第六話 頼りになる人

翌日、今日はお昼12時からシフトが入っている。

朝、このスケジュールに合わせた、いつも通り遅めの朝食を済ませて、

アルバイト先に向かう。


「昨日の出来事は、夢だったのか???

それとも???」


仕事場に到着したところで、

待ち伏せしていた、いかついメンインブラック男に、いきなり声を掛けられた。


「君は、他の世界線から転移してきたね。」


男の濃い色のサングラスの奥から、空想の声が由希ゆきには聞こえた。

『お前は知りすぎた。生かしちゃおけねえ!』


「えっ!えっ!《怖い!怖い!殺される!》」


「担当は誰だ?★※⚫︎tyか?◉chか?」

男は由希ゆきに詰め寄って来た。


「えっ!えっ!えっ!《助けて、助けて、助けて!》」


「別に取って食おうってわけじゃないよ。

ライバル会社の動きを教えて欲しいだけ。

ほら、頭の中で思い出してくれたら、勝手に読み取っていくから。」


「えーーーーーーーー!《勝手にのぞかないで!》」

とっさに頭を手で隠してみる。


「、、、わ、私、これから、仕事なので、、、。」

役に立ちそうも無い言い訳とわかっていながら、

震える声を絞り出す由希ゆき


「じゃあ、また後で。」


去り際にもう一言、言い残して行った。

「俺は、あんたの味方だからな。」


あっさり、すんなり、引き下がられて、

腰が抜けるようにしゃがみ込む由希ゆき

最後の一言は、とても意味深なはずなのに、考えることができず、

それよりもなによりも、

どうやらこれらは夢では無い事が確定!と自覚。

頭の中はキャパオーバー。

訳がわからず、混乱して舞い上がる。


そこへ駆け込んでくる一ノいちのせ 光輔こうすけくん。

同じ店のアルバイトスタッフで、年齢は由希ゆきと同じだが、

仕事上は由希ゆきの後輩。

どちらかといえばイケメン、どちらかといえば器用で社交的。

女子の同僚には、好感度ランキング上位の男の子だ。


「大丈夫!?朋皐ともおかさん!さっきの人に何かされたの?」


「あっ大丈夫。ちょっと道を聞かれただけ。

ちょっと怖い人だったけど、、、」


咄嗟とっさ誤魔化ごまかそうとした由希ゆきだったが。


「いいや、ほんとは違う!本当のこと話すから聞いて!助けて!

《きっと誰も信じてくれないような話だけれど、光輔こうすけなら。》」


「えっ!、、、僕でいいの!?どうして僕!?」


光輔こうすけにしか話ができない。」


「コウ、スケ、なの!?《何で名前で呼ばれた!?》」

光輔こうすけくんは、ちょっと不可解な顔をした。


「うん、光輔こうすけなの。」


「わかった。じゃあ、今日の仕事上がりに話を聞くよ。」


「お願い。ありがとう。

《あー、やっぱ光輔こうすけは頼りになる。こんな話、他の誰にもできない。》」


「《だから、光輔こうすけ、好き!》」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る