネ・・ト・?」
安堵の表情のハネト
翔子 「わたし・・ハネトが・・・助けて・・・」
ハッとする翔子 ガクガクと震える 落下する記憶が蘇りハネトの
二の腕にしがみつく
翔子 「うわぁ~~」「あわぁわわわわぁ~!」
二の腕にしがみついた翔子の手の上に手を添えて
ハニカミながら翔子を諭すハネト
ハネト 「安心しろ 翔子」 「いつでも助けるからよ!」
ハネトの言葉に「フッ」と我に返り好意の視線を向ける翔子
翔子 「ありがとう・・ハネト・・」
ハネト 「おぅ 任せろだぜ!」
二人を取り囲むように 敵の飛翔体が降下を続ける
折り紙の折り線が発光して体長1.5m程の人型ロボットに変形
次々と地上に降り立つ
翔子を起こして声をかけるハネト
ハネト 「イケるか? 翔子」
しがみついたハネトの腕から急いで手を放し恥ずかしそうに応える翔子
翔子 「うん・・問題ない・・」
目を輝かせながら嬉しそうに話すハネト
ハネト 「やっと 戦いらしくなってきたぜ おぃ」
ハネトの言葉を頼もしく感じた翔子。
翔子 「私には これがある!!」「マハトツヴァイ!!」
赤い魔法陣が二つに分離。翔子の両手に握られ
ファイティングポーズを取る
ハネト 「ヤル気満々だな おぃ!!」
ハネトも負けじと両手にエネルギーを蓄え青白く発光させる。
一瞬(カッコいい~!)・・と思いながらも自尊心が傷付くため
素直に褒められない翔子
翔子 「おぉ~!カッコっ」・・・「なっ・・中々のものだな・・ハネト!」
敵に目を向けるハネト
ハネト 「背中は任せたぜ! 翔子!!」
もう一度決めようとしたセリフを先に言われてちょっとすねる翔子
翔子 「もぉ~! 私の決めセリフ 取らないでよ ハネトのいじわるぅ」
300対2の肉弾戦が今幕を開ける
昆虫(トンボ)の羽のような翼を広げ浮遊する敵人型ロボット
3体同時にハネトに襲いかかる
敵に向け右手をかざし言葉をとなえるハネト
ハネト 「バースト!!」
一瞬の閃光 放たれたプラズマの帯が敵ロボット
3体を融解爆発させていた
ハネト 「フッフッフ 脆いな!」
バトル漫画の主人公のようなセリフを決めて優越感に浸るハネト
その光景に目を輝かせ武者震いする翔子
翔子 (うぉ~素晴らしい! そしてカッコいいぃ~!)
のこぎり状の刃が高速回転する赤い魔法陣。敵陣に突っ込む翔子
翔子 「私も 負けない!」
両手の魔法陣を駆使して敵を切り刻む翔子。5体の敵を瞬殺していた
翔子 「私一人で十分だ ハネト」
ハネトより2体多く倒したので優越感に浸る翔子
ハネト 「面白れぇ~!!」
二人の戦いが加速していく
右拳にエネルギーを貯めるハネト
ハネト 「バーストナックル!!」
ハネトの拳が敵を貫く
敵陣に右手を差し出し言葉をとなえるハネト
ハネト 「オーバーバースト!!」
プラズマの帯が10体程の敵の群れをなぎ倒していく
縦横無尽に駆け回る翔子 飛翔する敵には魔法陣を投げつけ
地上の敵には容赦なく切り付けていく
翔子 「まだまだぁ~!!」
(ハイ)になっていく翔子 高揚感が止まらない 満足気な笑みを浮かべる
空中に退避する敵ロボット 二つの魔法陣を投げつける翔子
翔子 「逃がさない!!」
魔法陣を持たない翔子に一体の敵ロボットが突進
翔子の左わき腹に蹴りを入れる
翔子 「ナニぃ?!!」
蹴り飛ばされる翔子 すんでのところで踏みとどまり平常心を装う
翔子 「ヤルなぁ 貴様!!」
〇左わき腹に手を当て あのセリフを決める。
翔子 「あばらが 二・三本と言ったところか・・・」・・・「グはっ!!」
その場にコテンと倒れこむ翔子
教室内に緊張が走る タクトが叫ぶ
タクト 「翔子ちゃん!! 左のあばら骨が全部折れてるぅ~!!!」
頭を抱える博士
Dr寺西 「NO~!! あれ程無茶はしないでと言ったのにぃ~!!」
注意深くモニター上の翔子を見つめる忍先生
響が叫ぶ
響 「ハネト!! 翔子のバックアップ!! 急いで!!」
翔子のもとに駆け寄るハネト 周囲の敵を薙ぎ払う
ハネト 「オーバーバーストプラス!!」
ひゅ~ひゅ~と呼吸をしている翔子を確認 ホッとするハネト
ハネト 「まったく! 忙しいことやってるなぁ~おいぃ」
ハネトの言葉に痛みに耐えながら落ち込む翔子
翔子 「あうぅ・・・」
口をパクパクさせながらハネトに語りかける翔子
翔子 「・・ハ・ネ・ト・・・この・戦いが・終わったら・
一緒に・冒険・・しよう・・・」
翔子の言葉に身体を震わすハネト。鳥肌が立つ
ハネト 「・翔子・・それって・まさか・・伝説の・・・
「死亡フラグ」って奴じゃないのか?!!!」
「うおぉ~すげぇ~!! すげぇ~ぞ翔子!!!!!」
初めて聞いた死亡フラグに大興奮するハネト。感動して泣いている
ハネト 「さすがだぜ翔子! お前ってヤツはぁ~
お前ってヤツはぁ~よぉ~!!!」
喜ぶハネトに痛みに耐えながら精一杯の笑顔と
力を振り絞り親指を立てる翔子
翔子 「ひゅ~・ひゅ~・」
感動も束の間 一つの疑問に気付くハネト
ハネト 「あれ?・でも死亡フラグって
戦いの前に建てるんじゃなかったかなぁ~?
今は戦いの最中だし・・翔子死にそうになってるしぃ~」
ハネトの疑問にハッとする翔子 間違いに気づき目線を背ける
ハネト 「翔子教えてくれ!! 一体どっちなんだよぉ~!!
答えてくれよぉ~翔子ぉ~!!!」
目線を背けた顔をプィっとソッポ向く翔子 痛みに耐えながら泣いている
翔子 「・・お願い・だから・・今・話かけ・ないでぇ~」
ハネトの叫びがコダマする
ハネト 「答えてくれよぉ~ 翔子ぉ~~~!!!!!」
ざわつく教室内 響がハネトに指示を出す
響 「ハネト! 翔子をこのポイントまで収容 急いで!」
「タクトは翔子の痛覚感度を下げて!!」
「忍先生!! お願い出来ますか?」
持っていた文学小説を机の上に置き立ち上がる忍先生
忍先生 「出番のようじゃな 安心せい 心得ておる」
黒板の大型モニターにレシーバー03の反応 かのんが報告
かのん 「レシーバー03 零士確認
フラワーズへのバックアップ開始します」
片肘を付き昔のギャル雑誌を眺めていたカブが一変
背筋を伸ばし瞳を輝かせながら歓喜の声を上げる
カブ 「レイちゃん!!! 帰って来たぁ~!!!」
安堵の表情を浮かべる響 望遠カメラを使って零士の姿を確認する
響 「間に合ったわ! これで勝ち・・確定ね」
ふぅ~と息を付き笑みを浮かべる忍先生
忍先生 「ふぅ~ やれやれ・・じゃな」
何事もなかったかのように椅子に腰かけ文学小説を読み始める
教室内に届く零士の声
零士 「みんなぁ~! お・ま・た・せ!」
冷静を保ちながらチョット嫌味を言う響
響 「まったく どこほっつき歩いていたのかしら この風来坊さん」
切り返す零士
零士 「相変わらず 厳しいなぁ~響先輩は!
そんなに怒るとソバカス増えますよ」
気にしていることを言われても2コ上の先輩として冷静を保とうとする響
響 「ご・ご忠告・あ・り・が・とね!
憎まれ口は相変わらずのようだ・け・ど!!」
すかさず切り返す零士
零士 「憎まれっ子世に憚るって言うじゃないですか 響先輩!!」
能天気で口の達者な零士に話を逸らそうとする響
響 「と・こ・ろ・で零士くん! 準備の方は出来てるのかしら」
間髪入れず切り返す零士
零士 「せかさないで下さいよ 響先輩」
「慌てるナントかは貰いが少ないって言うでしょ」
「あっ先輩の場合 嫁の貰い手が少なくなる・・かな?」
勝てない事を悟り白旗を上げる響
響 「もういいわぁ~ 好きにしてぇ~」
頬を染めもじもじしながらモニター上の零士を見つめるカブ
話しかける零士
零士 「よぉ~カブ! 元気にしてたか?」
突然の振りに顔を真っ赤にさせアタフタしながら零士に答えるカブ
カブ 「うっ・・うん! ・・げっ・元気に・・・してたよ・・!!」
零士 「そっかぁ~! そいつは何よりだぜ!!」
カブ 「れっ・レイちゃんも・・元気・そうで・・よっ・良かった!」
零士 「お前の好きそうなお土産 沢山発掘してきたから
楽しみにしてろよ!」
カブ 「えっ?・・・私に・・お土産?・・あっ・ありがとう!!」
零士が自分のためにしてくれたことに頭がパニックするカブ
目をグルんグルんさせる
カブ (れっ・レイちゃんが・・私のために・・お土産・・・を・・)
昇天してペタンと机にうなだれるカブ。頭から湯気が出ている
昇天したカブに目をやる響
響 「ホントわかりやすいんだから
まったくどれだけ激しい片思いしてるのかしら」
手垢の付いた零士と書かれたボタンに指を伸ばす博士
無数にひび割れているボタン
Dr寺西 「チューニングは終わりましたか? 零士君」
博士の問いかけに答える零士
零士 「おっ博士ぇ~! 久しぶりぃ~」
モニター上にギターを担いだ零士の姿が映し出される
Dr寺西 「そっ・そのギターまさか・・・!!!」
悪びれた様子もなく満面の笑みで答える零士
零士 「博士ぇ~! 昔のギターは鳴りがいいなぁ~!!
感動ものだぜ! まったく!!」
サングラス越しに分かる怒りの表情
零士と書かれたボタンを拳で殴りつける博士
Dr寺西 「そのギター・私・いや俺の・フライングVぢゃねぇ~かぁ~!!!」
豹変する博士 鼻息荒く奥歯をギシギシと噛み締めている 零士が答える
零士 「ケチなこと言うなよ博士! 千本以上あるコレクションの一本だろ?」
怒りをぶちまける博士 髪の毛がナワナワと逆立っている
Dr寺西 「てぇんめぇ~れぇいぃじぃ~コ・ノ・ヤ・ロ~!!!!」
「お前のようなクソガキがぁ~! ビンテージのフライングVを
鳴らすことなど十万光年早いんだよぉ~」
小馬鹿にしたように言い返す零士
零士 「まったく十万光年早いってどういう意味だよ?
相変わらず語彙力に欠けてるね は・か・せ!!」
歯ぎしりしながら地団駄を踏む博士
Dr寺西 「許さん・・・絶対に許さん・・・許さんぞぉ~零士ぃ~!
お前のぉ~お前のチ〇チン掻っ捌いて串刺しにして炭で焼いて
塩たれ付けて焼き鳥にして食ってやる」
更に追い打ちをかけ小馬鹿にする零士
零士 「ブぅ~! 残念でした 俺のチ〇チンは鶏肉じゃ無いから
焼き鳥にはなりません」
ぎゃぁ~~っと奇声を上げ抱えたあたまを机に打ち付ける博士
Dr寺西 「こっ殺す・お・ま・えを殺す・・」
「いいかぁ 零士! そのギターに一ナノmの傷でもつけてみろよぉ~
その瞬間 マッハの速度で お・ま・えを殺すぅぅ~!!!!!」
呆れた顔でカウントを取る零士
零士 「3・2・1・ハイ時間切れで~す」
「1km離れたこの場所までマッハの速度で移動するには
3秒以内がタイムリミットで~す」
「悲しいねぇ~博士! 天才物理学者の 名が泣くぜぇ~!!
揚げ足ばかり取られる博士。号泣してしまう
Dr寺西 「うぎゃぴぃ~~!! 悲しいよぉ~悔しいよぉ~!!!」
「何故だ・何故なんだ・・」
「だいたいビートルズも知らない(ガキんちょ)がユニオンジャックに
袖を通すことすら笑止千万!! 」
「そんなクソガキにぃ~そんなクソガキにぃ~!!」
「俺を馬鹿にして許されるぅ~数式もぉ~物理現象もぉ~
方程式もぉ~あってはならないぃ~!!!!!」
説教じみたことを嫌う零士
零士 「まったく ビートルズ・ビートルズ うるせぇ~なぁ~」
ビートルズを小馬鹿にする零士の言葉に反応するしおんとかのん。
しおん 「ビートルズを愚弄するその言葉 謝りなさい 零士」
かのん 「ビートルズを知らないお前はクズなのです 謝りなさい 零士」
淡々と言葉を発する二人に戸惑う零士
零士 「・おっ・お二人とも・居たのですね・・・ごめんなさい!」
何事もなかったかのように業務を続けるしおんとかのん
ふぅ~っと息を付きホッとする零士
零士 「ふぅ~ヒヤヒヤしたぜ!」
ヘッドフォンを装着 おもむろに取り出した20世紀のカセットプレーヤー
零士 「博士ぇ~! 自慢するほど いい音しないぜ このプレーヤー」
〇発狂してしまう博士
Dr寺西 「ガぁ~~~~~!!!!!
僕の・・僕・の・・・大切なコレクション・・を・・」
直立不動 そのまま後ろへ倒れる博士 不気味な笑い声が聞こえる
Dr寺西 「あへっあへへへへっ 触られちゃった・僕の大切なもの・・
汚されちゃった・僕の大切なもの・・
けがされちゃった・僕の・・大切なもの」
むくっと立ち上がりフラフラと自分の机に戻る博士
(地球破壊兵器オメガ)のボタンの蓋を開けレッドアラートを発動させる
Dr寺西 「れいじぃ~~!!!!! この地球もろとも
おまえをぉ~ 抹殺・してやるぅ~」
「ガぁ~~~~~っ」
教室内に響く博士の叫び 視線を向ける生徒たち
すくっと立ち上がりコツコツと足音を立てながら博士に詰め寄る忍先生
忍先生 「うるさいんじゃぁぁ~~オラぁ~!!!」
渾身の右フックが博士の顔面を捉える 宙に浮く博士の身体
3回転して床に落ちる
忍先生 「三島由紀夫が読めんじゃろがぁ~!!!」
博士の身体を引きずりサソリ固めをかける忍先生
身動きを取れなくしている
忍先生 「エリカすまんがいつものを頼む 大至急じゃ」
大きな目を更に見開き二回うなずくエリカ
エリカ 「ふんふん!!」
カレーを作るような大鍋に水を張りインスタントコーヒー一瓶・
砂糖一キロ・牛乳一リットルを放り込み
無数のバーナーが並ぶ(超絶コンロ)に火を付ける
沸騰する10秒の間に漏斗を忍先生に投げつけるエリカ
上手くキャッチする忍先生
サソリ固めを解き受け取った漏斗を博士の口にねじ込む忍先生
ミトン装着 ぐつぐつと沸騰した特別コーヒーを漏斗に流し込むエリカ
Dr寺西 「ゴガァっゴガぁっゴガっ うぅ~ うぅ~~!!」
体内マイクロマシンを使い博士の体の火傷を治す忍先生
自分の席に戻り小説を読み始める 楽しそうにあとかたずけするエリカ
Dr寺西 「ブゥはぁ~ 私としたことが 大人げないぃ」
予備のサングラスを装着 零士のボタンに手を伸ばす博士
Dr寺西 「いいでしょう 零士君
この戦いの間だけ貸してあげるということで!」
「た・だ・し 壊さないで下さいね」
セッティングを終えていた零士 プレーヤーのスイッチを押し
博士の問いに答える
零士 「博士 その願い・・・愚問だ」
パワーコード一発!! 零士を取り囲むように力場が形成される
視覚化出来るほどの磁力線が光の速さで広がっていく
〇マイケルシェンカー (キャプテン ネモ)鳴り響く
教室内の響 カブに期待の言葉をかける
響 「見せてもらうわよ!! 超絶技巧の天才プログラマー!!!」
瓶に詰まったキャンディーを鷲掴み 口に頬張るカブ
バリバリと音を立てかみ砕きごくりと
飲み込みよだれを垂らしながら覚醒する
カブ 「うひょ~~!! 来たぁ来たぁ来たぁ~!!!!」
特殊な形状のキーボード 大きな歯車が4枚
複雑に入り組んだ無数の歯車が回転
ゴーグル越しのカブの視線一つのキーのその奥に
立体的に映し出された英数字が歯車を解してランダムに変わっていく
左足のペダルを自在に操り 変わり変わりのプログラム言語を確定させ
ワンクリック3文字のタイピングをミスタイプ無しで
マイクロマシンのプログラミングを完成させていく
目を細めあきれ笑いを浮かべる博士
Dr寺西 「私を超える逸材?・・それは今の彼女にとって不適切な呼名」
「4年前8才の少女は 微笑みながら」
「究極のジェラシーをプレゼントしてくれましたからね」
零士の作り出した磁力線が
マイクロマシンのエネルギーを飽和状態にさせる
パワーを得たマイクロマシン カブのプログラミングにより原子結合
物質化連結を繰り返しタイル状の六角形を無数に作り出す
やがてそれは地球全土に広がり
耐熱・耐防御・耐放射線のバリアを形成する
翔子を抱きかかえポイントに向かうハネトギターの音に気づき立ち止まる
ハネト 「なんだぁ? 音楽? ギターの音? 」「光? 何が起きてるんだ?」
抱きかかえる翔子の体が発光 自分の体も発光している 翔子がつぶやく
翔子 「これは・・神のご加護・・・」
飽和状態のマイクロマシンが頬に貼り付けたレシーバーを
通して体内に侵入体内組織に付着して保護膜を形成
タンパク質マイクロマシンが骨折した部分に大量増殖を
繰り返し翔子の体を完治させていく
翔子 「・うっ・・くすぐったい・・・」
恥ずかしそうにハネトに降ろしてもらう翔子
翔子 「・ハネト もう大丈夫・・問題ない」
さっきまで虫の息だった翔子の回復に驚くハネト
ハネト 「だっ・大丈夫・・なのか?」
アクロバティックな動きを披露し心配するハネトを納得させる翔子
翔子 「神のご加護を受けた私は・・・無敵だ!!」
敵が総力戦を仕掛ける 総数3000 衝撃波をはじかせながら
降下して来る
空飛ぶ魔法陣を作り出す翔子 先ほどの魔法陣とは大きさが違う
翔子 「ハネト 残りの敵のせん滅を頼む 私はアレを叩く!!」
群れを成して降下する敵を見上げて 一気に上昇していく翔子
高度12000m 先ほどの限界高度を超えて敵を待ち受ける翔子
紫の魔法陣 詠唱をとなえる
翔子 「我は契約する」「心の闇を供物に変えて」
「我は召喚する」「光の加護を怒りに変えて」
「赤い爪 青結の刃 緑の嘆き 光の羽 紅蓮の炎」
「絆を結び」「我思い 我願う時」
「エルガーツゥバイ!!」「エルガーフィーア!!」
「我に怒りを 我光の守護者なり!!」
四つ作り出された 紫の魔法陣 両手を使い押し出す翔子
翔子 「ハァ~~っヤァ~!!!」
〇敵陣に向かう紫の魔法陣。粉塵爆発を警戒する敵飛翔体 四方へ散らばる。
翔子 「シルトメタモルフォーゼ(変化)」
変化の言葉を唱えた翔子 緑の魔法陣が四つの巨大な円すい状に変化
紫の魔法陣を操り四つの円すい状の魔法陣に放り込む
翔子 「マハト(力)」
左手の人差し指に小さな四つの赤い魔法陣
上下左右に配置された四つの緑の魔法陣
空に十字架の配置をして同時に点火する赤い魔法陣
翔子 「エクスプロジィオーン!!!」
クラッカーを弾くように円すい状の口から
巨大な火柱が空を描き敵飛翔体を薙ぎ払う
巨大な十字架の火柱が浮かぶ
千体程の敵飛翔体が藻屑となり落ちてゆく
翔子 「後はあいつの仕事だな ビリビリマン!」
ハネトのもとに急ぐ翔子
教室内の生徒たち 翔子の放った火柱に呆然とする 笑うしかない博士
Dr寺西 「まったく 呆れてしまいますよ ハネト君といい 翔子君といい
これも 妄想力のなせる 技なのですか?・・・」
零士の演奏が続く ピシっピシっと体内に電気を貯めこんでゆく
零士の演奏に耳を傾ける博士。左足でリズムを取る
Dr寺西 「フッ・その年齢でこの曲が弾けるようになりましたか・・・
それでも・」
「私ほどでは ないですけどね!!」
零士の演奏に苛立つしおんとかのん
しおん 「相変わらず 下手くそなプレイね かのん」
かのん 「いいえ 相変わらず超下手くそなプレイよ しおん」
零士の演奏にダメ出しをする二人をなだめる博士
Dr寺西 「相変わらず手厳しいですねぇ~ しおん君とかのん君は」
「でも・・余りいじめないで下さいねぇ~」
「彼はまだ・・・発展途上なのですから」
ハネトのもとに 降り立つ翔子 目を輝かせて翔子を出迎えるハネト
ハネト 「すげぇぞ翔子!! さすがだぜ!」
翔子 「ハネトもいい仕事をしたな」
地上の敵をせん滅していたハネト 演奏をつづける零士に目をやる翔子
翔子 「後は アイツの仕事だ!!」
翔子の言葉に零士に目をやるハネト
ハネト 「あいつ? アイツは何者なんだ?」
零士をにらみつける翔子
翔子 「ヤツの名前は ビリビリマン!!」
翔子の言葉に 驚くハネト
ハネト 「びっ・・ビリビリ・マン?」
興奮するハネト 翔子に質問する
ハネト 「翔子! アイツは仲間なのか? アイツは強いのか?
アイツは・・アイツは・・」
ハネトの質問に重い口をひらく翔子
翔子 「よく聞けハネト ・アイツは・・アイツは・・・
とっても・・カッコ悪いヤツだ!!!」
啞然とするハネト
ハネト 「カッコ悪い・・・のか?」
演奏を終えた零士 体から電気を放電している
残り2000体程になった敵飛翔体 20体一組となり 変形合体を繰り返し
体長10m程の多脚戦車になり地上に降り立つ その数100体
ギターのヘッドの部分を両手で握り 天に掲げ放電を確認
雄叫びを上げながら敵多脚戦車に突進していく
零士 「うりぁぁぁ~~!!」
ギターを振り回し無数の磁力線を地面に発生させる零士
零士 「電気 ビリビリぃ~~~!!」
磁力線の上に飛び乗る零士 磁力の反発を利用して敵多脚戦車の
頭上まで飛んで行く
零士 「カミナリ ビリビリぃ~~~!!」
ギターを振り降ろし 多脚戦車に電撃を打ち落とす零士
黒焦げになり一瞬で沈黙する一体の多脚戦車
零士 「簡単・・だな!!」
ニヤリとする零士に三体同時に襲い掛かる多脚戦車
前足を上げ踏みつぶそうとする
零士 「遅い!!!」
磁力線を操り上空にジャンプ宙を舞う零士に一体の
多脚戦車がビームを放つ
零士 「おろっ?」
零士の作り出す磁力線がビームを捻じ曲げる
零士 「あっぶねぇ~!!」
ギターを振り上げる零士 力場を作りギターに大量の磁力線を
集中させ発光させる
零士 「ビリビリ来たぁ来たぁ~!!」
多脚戦車にギターを突き刺す零士 チョコレートのように溶けていく
零士 「うっひぉぉ~~!!」
大暴れする零士 次々と敵を融解爆発させていく
モニター上の零士を見つめる博士
Dr寺西 「約束は 守ってくれているようですね」
「相転移・・フェイズシフトディフェンスとでも 言いましょうか・・」「ギターに電磁場を形成し放射状へ放出
強力な磁力線の周波数(波)をコントロールしながら分子を超振動・・
近づけたものは 個体・液体・気体・そしてイオン化へと
相転移させていく」
「物理接触さえしなければ 私のギターは傷付くことはないですからね。」
零士の大暴れを見守る ハネトと翔子 ハネトがつぶやく
ハネト 「すっげぇ~カミナリ撃ちまくってるぞぉ~おいぃ~」
「あれの どこがカッコ悪いんだよ 翔子」
呆れた顔でため息をつく翔子
翔子 「ふぅ~ まだ気づかないのか ハネト」
「耳を澄ませて よく聞くのだ」
暴れまわる零士 (電気ビリビリ カミナリビリビリ)の言葉がコダマする
翔子 「うぅ~ 全くもって情けない! もっとカッコいい技の名前が
あると言うものを!」
「ライトニングストライクとかサンダー&ライトニングとか・・」
「せっかく電気を自由自在に操れる者が ナント嘆かわしい!
ハネトもそう思わないか?」
力説する翔子にあっけにとられるハネト
ハネト 「おぅ おおぅ」
戦闘を続ける零士 放電の出力が弱くなっていく
零士 「あれっ?・・もしかして・・電池切れ・・?」
多脚戦車の放つビームが磁力線を貫通し零士の肩をかすめる
零士 「あっ痛ぅっ!!」
教室内のカブ 思わず叫んでしまう
カブ 「レイちゃん!!!」
マイクロマシンのプログラムを零士の防御に振り切る
カブ 「レイちゃんは私が守る!」「許さない! 絶対に・・絶対にぃ~!!」
零士の周りに展開されるマイクロマシンの防御壁
鏡状の壁に当たったビームがはじき返され 多脚戦車に命中していく
カブ 「うっひぃひぃっひぃ~どうした?どうした? もっとだ!
もっと打ち込んでみろぉ~」
ただならぬ気迫でプログラミングしていくカブ。呆れ顔で物思う響
響 (おめでとうねぇ~零士くん・・あなた激しく愛されてるわ~)
防御壁に守られる零士 レシーバー越しにカブに話しかける
零士 「助かったぜカブ! ありがとなっ!!」
零士の(ありがと)の言葉が頭の中を埋め尽くすカブ 昇天してしまう
カブ 「・レイちゃんが・・レイちゃんが・私に・・ありがとうって・・・
私・・・レイちゃんの・為なら・・・死ねる・・・!」
机にうなだれるカブ 用意していたタオルで顔を拭き
タオルケットを掛けてあげる響
響 「唯一無二の存在・・・お疲れ様ね・・カブ!」
仕切り治す響 全員に指示を出す
響 「かのん! カブの作った防御壁のプログラミングデータを
トミーへフィードバック
しおん! シュミレーションのパターン上位二つを表示 AIで補正をかけて
ハネトと翔子に展開
タクト! インパクト対策実行
タンパク質マイクロマシンを頭部へ集中
脳壁へ充填して対ショックの数値を30Gまで
インカムを使い二人に指示を出す響
響 「ハネト! 翔子! チョットだけお手伝いしてくれる? バッテリーの切れた誰かさんを守って欲しいの!!」
嫌味を言われて嫌味を言い返す零士
零士 「いじめないで下さいよ響先輩
年下に優しくしないと彼氏出来ませんよ」
嫌味を言われてもクスっと笑う響 しおんとかのんに話を振る
響 「しおんちゃ~ん かのんちゃ~ん!
本日の零士くんのギタープレイはぁ~何点くらいの点数ぅ~・・・」
会話を遮る零士 あたふたする。
零士 「わぁ~チョット待って!! わぁ~~~・・・ごめんなさい」
ドヤ顔で指示を出す響
響 「あなたはそこで 充電でも し・て・な・さ・いぃ」
すっかり消沈する零士
響 「それでは二人ともよ・ろ・し・く・ね」
零士のもとへ向かうハネトと翔子 敵多脚戦車を蹴散らしていく
空から翔子が迎撃 地上ではハネトが攻撃
コンビネーションを織り交ぜながら 零士のもとにたどり着く
翔子 「大丈夫か?・・ビリビリマン」
ちょっと苦手な翔子に挨拶する零士
零士 「いっ・いい加減・・その呼び名は止めてくれないかなぁ 翔子」
敵を蹴散らしながら 遅れて零士のもとにたどり着くハネト
ハネト 「大丈夫か?・・ビリビリマン」
翔子と同じ呼び方をするハネトに一瞬引いてしまう零士
ハネトの身なりを注意深く観察し納得する
零士 「うっとぉ・(なるほどねぇ 翔子と同じタイプの人種だなぁ
俺苦手なんだよなぁ 思い込みが激しそうだしぃ
人の話聞きそうにないしぃ・・・うぅ~ん・・・・
まぁ~でも悪いヤツではなさそうだし
俺のピンチを助けてくれたのも事実だからぁ)
様子をうかがいながら ハネトに挨拶する零士
零士 「・よぉ・よろしくなぁ~ハネト君・・・俺の名前は・ビリビリマンじゃなくて・」
目を輝かせながら 零士の挨拶を遮り 会話を進めるハネト
ハネト 「水臭いぃぞぉ~ビリビリマン!! 遠慮するなよぉ~ビリビリマン!!
ハネトでいいぜ俺のこと! よろしく頼むぜぇ~ビリビリマン!!」
ビリビリマンを連呼され 落ち込みながら納得する零士
零士 (・・・やっぱり・・俺・・苦手だわ・・・)
分離を始める多脚戦車。合体を繰り返し
巨大なムカデロボットに変化していく
全長100mを超えるムカデロボット
高出力のビームをまき散らし三人に襲い掛かる
翔子 「ハネト! ビリビリマン! 援護を頼む!!」
空飛ぶ魔法陣に飛び乗り 敵に向かっていく翔子
赤い魔法陣を作り投げつける
翔子 「ムート!!(力)」
敵ムカデロボット 足の部分を切り離し赤い魔法陣にぶつける
軌道を逸らされ翔子のもとに帰る赤い魔法陣
ハネト 「オーバーバーストプラス!」
敵に向かうプラズマの帯。ビームを照射され打ち消されてしまう
零士 「カミナリ ビリビリ!!」
敵ムカデロボット 全ての足を地面にめり込ませ
電撃を地中に流してしまう
顔を見合う三人 翔子が肉弾戦を仕掛ける
空飛ぶ魔法陣を駆り敵の頭上に飛び上がり特攻をかける
高出力のビームが防御壁のマイクロマシンを一枚一枚壊していく
足の部分をミサイルのように発射させ翔子にぶつける
緑の魔法陣が盾となり翔子の体を守るが次第に小さくなっていく
翔子 「あと・少し・・・」
敵ムカデロボットの背中に飛び乗った翔子 容赦なく切り刻んでいく
翔子 「えぃっえぃっ! いやぁ~~!!」
ギィギィギィギぃーと鳴り響く敵の動作音
尻尾の部分を振り回し翔子を打ち払う
翔子 「ナニぃ~?」
飛ばされる翔子 バウンドしながら地面に落ちるが
ムクッと立ち上がり敵を指さす
翔子 「やるなぁ 貴様!!」
シリアスに決める翔子
教室内タクトのモニター インパクト対策の数値が24Gを示している
脳壁内に充填されたマイクロマシンが翔子の脳震とうを防いでいた
上目づかいにモニターを見つめる響 策を練る
響 (敵もバカでは無いってことね 個別の攻撃では読まれてしまう・・
厄介なのはあのビームとミサイル・・ハネトの一撃?・・・
この地上で放てば被害は甚大・・・
今のマイクロマシンでも防ぎきれない・・・マイクロマシン?・・
防御壁?・・・少しの時間動きを止めれば・・・)
カブを起こして指示を出す響
響 「カブ! もう一仕事お願いするわ。」「敵頭部ビーム発射口の周囲に
防御壁マイクロマシンを展開。」「10秒もてばいい!!」
「翔子 零士の後ろで紫の魔法陣を準備」
「ハネト 翔子の後ろで敵頭部破壊を待機」
「零士 敵ロボット周辺に力場を形成
磁力線をフルパワーで相手の動きを封じ込めて!!」
振り向き 博士に進言する 目に力を込める響
響 「ヤっちゃっていいですか?・・・博士」
ほくそ笑む博士
Dr寺西 「・私の心をくすぐりながら・・・じらすのは止めて下さい。」
「君はホントにイジワルですねぇ・・・響君!」
自信を確信に変えて指示を出す響
響 「みんなぁ 準備はいいぃ?! 私の指示に従ってよろしく頼むわよ!!」
指示通りの配置の三人。零士 翔子 ハネトの並び。時を待つ
高出力のビームを乱発する敵ムカデロボット
零士の作り出す磁力線に捻じ曲げられる
磁力線と防御壁の輝きの中 詠唱を唱え始める翔子
インカムを握る手に力を込める響
響 「防御壁展開! カブ!!」
AIの補正をかけずに敵の動きを予測しながら防御壁の
プログラミングを打ち込むカブ
ビームの乱発を食い止める防御壁
響 「力場形成 磁力線フルパワー 零士ぃ~!!」
零士 「うぉ~~~!電気ビリビリぃ~」「カミナリビリビリぃ~」
ギターを掲げ力場を発生 敵ムカデロボットに投げつける 地を這う電撃
視覚化出来る程の磁力線が敵を包み込み
動きを封じながら空中に持ち上げる
300m上空まで持ち上げられた敵ムカデロボット 磁力の力で
動きを制限されながらビームを乱発 防御壁を壊していく
最後の防御壁を打ち破る敵ムカデロボット ギギギぃ~と音お立て
ゆっくりと三人に照準を合わせる
響 「ぶっ壊しちゃえぇ~!! ハネトぉ~!!!」
ハネト「よっしゃいぃ」「オーバーバーストエックス!!!」
放たれたエネルギー弾 ビーム発射口を貫き頭部を爆発させる
合体連結したところを光らせながら分離をしようとする敵ムカデロボット
磁力の力で押さえつけられ鈍い金属音を響かせる。
断末魔の悲鳴を上げる敵ムカデロボット
響 「吹き飛ばせぇ~!!! 翔子ぉ~!!!!!」
響の声に応える翔子。四つの紫の魔法陣 四つの緑の魔法陣 四つの赤い魔法陣を空に浮かべて敵ムカデロボットに押し出す
十字架の形に配置された魔法陣
翔子 「我に怒りを! 我光の守護者なり!」
「エクスプロジィオーン!!!!!」
翔子言葉に反応する魔法陣 発光 収縮 爆発して
十字架の火柱を空に描く
富士山をバックに敵の母船 十字架の火柱
衝撃波を受け髪の毛をなびかせる三人の姿
教室内の大型モニターに映し出される
敵の母船が向きを変え逃げようとしている
しおん 「敵母艦の反転を確認 地球の引力圏を脱出しようとしています
ハネトのボタンに手を伸ばす博士
Dr寺西 「ハネト君 敵の母船を叩いて頂けますか?」
顔を見合わせる三人
零士と翔子は納得した表情をする
零士 「もう電池切れだし・・・届かないよなぁ俺の電撃」
コクリっとうなずく翔子
翔子 「・さっ・・さすがの私も・・あそこまでは・
飛んで行けないし・・・」
目をらんらんと輝かせ礼を言うハネト
ハネト 「ありがとな 翔子! ありがとな ビリビリマン!!」
零士がツッコむ
零士 「だからぁ~俺の名前はぁビリビリマンじゃなくて・・・」
零士のツッコミを遮り博士に質問するハネト
ハネト 「博士ぇ~! 思いっきりやっていいかぁ?」
ハネトの言葉を疑う博士
Dr寺西 「ほぉ~。最初の一撃・・・すべてではない・
と・言うことですか?」
ハネトが答える
ハネト 「マイクロマシンってヤツも さっきより強力なんだろ?」
笑ってしまう博士 上から目線の物言いをする
Dr寺西 「クックっクックっ・・いいでしょうハネト君!
勝負してみますか?」
「私の開発した 第六世代マイクロマシンとの勝負を!!」
「衝撃波どころか地上の草木一本揺らすことすらさせませんけどね!!」
ほくそ笑むハネト
ハネト 「まぁ とりあえず やってみますかぁ」
ハネトを応援するため 翔子が七色の魔法陣を作り出す
翔子 「ハネト・・これを使え!・・助けてくれた・・お礼だ・・」
ハネト 「いいのかよ? 翔子!」
翔子 「遠慮するな・・今度・作り方を・・教えてやるぞ・・」
光り輝く魔法陣 中心に立ち両手でエネルギーの塊りを練り上げる
ハネト 「ありがとな翔子 テンション上がってきたぜ!!」
直径2m程のエネルギーの塊りを練り上げ凝縮していくハネト
教室内 博士のモニター
Dr寺西 「先ほどの三倍ほどの大きさですか・・・
それだけでも大したものですが・・・
凝縮・圧縮・先ほどのスペクトル解析では水素からヘリウムへの
核融合反応・・どれだけの圧力を・・・」
圧縮を高めるハネト。エネルギーの塊りが青色から白く変っていく
青ざめる博士 立ち上がり後ずさりする
Dr寺西 「ばっばっ・バカなぁ!!!物質が変わっていくぅ~
重水素・三重水素・ヘリウム3・・・
超高熱も強い磁界も発生していないこの現状を・・・
圧力!!・圧力だけで作り出しているのですかぁ~!!!!!」
急いでカブに指示を出す博士
Dr寺西 「カブ君!! マイクロマシンレベルをフェイズ5自己増殖を最優先に
防御 遮熱 中和 全ての形状を円すい状に変化!!
面ではなく点で受け止めるのです」
こんなものぉ~まともに食らったらぁ日本の地図が変わってしまうぅ」
指示通りにプログラムを組むカブ 大型モニターが
マイクロマシンの形状の変化を映し出す
太陽光の乱反射でマイクロマシンがキラキラ輝いている
固唾を飲む零士 パワーコードを鳴らして電気を充電
自分の周りに磁力線を作る
零士 「翔子・・・俺の後ろに隠れてろ・・・
あれは・・・ヤバいヤツだ・・・」
零士の真剣な表情に何かを感じた翔子
コクリとうなずき零士の背中に身を隠す
出来上がったエネルギーの塊りを右手に移し敵の母船に
照準を合わせるハネト
ハネト 「大丈夫・・地球に迷惑はかけないぜ!!」
集中するハネト 視界の中に富士山が映り込む
最初の一撃を思い出し照れ笑いする
大きく深呼吸 富士山に向かって叫びエネルギーの塊りを発射する
ハネト 「ふじさぁ~ん!! さっきはゴメんなさぁ~~いぃぃ!!!」
唸りをあげて突き進むエネルギーの塊り。敵の母船に命中貫通してハネトが叫ぶ
ハネト 「弾けろぉぉぉ~~!!!!!」
突如現れたもう一つの太陽 熱線が敵の母船を溶かし融解爆発させる
次々と崩壊していくマイクロマシンがチリとなりキラキラと舞っている
衝撃波が発生しチリとなったマイクロマシンを吹き飛ばす
自己増殖を続ける
マイクロマシンはガンマ線を中和しながらプログラムされた通りに
宇宙空間に巻き上げられ太陽に向かい焼却されていく
弱められた衝撃波は少しだけ強い風になり周りの木々を揺らし
やがて弱い風になり
三人の頬をくすぐった
二人に目をやるハネト 笑っている
ハネト 「大丈夫かぁ~二人ともぉ~」
極度の緊張から解放され震えながら両ひざをつく零士
零士 「おっかねぇ~なぁ~あの野郎ぉ~・・・ビビっちまったぜ・・・」
目を輝かせながらハネトに好意の視線を向ける翔子 感動が止まらない
両手を上げて駆け寄っていく
翔子 「ハネトぉ~!! 凄いぃ凄いぃ凄いぃ~!!カッコいいぃ~
カッコいいぃ~カッコよかったよぉ~!!
ハネトがこんなに凄い力を持ってるなんて思ってなかったから
ビックリしたよぉ~! 感動したよぉ~!」
翔子の言葉に照れるハネト
ハネト 「しょっ・翔子もすごかったぜ!・・カッコよかったぜ!」
「死亡フラグの使い方とかなぁ!」
顔を赤くしながら少しふて腐れる翔子
翔子 「もおぅ~・・ハネトってイジワルなのね・・・
ちょっとだけ・・・」
零士の所へ近づくハネト 手を差し伸べる
ハネト 「大丈夫かぁ~ビリビリマン!!」
右手を差し出し起こしてもらう零士
零士 「だからぁ~俺の名前はビリビリマン・・じゃなくて・・
零士の言葉を遮り言葉をかけるハネト。
ハネト 「これからもよろしくなぁ・・・零士!」
苦笑いしながら呆れる零士。
零士 「はぁ~あぁ・・ハネトってさぁイジワルだよなぁ・・
ちょっとだけ・・」
三人の足どり ゆっくりと学校へ向かう
視聴覚室(ちきゅうぼうえい軍)教室内 響がみんなの労をねぎらう
響 「みんなぁ お疲れ様ぁ~! 今日はなんでも作ってあげるわよぉ~」
料理の得意な響の言葉に教室内が盛り上がる
椅子に腰かけ 天井を見つめる博士
Dr寺西 「この星の絶対者・・・弱い核力・・ベータ崩壊を自在に
操る君が・・・・善人で有ることを・・・願いますよ・・・」
「果たして・・君は・・・何と繋がっているのですかねぇ?」
ハネトを囲み雑談の中 学校へ向かう三人
零士 「三日前に来たのか?・・この学校」
ハネト 「おぅ 博士に誘われてなぁ」「それから響に教わったんだよ・・色々となぁ」
零士 「おぃおぃ 響先輩を呼び捨てかぁ~?」
翔子 「響ちゃんはねぇ 料理が得意なんだよぉ~」
零士 「男勝りのくせして無駄に女子力高いんだよなぁ~」
翔子 「料理だけじゃないよ
掃除も・洗濯も・裁縫だって得意なんだよぉ~」
ハネト 「確かに! あの飯は絶品だなぁ」
「それからコレなぁ! 一日で仕立ててくれたぜ」
ハーフコートの背中を親指で指さし 少し自慢げに笑うハネト
魔法陣に逆十字架が突き刺さる 大きな刺繍が施されてる
零士 「すっげぇ さすが響先輩・・・完成度たけぇ~なぁ・・・」
ハネトの背中に回り込む翔子 何があるのか興味深々
翔子 「なになにぃ? 何が書いて・・ある・・・の・・」
さっきまではしゃいでいた翔子のようすがおかしい
ハネト 「いいだろぉ~翔子! お前こういうの好きだろぉ?」
好意を向けていたハネトの背中に信じられない言葉が刻まれていた
翔子 「・ダーク・ウィザード・ナンバー・・24
魔法陣を打ち砕く逆さの十字架・・・
ハネトは・闇の・・魔導士・・・24番目の・・闇の魔導師・・・」
涙を浮かべ怒りに満ちた目をハネトに向ける翔子
ハネト 「どうしたぁ 翔子? おっかない顔して?」
一歩踏み出し左手を振り上げる翔子 思い切りハネトの頬を叩く
翔子 「このぉ裏切り者ぉ~~!!」
張り倒されるハネト 右頬を抑えながら立ち上がる
ハネト 「なにすんだよぉ いきなりぃぃ!!」
呆然とする零士
翔子 「騙してたぁ 私を騙してたのねぇ!!!」
「闇のものに 手を貸した天使は 堕天使になってしまうのよぉ!!!」
呆然としていた零士 自分にはチンプンカンプンの話につぶやいてしまう
零士 「へっ? そうなの?・・・」
泣きじゃくりながら話し続ける翔子
翔子 「うれしかった うれしかったんだよ! 新しい仲間が出来て!!」
「ビリビリマンは 凄くて・強くて・でも・・ビリビリしか言わない・・
カッコ悪いヤツで・・私とはちょっと・・違うのかなって・・思ってて・・
私は・・私はぁ・人と話すのが・・・苦手で・・人に接するのが・・・
苦手で・・
周りの人たちとは・・なにか・違うのかなって・・思ってて・・・
そうしたらねぇ・・そうしたら・・ハネトが・・やって来たんだよ・・・
ハネトは・・ハネトは・私の魔法陣を凄いって・・言ってくれて・・
カッコいいって・・言ってくれて・・綺麗だって・・褒めてくれて・・
初めて・・私と・同じなのかなって・・・思ってて・・・
ちょっとイジワルだけど・・私を守ってくれて・・私を助けてくれて・・」
「うれしかった・・うれしかったよ・・うれしかったのに・・・」
大声を上げて泣いている翔子 ふて腐れながらも謝るハネト
ハネト 「悪かったよ・翔子・・別にだますつもりは・・・」
少し泣き止みハネトに提案する翔子
翔子 「転職! 転職してよ ハネト!!」
いきなりの提案に驚くハネト
ハネト 「転職ぅ~? 出来るわけないだろぉ~!
俺だって契約があるからそんなの出来ねえぇ~よぉ!!!」
食い下がる翔子
翔子 「ハネトは 私が堕天使になってもいいって言うの?!!」
言い返すハネト ちょっとキレる
ハネト 「堕天使? いいじゃないかぁ
闇属性で俺と一緒に頑張って行こうぜ!!」
負けじと食い下がる翔子
翔子 「なんでそんなイジワル言うのぉ 私をだましておいて!!!」
バカにするように言い返すハネト。
ハネト 「騙したぁ騙したぁ~言ってるけど
確認しない誰かさんが悪いんですぅ~」
言い返せなくなる翔子 悔し涙を流す
翔子 「ううぅぅ~~・・・・!」「ハネトの・・バカぁ~~~!!!!」
両手でハネトを突き飛ばす翔子 何か吹っ切れる
翔子 「ハネト・・あなたを・・・浄化する・・・・・」
左手に 白い魔法陣を 作り出した翔子
白い魔法陣におののくハネト。
ハネト 「・・な・ん・な・んだよ・・・それ・!!」
左手を天にかざしハネトの目を見る翔子 目が据わっている
翔子 「闇の力を・・浄化する・・・もの・・」
身構えるハネト 両手にエネルギーを貯めている
ハネト 「上等だ・・・やってみろ!!」
一触即発・・・固唾を飲む零士
教室内 緊張が走る
呆れた顔で零士に指示を出す響
響 「零士 ビリビリさせちゃって・・・」
響の指示にニヤリと笑い 二人に電気ショックを放つ零士
零士 「ハイ・ケンカ終了・・!」
その場に倒れこむ二人 零士のレシーバーに響の声
響 「首根っこつかんで 引きずって来なさぁ~い!」
背負っていたギターを前に抱え二人を引きずりながら学校へ向かう零士
電気ショックで動けない二人 引きずられながらお互いの
悪口を言い合ってる
翔子 「・・ハネト・・必ず・貴様を・・・」
ハネト 「・・翔子・・必ず・おまえを・・・」
歩みを進める零士 ギターとベルトのバックルの間に違和感を感じる
零士 「なんだぁ? さっきからガリガリと・・・」
二人を放し ギターの背面を確認する零士
零士 「あぁぁぁぁぁ~~!!! なんじゃコリゃぁぁぁぁぁ~!!!!!」
歩くたびにバックルで傷つけられていたギター 零士青ざめる
零士 「・・・マズイぃぃぃ・・・・・殺されるぅぅぅ~~・・・・・」
Dr寺西 「れいじぃぃぃぃぃ・・お前をぉぉぉ・・・
殺すぅぅぅぅぅ・・・・・!!!」
富士山にコダマする 博士の怒りの叫び
忍先生 「エリカぁ~ 大至急ぅ いつものじゃぁ~!!!」
卍固めを博士にかける忍先生 大きな目を輝かせながら
楽しそうに笑うエリカ
エリカ「ふんふん!!」
つづく
科学の子 @amaguriko
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