第13話 決戦当日

   ◇壇上決戦◇

 目が覚めたら、そこは黒ずんだ天井だった。

 もうここにいすぎて慣れきってしまったのこの雰囲気、そんな毎日とは今日でおさらばだ。

 何故なら今日は、裁判当日なのだから。


 しばらくして、俺は土田と最後の面会という名の作戦会議を行った。


「これだけの証拠があれば大丈夫だと思うけど、相手は警察、もしかすると既に来田の力で染まっているかもしれない。それだけは注意しないとね」


 土田が淡々と話してくれているが、正直俺は気が気じゃない。

 何たって俺は裁判初経験者だ。

 勿論体験しない方がいいのだが、今までそういう事が無かっただけに、妙に緊張してきた。

 そんな俺の様子を汲み取ったのか、土田は、


「大丈夫だよ、私がついてる。注意するとは言ったけど、負けるつもりは無いから」


なんて気の利いた言葉までかけてくれた。

 本当にできた女だな。


「まあ注意事項はそのくらいかな。あとは勝つだけ。いいね?」


「ああ、当然だ!」


 俺たちは再び透明な壁越しに手を合わせた。


 まるで昨日の誓いのように。


 そんな事を思っていると土田からまたからかわれてしまいそうだったから、これ以上考えるのはやめよう。

 そう思いながら俺たちは、再び持ち場へと戻った。




   ◇午前10時◇

 午前10時、遂に俺の裁判が始まる。

 議論は俺が"牧野怜奈殺人事件"の犯人か否か。

 力強く拳を握り、土田と頷き合って、それぞれの持ち場に立った。

 裁判官の言葉を火蓋に裁判が開始した。

 最初に検察官が主張を述べた。


「被告人は、妻の怜奈さんを自らの私情で残虐な殺害を行いました。よって被告人には懲役28年の禁固刑が妥当だと判断致しました」


 まったく、勝手なことを言いやがるな。


「弁護人、反論はありますか?」


 その声を聞いた瞬間、土田は力強くこう言い放った。


「異議あり!」


 ずいぶん力強く言い放ったものだから、部屋全体に声が響いてしまっている。


 だがこの大声が、俺たちの反撃の始まりの合図になった。

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