第3話

休日。今日は彼女と映画を観に行って、外でご飯を食べて、そのまま俺の家で泊まる予定だ。

初めてのお泊まりにちょっと緊張もするけど、長い時間一緒に居られるのは嬉しい。

駅前で待ち合わせをして電車で映画館へ向かう予定だ。彼女が前から観たいと言っていた、今話題のミステリー映画。正直俺は興味なかったけど、彼女が興奮気味にあらすじを話すもんだから観たくなってきた。

身支度を済ませて戸締りをチェックして家を出る。鍵も良し。行ってきます。






「映画、めちゃくちゃ良かったよね!特に最後なんか、『そうだったのか!!』って騙されちゃったよ〜」

映画を観て、ショッピングして、ご飯を食べて、家へ帰っている途中だ。余程映画が良かったのか興奮気味に改めて映画の感想を述べている。

「わかったって。何回も聞いたよ。でも俺もミステリー系は普段観ないから新鮮で面白かった。」

「だってすっっっごく面白かったんだもん。一緒に観れて良かった。付き合ってくれてありがとう」

「楽しかったなら良かったよ。今度は俺が観たい映画一緒に観てもらうかな」

「グロとかなしだからね!私そういうの苦手だから!」

表情がコロコロ変わる彼女と一緒にいるのは本当に楽しい。


あっという間に家に着いた。鍵を開けて中に入る。

「ん?」‥まただ。今朝と何かが違う気がする。

「どうしたの?」彼女が気付いて声をかけてきた。

「いや、たまに家に帰ってくると出た時とはなんか違う様な気がするんだよな」

「なにそれ!ミステリー?」

「映画引きずりすぎだろ」

二人で同時に笑いだす。そんな会話で部屋の違和感もすぐに忘れ、今日のデート中の出来事を話しながらお互い荷物を置いたり部屋着に着替えたりした。しばらく二人くっ付いてテレビを見たり、スマホゲームで遊んだりしていた。

「シャワー先に使っていいよ」

そう言うと彼女は一瞬間を置いて、恥ずかしそうに頷いた。俺は内心ドキッとした。彼女も今夜のことを意識している。

「シャンプーとか色々好きに使っていいから。急に熱いお湯出てきたりすることあるから気を付けて」平然を装いながら風呂場の使い方を説明する。

「ありがとう。先に借りるね」

彼女がシャワーを浴びている。こっちまでドキドキしてきた。童貞ではないがやっぱり緊張する。彼女が出てきたら俺も入れ替わりでシャワーを浴びる。髪の毛を乾かして歯磨きしたら布団に入って‥

やべ、勃ってきちゃった。気を引き締めてその時まで冷静に冷静に‥。



*****



次の日の朝。隣を見ると乱れた髪の毛の彼女。無防備な寝顔。昨晩のことを思い出す。身体の相性も良くて最高だった。‥また勃ってきちゃったな。

気持ちよさそうに寝ている彼女を起こすのはかわいそうだし、今日はゆっくりお家デートをする予定だったからこのまま俺も二度寝しよう。そして起きたらまた‥




二度寝から目覚めると彼女が朝ご飯を作っていた。イタズラしてやろうと思ってこっそり近づいて後ろから抱きつくと、腕に触れた柔らかな感触にまた股間が反応する。下着を着けていない柔らかなものの先端にある小さな膨らみを指で転がしながら「おはよう」と声を掛けると、顔を赤らめながら「おはよう」と返ってきた。それが可愛くて、トリガーになるには充分だった。コンロの火を止め、朝ご飯を食べる前にキッチンで彼女の身体を堪能した。その後はシャワーを浴びてご飯を食べて、一緒にサブスクで映画を観たりしてあっという間に夜になっていた。

「そろそろ帰るね。2日間楽しかった。また明日会社で」

「おう、また明日」

彼女を外で見送る。明日からまた1週間頑張れそうだ。




会社で彼女と顔を合わすのがなんだか照れくさい。

休日の出来事を思い出して浮かれていたら、作成した書類にミスがあったようで部長に呼び出され注意されてしまった。心配した先輩が手伝ってくれ、なんとか無事に提出出来た。

「先輩、迷惑かけてすみません。」

先輩が手伝ってくれたおかげでスムーズに訂正できた。お詫びに缶コーヒーを差し出した。

「わざわざ良いのに。それよりミスなんて珍しいな。最近、悩んでる事とかないのか?」

「その逆なんですよ。良いことがあってつい気持ちが浮ついてました。本当にすみません。」

「そうか‥。良いことなら安心したよ。もし悩んでる事でもあったらすぐ言えよ。相談に乗るからな」

先輩の浮かない表情が気になったものの、心から心配してくれてるんだと思い、改めて感謝を伝えた。


仕事が終わり帰宅した。今日も玄関を開けた時、正体の掴めない謎の違和感を覚えつつ部屋に入った。最近増えたこの違和感はなんだろう。気のせいかな‥

部屋着に着替えている時、ゴミ箱になんとなく目をやった。

「あれ?」ゴミ箱の中身が空だ。使用済みのコンドームやティッシュがたくさん入っていたので、彼女が片付けてくれたのかもしれない。今度家にまた来た時に感謝を伝えよう。


何を食べようか冷蔵庫の中を確認しているとまた母親から連絡がきた。

『仕事終わったかな?お疲れ様。仕事はどう?あなたは気が緩むと注意散漫になるから気を引き締めて。それと何かとハラスメントと言われる時代だから、特に女性には気をつけなきゃダメよ。セクハラなんて言われた大変だから』

今日会社でミスしたことを知っているかの様な内容で驚いた。心配性過ぎてスパイか探偵でも雇っているのではないかと訳の分からない思考が浮かんだ。

『大丈夫だよ。次の休みにご飯食べに帰るわ』

心配性の母親の為に、次の休日は実家でご飯を食べよう。彼女は友達と約束をしてると言っていたし、他にすることも無いのでちょうど良い。

『了解。ご飯用意して待ってるね』

母親からの返事を確認してから、晩ご飯の支度を始めた。

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