第24話 孤立と作戦
◇作戦会議◇
土田からの精神的攻撃を受けた翌日、俺は土田と作戦会議をするために、朝からリビングで土田を待っていた。
だが、土田が一向に起きてくる気配がない。
自分から提示しておきながら寝坊とは、案外抜けてるところもあるんだな、なんて思っていると玄関から鍵が空いた音が聞こえてきた。
誰か来たのだろうかと思い、玄関を確認すると、そこには土田の姿があった。
まさか寝坊ではなく、朝まで仕事だったとは…。
流石土田、抜け目がないな…。
そんな事を思っていると、土田から、
「そんな顔してどうしたんだい?もしかして、私に早く会いたくて玄関で待っていたのかな?」
と、いつも通りのからかいが飛んできた。
「会いたくもねえし、待ってもねえわ!」
いつも通りのからかいなのに、いつもと変わらず強めに反論してしまう俺。
成長を感じてなさすぎて悲しくなってきた。
まあそんなことより、早く本題を出さないとな。
「それで土田。仕事終わりで申し訳ないんだが約束通り話してくれ、俺の仕事について」
それを聞いた土田は不敵な笑みを浮かる。
「そんなに説明するほどのことはないよ。君には海城組が来田から、どれぐらいの資金を貰い、どれぐらいの悪事を働いているのか。それを調べてきてくれれば任務完了(ミッションコンプリート)だ。そこら辺の情報は、海城組の倉庫を確認すれば見つけられると思うよ」
なるほど。
確かに俺の面談の時に、濱島団の団員が『資金数を負けるわけにはいかない』とかいう独り言を呟いていたし、その情報は来田捜索を行う上で重要かもしれないな。
だが…、
俺は1つ頭に浮かんだ疑問を、土田に聞いた。
「海城組の倉庫って、それこそセキュリティが固くないか?どうやって倉庫まで潜入するんだ?」
すると土田は、
「そんなの簡単なことだよ。君が海城組組長の"田嶋魁哉"と、深い関係を築き、信頼を得るんだ。そうすれば奴らに隙は生まれるよ」
難しすぎることをあたかも簡単なことのように言う土田。
流石に不安になってきたな。
でもそれなら、
「海城組の幹部に変装すれば楽なんじゃ…」
俺の呟きに、土田は即座に反応してきた。
「確かにその案は悪くないように聞こえるかもしれない。でも、海城組に至っては違うんだ」
「違う?」
俺の情けない声を聞き、土田はさらに付け足すように説明する。
「君も知ってるでしょ。海城組は全国規模で頭角を現すヤクザ、だから当然田嶋魁哉も警戒心が強いんだよ。
アイツは誰も信頼していない。幹部も、No.2でさえも」
なるほどな。
そりゃあ疑心暗鬼にもなるわな。
言っちゃあ宝くじで1等が当たったその瞬間から、周りの視線が怖くなるあれと同じ原理なわけだ。
だが…、
「それって、俺が信頼勝ち取るの滅茶苦茶難しくね?」
俺の問いに対して、土田はまたも不敵な笑みを見せてきた。
まさかこれは、何か名案があるのか!
そう期待していると、土田は、
「そんなの気合だよ。ファイト!」
と言ってきた。
なんなんだこいつ、正直不安しかねえよ。
そんな事を思っているが、作戦決行は3日後に迫っているらしい。
まじでやりたくないが、やるしかない。
俺は不安な気持ちを押し殺して、1日をスタートさせる朝食のトーストへ手を伸ばした。
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