第三話 詐欺師登場

ドライバーズシートで項垂うなだれていた由希ゆき

そこへ、コンコンっと、半分空いている窓ガラスをノックする男がいた。

「こんばんは、お話、お伺いしました。」

知らない男に、ちょっと身構える。


「なん、ですか!?」

まだ少し嗚咽おえつが残る由希ゆき

車の窓越しに話が始まった。


男「あなたの希望を受けて、検討しました結果、

あなたは当社のモニターに当選されました。」


由希「な!なんの詐欺ですか!?だまされませんよ。」


男「あなた、今日をやり直したいのではありませんか?」


由希「えっ!」


由希「《一瞬話に乗りそうになったぞ、いかんいかん。》

当てずっぽうにそんなこと言ってもダメですよ。」


男「あなた、今日の事故は自分のせいだと思っていませんか?」


由希「えっ!なぜ、そんな事言うの?」


男「当社のセンサーがあなたの心の声を捉えました。

このエリアの消費者のニーズを探っていたのです。」


由希「心の声なんてわかるわけないでしょ!」


男「心の声は、あなたの脳の活動を解析することで把握はあく可能です。」


由希「うそでしょ。そんなことできるはずない。」


男は人差し指を左右に振って、チッ、チッ、チッ、違います、の合図。


男「あなたの第一希望を教えてください。

1バン、親子の横断のために車を停車しない。」


由希「えっ!」


男「2バンメ、今日のドライブは始めから中止にする。」


由希「!」


男「3バンメ、昨日までに運転免許を取得しない。」


由希「!」


男「4バン、昨年、あなたの父親は交通事故に遭っていない。」


由希「ちょっと、どうして?どういうこと?」


男「では、説明させていただきます。」

「我が社は、●△◾️と言いまして、」


由希「えっ、なに?」


男「この地球の言語では表現できない音ですので悪しからず。

●△◾️、時空転移の総合サービス企業です。」


由希「えっ、地球では!?ってどう言うこと?時空転移!?」


男「はい、あなたはタイムリープを応用した

転移を体験していただくモニターとなりました。」


由希「あなたは宇宙人なの!?」


男「はい、地球外の者です。

正確に言えば、私は、9次元空間から来ましたので、

あなた方が知る、ビッグバンから発生した宇宙の宇宙人ではありませんが。

さらに言えば、自然発生した生命体ではなく、

超高度進化文明で人工的に作られた生命体です。」


由希「AIなの!?」


男「違います。

ここでのスムーズな営業活動をするために、

この地球の生命を模した有機体です。

細胞もDNAもタンパク質の分子構造も、

あなた方の科学レベルでは、見分けできない完全な人間です。」


由希「よくそんなデタラメが言えますね。」


男「これが事実なのです。まあ、私の事はさて置き。」


男「我が社は、パラレルワールドの研究を重ね、

ついに一般ユーザー向けのサービスを始めました。

私は、まだ転移が利用されていない、この次元での市場調査を行っています。

その一環として、この地球が選ばれ、今回あなたが選ばれたのです。

あなたの希望が現実となる世界へ行ってみませんか?」

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