第23話 ボス攻略
シズカが使用した『サーチ』のスキルによってボスの特徴が分かった。
「皆聞いて! 奴は自動的に回復するっぽい。
このままだとじり貧で負けちゃうかも。
弱点は魔法攻撃と毒だって、何か対策とかない?」
「うーむ、テンプラーに攻撃魔法は無いでござるな」
「そして毒スキルですか。ローグのスキルにはありそうですが……」
「だよねー。シズネッチは攻撃魔法があるから良いとしても、あたしらのダメージが通らないんじゃ……無理かもね」
…………。
八方塞がりに思われたその時。
「あのー、皆さん。この前のクエストで聖女様から、毒の何とかってアイテム貰ってたよね、それじゃないかなー……?」
「おお! そうでござった。昨日の事ですっかり忘れていたでござる!」
そう、皆すっかり忘れていた。サブクエストなど適当に読み飛ばしているため、1日おくと記憶から抜けてしまうのだ。
シズネの場合は感情移入しすぎなところはあるがしっかりと覚えていた。
「これですね、『猛毒の短剣』対象を毒状態にする攻撃アイテム」
各々アイテムボックスから小さなナイフの様な物を取り出す。
「いやーすっかり忘れていたでござるな。前回のサブクエストで攻略アイテムを貰っていたのでござる」
「あーね、あたしも記憶から抜けてたよー、なんせあの時はシズネッチ号泣しちゃってたし? それどころじゃなかったっていうか?」
「もう、そっちを忘れてほしいのにー」
「いやいや、忘れる訳ないっしょ。シズネッチはピュアで良い子、一生の語り草ってね?」
【殺戮の天使・メレンゲは力を溜めている】
再び、振りかぶった斧が光り輝く。
「おっと、次の攻撃が来ますね。今度は僕が受け止めますから、その隙に毒攻撃をお願いします。……『フォートレス』!」
スキル『フォートレス』はその効果の高さから再使用時間は長い。
テンプラーが一人だけのパーティー編成の場合は、二発目の攻撃が発動した時点で一人は確実に殺されてしまう。
だが今は二人のテンプラーがいる。
【殺戮の天使・メレンゲは痛恨の一撃を放った】
ドゴンッ!
名前:ジェミニ=サガ・セイジ
職業:テンプラー
レベル:24
HP:344/556 【-212 クリティカルダメージ!】
「ぐっ! 敵の攻撃力があがっている! これは余り時間はかけれませんね」
「弟君もナイス! 愛の回復魔法あげちゃう! 『ヒール』!
……よーし、皆! 『猛毒の短剣』をやつにぶっさせー!」
前回のサブクエストで祈りの聖女から入手したアイテム。
攻略アイテムというのは本当だったようだ。
『ぐおおお! 体が回復しない! おのれ―! 貴様ら、何をしたぁああ!』
殺戮の天使・メレンゲはこのゲームで初のパーティー攻略推奨のボスキャラである為、その攻略方法にはいろいろとヒントがある。
特に自動回復に対しては、毒攻撃をすることで回復を止めることが出来る等、今後の大型ボスを倒す際の入門編的な位置づけである。
「お! セリフイベント発生。よーし、奴は回復しなくなったってことだね。全力全開でいくよー」
再びタコ殴りにするパーティー一行。
今度は少しずつだがHPバーが確実に減っていく。
「よーし、喰らえー! 『ブリザード』!」
やはり魔法攻撃が弱点のようだ。一気にHPバーが半分以下になる。
モンスターもサブクエストで進化できる種族はボス攻略に有利な魔法系になっている。
ちなみに、どの職業のサブクエストもボス攻略のヒントが隠されている。
『くっ! この私に魔法攻撃を……おのれー、汚らわしい魔術師協会の連中め……お前だけは許さん!』
【殺戮の天使・メレンゲは『断罪の投擲槍』を放った!】
次の瞬間、殺戮の天使・メレンゲから無数の槍の様な魔法がシズネに向けて放たれた。
どうやら魔法攻撃に対するカウンターがあるようだ。
ボスの弱点である魔法攻撃がメインのソーサラー対策なのだろう。
だが、シズネッチはモンスターなのでセリフのチグハグ感は否めない。
おそらく、モンスターが魔法を使うというのを脚本家が知らなかったのだろう。
無数の魔法の槍に貫かれるシズネ。
まるでハリネズミの様である。
一瞬動きを止められてしまったが、直ぐに魔法の槍は光と共に消え去った。
ボスの攻撃らしく派手なエフェクトである。
名前:シズネッチ
職業:モンスター
レベル:23
HP:42/406【-364 クリティカルダメージ!】
「痛ったー。死ぬかと思ったよー」
ちなみに、同レベル帯のソーサラーは一撃で死ぬダメージ量に設定されている。
「シズネッチ! 大丈夫? くそー、ヒールのリキャスト時間が増えて来てる。あと10秒……」
ヒールは連続で使う度にリキャスト時間が加算されていく、MPという概念がないこのゲームでは長期戦になればなるほど不利になる仕様である。
「シズカちゃん、私は大丈夫。サガ兄弟さんの回復に専念して、私にも回復スキルがあるから」
シズネは手の平を相手に向けると唱える。
「いくぞー! 『エナジードレイン』!」
殺戮の天使・メレンゲの身体から赤い光の玉が飛び出し、シズネの手の平に吸収されていく。
【魔法クリティカルヒットが発生しました! 『エナジードレイン』の効果によってシズネッチは596のHPが回復しました】
エナジードレインは自身のHPが少なければ少ないほどダメージが増加する。
瀕死状態で使えばクリティカルヒットが確実に発生するサキュバス最強の攻撃スキルである。
『ギエエエエー! 許さんぞ! 人間ども! …………だが、くれぐれも憶えておけ! 人類にはもう未来などないのだと。
……故に私が……救世主となって……導いてやろうとしたのに……ルシファー様こそが……我らの……ウボァ』
断末魔の叫びと共に、殺戮の天使・メレンゲの身体が崩れ落ちる。
そして死体は残らず光となり跡形もなく消え去った。
【おめでとうございます! クエストボス『殺戮の天使・メレンゲ』を討伐しました!】
「うーん、ボス討伐完了! 気分が良いねー。どう? シズネッチ面白くなってきたっしょ」
「そうだねー、だんだん自分も役に立ってるって実感湧いてきたよ!」
「拙者も同感でござる。もっと褒めてくれても良いでござるよ」
「うん。サガ兄弟さんも頑張ったよね、カッコよかったよ」
「ふっ、できればシズカちゃん殿にも褒めてほしいのですが、まだお怒りですかな?」
「調子に乗んなっての。……うん、でも今回ばかりは褒めるところしかなかったよ。やればできんじゃん!」
「やったでござる! 好感度が上がったでござる!」
「おいおい、兄さんギャルゲーじゃないんだから」
「あん? また何か変なこと言ったか? そうやって直ぐに調子に乗るんだから。
まったく、これだからオタクってやつは……ふふ」
「うふふ、でもシズカちゃんはずっと機嫌がいいよねー」
「ちょっと! シズネッチまで変なこと言って。またお仕置きされたいかー。 おりゃおりゃおりゃー」
「あはは、もうやめてってばー」
--------------------
あとがき。
ここで一旦一区切りです。
ここまで読んでいただきまして誠にありがとうございます。
さて、MMORPGとして一番の売りであるパーティー戦をメインに書いてきました。
私の好きだったゲームの要素を詰め込んだヘルゲートアヴァロン、皆さまはどう感じたでしょうか。
面白いと思って下さった方、続きが読みたいと思って下さる方。
どうか★★★レビュー、及び♡応援、フォローいただけると今後のモチベーションに繋がります。
ぜひともよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます