第3章 新生活編

第16話 盟約者会議

   ◇解放の立ち話◇

 俺は長かった警察署生活を今日卒業する。

 今、刑務所を出たら俺は、自由な人生を歩めるんだが、1つだけ悩みの種がある。

 それは、俺の出所の迎えに来た俺の盟約相手の女だ!


 無実の証明のために恋人になったが、どうしたもんか。

 そう思いながらも俺は、警察署の門をくぐった。

 すると直ぐに、悩みの種の女が話しかけてきた。


「やぁ、出所おめでとう。浮かない顔してどうしたんだい?」


「ああ、ありがとうな」


 悩みの種とはいえ、一応恩人だ。礼くらいは言わないとな。

 あわよくばそのまま礼だけ行って歩きさりたかったが、土田の圧がそれを許してくれない。

 そしてその圧をかけたまま、俺に疑問を投げかけてきた。


「そんなことよりさ、君は盟約のこと覚えてる?」


 やっぱりか、と思いながらも俺は、


「覚えてるよ。恋人関係のことだろ」


と返してやった。

 我ながら紳士だと思う(土田の圧が怖かったからというのは黙っておこう)。

 すると土田は、


「覚えててよかったよ。これで忘れてたら体中を蜂の巣にするところだったよ」


と、笑顔で言ってきた。

 覚えていて良かったと、心底思った。

 しかし裁判の時にも思ったが、土田には悪魔的要素があるのかもしれないな。


「まあこの盟約は継続でいいとして、」


 いや待て!

 当然のように継続しようとしてやがる。

 さすが悪魔だな!

 でも流石にこれは交渉した方がいいと思い、俺は、


「そのことなんだが、盟約の内容はやっぱり変えるべきじゃないか」


と、提案してみた。

 しかし土田は、


「絶対にやだよ」


と、ものすごい剣幕で言ってきた。

 それを見た瞬間背筋が凍った感触がしたため、俺は無言でそれに頷いた。


「ふふ、ありがとう。それよりさ、君はこれからどこへ向かうんの?自宅も少し帰りづらいでしょ」


 ああ、そうだった。

 新しい家を探さないとな。

 今の家は怜奈のトラウマが無限に出てきそうだし、引っ越しは必須だよな。

 そんなふうに悩んでいると、土田が、


「何なら同棲しちゃう?私達"カップル"だもんねえ」


なんて提案してきた。

 俺は反射的に


「しねえよ!」


と大声で反論した。

 土田は、


「つれないなあ」


なんて言ってきたが当然だ。

 俺は土田と"恋人"にはなったが、あくまで盟約上の関係だ。

 それ以上もそれ以下もない。

 しかし家か、


「まあひとまずは実家にでも帰ろうかな」


 俺は頭にパッと浮かんだこの案でいこうと考えた。

 しかしそれを聞いた瞬間土田が、


「実家はやめとかないた方がいいよ!何なら私が新しい家見繕うから!」


と、勢いよく言ってきた。

 ここまで土田が乱れるのも珍しい。

 何かあるんだろうか。

 そう思い俺は、思い切って土田に尋ねてみた。


「俺を実家に帰省させてはいけない理由があるのか?何かあるなら話してほしいんだが」


 すると土田は、明らかに気まずそうな表情を浮かべ、俺にこう言った。


「この真実は、今君は知らない方がいいのかもしれない。でもどうしても知りたいなら明日、私と一緒に帰省しよう」


と、言ってきた。

 何故土田もついてくるのかは分からないが、土田が言うことには何かしら意味がある。

 俺は、


「ああ、分かった。明日9時に駅に集合。それでいいな」


と、土田の提案を呑み待ち合わせをしてから、その場を後にした。


 後から"これってデートじゃね"って思ったが、気にしないことにした。


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