EX 風呂と紙 2

 スーパー銭湯にサウナがある。当たり前の話だが入ったら熱かった。暑いというより熱いんだよ。

 サウナには俺と草加が生まれたままの姿になっている。お互い身体にびっくりするくらい古傷がある。サウナで苦痛を味わっていると、新たに入ろうとして来た客が、俺たちの雰囲気に圧されて帰っていく。流石に邪魔か。サウナを出よう。

 ギリシャの彫刻みたいな筋肉の付き方の男二人がサウナから出る。草加だけでなく俺も自然と引き締まった身体だった。毎日素振り一時間くらいしかしてないんだが。


「水風呂?」


 ヒートショックが怖いなと思いながら、草加に尋ねる。文脈があるから一単語で通じるだろ。


「いや、掛け湯やシャワーを浴び徐々に身体を適応させるべきだ。ヒートショックで死んではつまらん」

「それもそうか」


 草加とは時間怪盗を叩きのめすために共同戦線を張る関係である。その関係で敬語とタメ口の混じった口調になる。いまいち距離感をどうするか迷いがある。草加には社会的立場があるが、俺はかなり不確かファジーな立場だしな。

 掛け湯をし、その後水風呂にサッと入ってスーパー銭湯を後にした。


 仕事上関係がある程度の男二人が揃って出掛ける理由、それは親しい女性陣に贈るクリスマスプレゼントの見当をつけるためだ。

 草加とは時間怪盗をしばく活動の他に、俺が勤めている探偵事務所の所長である破嵐初姫ハラン・ウイヒメとなんか関係がある。草加の祖父とウイヒメの伯父が勝手に進めたお見合いでプライベートでも関係が発生した。

 ウイヒメ曰く、まじまじと眺めれば草加の顔立ちは整っているし話していてつまらなくないので、とりあえず保留らしい。ウイヒメはまだ十四歳なので、結婚が可能な年齢じゃないからな。

 そして、俺はウイヒメの従姉いとこである破嵐理子ハラン・リコからクリスマスプレゼントを買ってくるように命令を受けている。ブラックカード渡されそうになった。距離感が近過ぎる。ブラックカード渡されたら、『トランスフォーマー2010』の「星間帝王ユニクロン2010エディション 」とかいうデカい玩具買ってしまう。

 というか他人に渡すプレゼントは自費じゃないとダメだろ。カード渡されてそれで買ったら買い物代行になってしまう。

 というわけで家電量販店に来た。草加は渡すもの決まっているらしいので迷わず玩具コーナーまで上がる。TCGカードならもっと小さい店でもいいと思うが、俺の方との兼ね合いもある。そして『トランスフォーマー』類の玩具売り場を見るとやっぱりユニクロン売っているじゃん。箱がデカすぎる。いやなんでまだ在庫あるんだ。大人のオタクしか買わないし、こういうところだとすぐ売り切れるはずなんだが。


「無難にカートン買いするといいんじゃないか。スリーブは好み知らんと選べないだろ」


 透明なスリーブの上に被せるキャラクターの絵が書いてあるスリーブは他人にプレゼントするものとして難易度が高い。リコは『ゼーガペイン』だとシズノ先輩とか好きだったな。スリーブあったら買うか。いやしかしリコはTCGカードみたいな細かいこと得意じゃないか。


「けっこうするものだな」


 一パック百五十円で三十パック入りだからまあだいたい五千円。紙の者は買えるだけ買うから値段とか気にしないんだよな。


「使わないカードを単品で売れば、ものによりますけどタダ同然になることもあるっすよ」

「価値観だな」

「価値観っすわ」


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