第18話 真実と復讐

   ◇真実◇

 俺が知りたくない真実…。

 心当たりがないが、いったいどんな真実なのだろうか。

 少し不安な気持ちになり、体が震える。


「その真実はね…」


『まもなく加賀ノ山〜、加賀ノ山〜、お出口は左側です。』


 あと少しのところで目的地に着いてしまった。

 クソッ、タイミングが悪いな。

 こんなタイミングで来るなんて、漫画か何かかこの世界は!なんてツッコミを心の中でしていると、土田から


「降りないの?」


と言われてしまった。

 恥ずかしい。


   〜駅前の喫茶店〜

 俺たちは駅を降りた後、駅前の喫茶店で、中断されてしまった話を再開させることにした。

 まあ喫茶店と言っても、従業員は老人しかいないし、店も古びた内装、メニューも最近の若者が喜ぶ品なんてありゃしないけどな。


「さっきの話の続き、真実についてなんだけどね」


 土田がコーヒーを片手に話を切り出してきた。

 一度中断されたから、緊張感が薄れてしまった。

 だが、その俺の安心感や薄れた緊張感は、土田の一言で壊れ去ってしまった。


「君の両親は、もうこの世にはいないんだ。来田の手によってね」


 一瞬にして時が止まったような感覚がした。

 俺の大切な両親が、もう死んでいる?

 来田によって。

 なんで…信じたくない…。


「嘘だ、嘘だと言ってくれよ!」


「嘘じゃないよ、これが真実なんだよ」


 俺の希望を求めるような叫びも虚しく、土田は淡々と真実を述べていく。


「来田は自身の罪を君に被せようとしていた。ここまでは君も知っていると思うんだけど、君の知らないところで、来田は君を自白に追い込もうと、様々な手を打っていたんだ。君の両親殺害は、君のメンタルを破壊するために実行したんだ。まあこの真実は君の所に届かないように、私が細工したんだけどね。これが真実の全貌だよ」


 来田…来田正成…。

 またアイツが、俺の大切な人を奪ったのか。

 怜奈も、親父もお袋も、許せない。

 俺はアイツが許せない。

 来田が警察に捕まって死刑になる?

 それだけじゃ生ぬるい、俺が殺してやる!


「君の気持わわかる。だけど来田を殺しても、君が恨みを晴らしても、死んだ君のご家族は喜ぶのかい?君は最終的に、幸せになれるのかい?本当に復讐が君にとっての全てなのかい?」



 土田の言葉に、ふと俺は正気に戻った。

 土田が俺にかけてくれた言葉、いつもの土田とは違う温かさがあった。

 きっと俺は、"復讐をするべきではない"んだな。

 そう思ってしまうほどの温かさが、土田の言葉にはあった。


「土田、ありがとな」


 素直に礼を言うのはなんだか癪だが、土田に救われたのは事実だ。

 きちんと礼は言うべきだと思った。


「君が壊れなくてよかったよ、私も盟約者を失うわけにはいかないからね」


 土田はいつものように微笑み、俺にそう言ってきた。本当に自由な奴だなと心底思った。


 俺達は、2人で笑い合って、そのまま地元を後にした。

 おそらく俺の作り笑顔は醜いものだったとは思うが、何も言ってこない土田の優しさに、今は浸ることにしよう。


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