第22話 仕事と任務

   ◇仕事(にんむ)◇

 土田の家に居候を始めてから、1週間が経過した。

 俺は特にやることも無く、家事もほぼ土田がやってくれてしまっているので、なかなかに堕落した日々を送っている。

 しょうがないじゃないか。

 前に働いていた会社は知らない内に辞職したことになっていたし、新しい職場を探すにも、土田がハローワークに行くのを阻止してくるし。

 まじで土田は何がしたいんだ。

 俺をヒモにしたいのか!

 そんな事を思っていたら、土田が話しかけてきた。


「どうしたんだい?そろそろ私のヒモになった実感が湧いてきたのかな?」


 …まじでヒモにする気だった。


「湧くわけ無いだろ!そろそろ本気で就活しようと思ってるわ!」


 激しく反論すると、土田は面白がってクスクス笑ってきた。

 まじで嫌な奴だなコイツ。


「まあまあ落ち着いてよ。せっかく君の新しい職場が見つかったんだからさ」


 …は?


「今何と?」


 気づいたら聞き返していた。

 今まで仕事をさせる気が無かった土田が、"新しい職場を見つけてきた"?どういうつもりだ?


「新しい職場、見つかったんだって。何?嬉しくないの?嬉しくないなら断っておくけど」


「やります!」


 反射的にそう勢いよく叫んだ。

 流石にヒモ状態からは脱却したいし、なおかつ土田にからかわれるのはめちゃくちゃ疲れる。

 四六時中一緒より、仕事をしている時間土田に会わないほうが精神的に楽だからな。

 すると、土田は満足そうに頷きながら、


「そうかそうか。それなら良かったよ」


と言った。

 満足そうな顔が怖いと感じたのは黙っておこう。


「ちなみに何の仕事なんだ?」


 俺がこれから働く仕事だしな。

 できる限り向いているものがいいんだが…。


 そんな事を考えていた時期が僕にもありました。


 土田が問いに答えた瞬間、南極にでもいると思うほど寒気がした。


「それはね…、君にはスパイとして海城組に潜入してもらおうと思うんだ」


「は?」


 気づいたら情けない声が出ていた。

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