第23話 不安と強気
◇不安と強気◇
"海城組"、国内では史上最強レベルの組。
主に、高利貸し(いわば闇金)や麻薬の密輸等を収入源とし、その規模を広めていったらしい。
明らかな犯罪を犯しているのにも関わらず、これまで警察に御用になったことは一度しかないらしい。
当然殺しもやっているんだとか。
そんな生きている内には、一度も関わりたくない組。
そんな危険な所に、俺は足を踏み入れようとしている。
「じゃあ作戦だけど、まずは君が…」
「ちょっと待て!」
当然のように話を進めようとする土田に、俺は待ったをかける。
「何?君は一生ニートのヒモ人生を歩みたいのかい?」
「そういうことじゃねえ!」
反射的に強く反論してしまった。
「じゃあ何?別に話を止める必要は無いと思うんだけど…」
「そういうことじゃねえ!」
土田のさも当然かのように話す素振りを見て、俺は2度目の強い反論が出た。
当たり前だ。
「俺は確かに来田を恨んでる。それは変わらない。だが、海城組に乗り込むのは違うだろ。あいつらの危険さは俺が十分わかっているつもりだしな。わざわざ成功率も低いようなことに手を染める必要は無いだろう」
俺は当然の反論をした。
一般人がスパイなんて成功するわけがないしな。
「それに俺は面会のときに田嶋に顔を見られてるんだ。ボスに顔が知られちゃ、スパイはできないだろ」
流れるように決まった俺の反論だったが、土田にとってはそよ風程度のものだったらしい。
直ぐに反論仕返してきた。
「私がいるからには君に失敗はさせないよ。それに、君も面会のときに来田の影武者の変装を見たでしょ。人っていうのは見た目、雰囲気で簡単に騙せてしまうんだよ」
「じゃあその簡単な任務をお前が一人で終わらせず、俺をわざわざ使う理由はなんだ?」
俺のカウンター反論が決まった!
なんて思ったのも束の間、直ぐにボディーブローが帰ってきた。
「だって君、このままじゃニートじゃん。社交性を失ったら、いよいよ終わりだよ」
「うっ」
ぐうの根もでねえ。
「まあそれは冗談として、私にも他の仕事があるから忙しいんだよ。これでも探偵だからね」
そう言い、土田は胸に手を当てて全力のドヤ顔を見せてきた。
うぜえ。
「理解してくれたかな?じゃあ早速3日後から潜入して貰うから、明日は作戦会議ってことで!私は仕事に行ってくるよ!」
「あっちょっ、待て!」
流れるように予定を決められ、流れるように置いていかれた。
土田のことは多少信頼しているが…
『流石に大丈夫じゃなくないか』
心の底からそう思った。
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