第3話 Dear MAM

「…」

「灰落ちるよ、それ、あたしあげたパンツじゃない?」

「え?あぁ…ごめん。」


慌てて灰皿で煙草の火を消した。



夏の夕方、店の外でぼーっとしてた。


この日は昼過ぎから頭が痛くて少し外に出てきた。



「…チッ。」


ルイがタバコケースから出したライターの火が全く付かない。


「ルイ。」

ルイに火をライターを渡した。

「ありがとう。」

「…珍しいな。ママが舌打ちなんて。」

「新鮮?」


キャンプ椅子で足を組んで煙草を吸うイケてるmom


「使いたい時に使えないって腹立つよね。」

「…これ、オイル切れた事ないし、石も切らした事ない。」

「見して。」

「うん。」


「あんたこれまだ使ってんの?」

「宝物なんでね。」

「…。」

「愛しいか?」

「そりゃね。」


ZIPPOの柄を愛しそうに親指で撫でるルイの顎を上げて口付けた。


「ルイ、一生傍にいろ。忘れたら困るから何回でも言ってやるから。」

「…あんたの方でしょ?あたしが居ないとやってけないのは。」

「…一生俺のママでいて。」

「そのつもりよ。」



このzippoは僕が17歳の時、かなりメンタルが荒れてた時にルイがくれたオーダーメイドのもの。


どこにいてもルイを感じられるようにと、

牡丹の模様と、龍と『Lui』の文字が入ってる。




「なにイチャついてんの。」


結月が外に来た。


「殺伐とした親子見たいか?今にも刺し違えるような。」

「天変地異が起きても二人にそれは無いわ。」

「無いって。」

「でも基本、あんたがルイさん好きなんでしょ。」

「そうだよ?でも…なんだろな。」


「ん?」

ルイが僕を見る。


「たまに夢で見んだよね。」

「…」

ルイはずっと僕を見ている。


「ルイにめちゃくちゃキレられる夢。『そんな言うこと聞かない子はママの子じゃない!もうお前なんか要らない!』ってバンッてあのアパートのドアを閉めてルイが荷物持って知らない男と出て行くっていう悪夢ね。」


「…。」

ルイは立ち上がって僕を包み込んだ。


「ごめん、それ私。」

「未だに夢に見る。」

「男は涼太が付け加えたものだけど、一回本当に言う事聞かなくてそれした事ある。でも、『ルイごめんなさい』って泣き叫ぶあんたの声聴きながらドアの外であたしも泣いてた。」

「俺、言う事聞かなかったの?」

「こだわりが強くてさ。困り果てちゃって。」

「いつから俺の扱い楽になったの?」

「その時だと思うな。あんたには私しか居ないんだって。だとしたらあんたが生きやすいようにする為に周りと比べるのやめようって。私が大事なのは周りの目じゃなくてあんただって改めて思ったから。でも怖かったよね。ごめん。」


「いいよ。大丈夫。俺こそごめん。」

「……」


ルイは僕を包み込んで頭を撫でた。





――――――――――――その日の夜中。


結月が寝た後、目が覚めて久しぶりにアルバムを見ていた。

そこには若き日のルイと幼い僕が沢山居た。

どれもこれも笑っていた。



その中で4歳の誕生日の時の写真もあった。


顔中クリームだらけにしてる僕とそれを見て笑うルイ




僕はその写真をスマホで撮って、


「育ててくれてありがとう。僕はこの日と同じように日々、ママと過ごせて幸せです。愛してるよ。」


と送った。



翌朝、

『怖い思いさせてごめんね。あたしも愛してる』返ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

うちの姫が愛しすぎて 海星 @Kaisei123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る