第5話 再会まで

季節が夏になり暑く感じるようになった。

住処の近くに滝があり、日課として寝起きにそこで水浴びをするのが気持ちいい。


この世界での夏は厳しくなく、30℃を超えることはまずない。

その代わり、地域によっては冬が異常に厳しい。寒すぎて動植物が全くいない地域もあるくらいである。

そして四季もある。


食事を終え、血だらけの身体を洗いに滝に向かってるとき思う。

鳴き声(人語の会話)で意思疎通が出来る魔物がいるのだな……

食ったら何か変わるか?

いや不味そう……

いっそのこと食ってみていいか聞くか?

と人がいれば物騒なことを考える。


ふむ、とりあえずは奴らがいた付近をたまに見てみるか?

もしくは森を出てみるか?

奴らの住処も含めて、会って聞いてみるかと結論づけて身体を洗う。


それからというものは生活のルーティンに起床→水浴び→奴ら調査→狩り→食事→水浴び→惰眠の繰り返しとなった。


なかなか会わないな

さては奴らどっかで死んだか?

まー気長に続けるかと考えながら歩いてると、タイラントボア発見。

垂れるヨダレを気にせず魔法を練り上げる

今回は半分じゃなく一頭丸々と食べれる言っていいだろう。


その日の晩餐は他には見せれないくらいお腹が膨れた。


数週間たち

日課をこなしてると、群れの気配を感じる。

この神域の森で群れで活動する魔物は非常に少ない。いても身が少ない奴らで食べる気も起きない。邪魔なら始末するまで。


見てみるか…

自身が最強を疑わない我は自由奔放なのであるとほくそ笑みながら森を駆ける。


近くまで来ると

その群れは謎の警戒態勢だ。

うん?近くにあやつら以外の魔物の気配はないぞ?

なにを警戒しているのだ?


しばらく様子を見ても一向に変わらない………

どうでもいいかと考えるのをやめ、さらに群れに近づく。


近づくにつれて、警戒が強くなる。

でも周りに魔物はいない。

変だなと考えつつ、話しかけるのはこちらが先かと細かいことが気になり始める。

なにせ会話自体、前回が初めてなのだ。コミュケーション能力は皆無と言っていいだろう。

だからと言って、恥ずかしいわけでもない。気に食わなければ始末すればいいのだ。

結局は強さが全て。

相手からすると、ある意味で処刑が迫っていることになる。


冒険者side

冒険者ギルドにて1枚の依頼書が領主名義で貼り出された。

領主名義とは言え、冒険者ギルドが領主名義を借りた形で依頼を出したにすぎない。

内容は神域の森の調査依頼である。

ギルドマスターも追従し、補給部隊にはB級パーティ2組むけの依頼もある。

実際に森に入っての調査はA級パーティ以上限定の2組以上。

報酬は大金貨5枚、補給部隊2組には金貨50枚となり期間は3日。

ギルドおよび領主からすると合計大金貨10枚金貨100枚以上かかる大盤振る舞いである。


ここで

貨幣制度を軽く触れておく。

鉄貨100枚で銅貨1枚=100円

銅貨10枚で銀貨1枚=1000円

銀貨10枚で金貨1枚=1万円

金貨100枚で大金貨1枚=100万円

大金貨100枚で白金貨1枚=1億円となる。


なので3日で探索依頼が500万円

補給部隊が50万円となる。


依頼を貼り出してすぐにゴンザのパーティは申し込む。

彼らは態度は少し悪いが実力のあるA級パーティなのだ。人数は6人とやや多い。

そして補給部隊の申し込みは報酬がいいこともありすぐに集まる。

もはや申し込めなかったパーティが悔しそうな目で見るくらいだ。


だが、もう1組のA級パーティ以上が決まらない。

ゴンザのパーティを含めたA級3組のうち1組は慎重派かつ風の足跡の様子を直に見たパーティ。

もう1組はすでに護衛依頼にて街を留守にしている。


残すところ、S級のカイル達の風の足跡しかいないのである。

カイル達はあれから、たまに活動はしてるみたいだが以前に比べると頻度が明らかに減った。

マスターは心が折れたのかと不安にもなったが、その様子もない。


頼むしかないかとマスターは顎髭をかく。


風の足跡ギルドハウス

ギルドハウスではあるがギルドメンバーが少ないため比較的小さい建物ではある。

しかし、訓練場を兼ねた庭はかなりの広さがある。

住んでるのはパーティメンバー4人

1人は奇病にて寝たきり。

それと雑事を任せられている執事が1人の計5人。

料理番も1人雇っているが住んではいない。


そこで魔法使いのナディアは

執事にまとめられた収支報告書に目を通していた。

カイルとタジキは模擬戦をしたり、身体を鍛えたりしている。


ナディア

「森に潜るための物資も考えると贅沢は出来なくなって来てる……

もう一度あの魔物にあった場合を考えると大損もあり得る…

だからと言って勝てる算段もないわね」


まったくまとまらない考えに1人でため息を吐き続けている。

執事はそんな彼女に暖かい紅茶を出すのにとどまる。


「せめて、あの牙と角が売れてくれれば…」


そうタイラントボアの素材は世にほとんど出回ったことがないこともあり年を越した月の半ばでオークションにかけられることが決定してる。

おそらくは白金貨が動く可能性もある。


そのため維持費として払うのも問題ないとなり、ギルマスから金庫屋に預け先を変えたのである。

オークションまでの3ヶ月半の費用として金貨20枚/月かかるため70枚の出費である。


S級パーティであったため、そこそこの貯蓄もありなんとかなってはいるが

苦しいことに変わりはない。


「依頼受けつつ素材売らないとね…」と

ナディアは冷たくなった紅茶を飲み干す。

ちなみにナディアは超がつく猫舌である。


ちょうどカイルとタジキが訓練後のシャワーを終え、リビングにきたと同時にギルドハウスの扉が勢いよく開かれた。


カイル含む3人は即座に戦闘態勢

ナディア以外は近くに武器がないが、それでもと態勢をとる。


「誰だ!!??」

「敵かっ!!!!」

「プロテクト!」とナディアが半径3メートルに即座に結界を張る。


そこにいたのはギルマスであった。




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動物や生物と魔物の違いは魔力があるかないかと思って頂ければ。

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