第22話 覚醒する兄弟
先ほどまで100体近くいたグールはあっという間に数を減らす。
戦うプリーストシズカと、サキュバスシズネのコンビネーションは抜群だった。
うち漏らした敵はサガ兄弟が一体一体確実に倒していく。
テンプラーも攻撃力は低いとはいえ聖騎士のスキル『ホーリーウエポン』の効果でアンデッドに対しては特攻ダメージがある。
「よーし! もう一回! 『ブリザード』!」
強力な範囲魔法『ブリザード』によってグールの集団は全滅した。
残るはボスキャラのみ。
メインクエストボス『殺戮の天使・メレンゲ』は仰々しく両手を広げる。
『フンッ、さすがはモグラの英雄といったところか、我と戦う資格はあるようだな。
よろしい、殺戮の天使としてお前達を断罪してやろう……ギロチンアクス!』
どこに持っていたのか、殺戮の天使・メレンゲは巨大な斧を両手に掴み大きく振りかぶる。
力を溜めているのか斧を高らかに掲げると刃の部分が怪しく光り輝く。
「来るでござる! 『ヘイト』!
セイジよ! ここは交代でタンカーをするでござる。まずは拙者のターン! 『フォートレス』!」
【ジェミニ=サガ・ソウジはスキル『フォートレス』を使用しました】
次の瞬間、ソウジの盾は黄金色に輝く。
テンプラーのスキル『フォートレス』は数秒間だけ防御力を大幅にあげるテンプラー専用の盾スキル。
発動条件は盾を装備していること。
ちなみに盾を起点にしたスキルが多いテンプラーが両手剣を装備するのはナンセンスであるが、あえて縛りプレイをする両手剣テンプラーが居るのも事実。
肯定的に言えばロマン装備だが、一般的なプレイヤー達からは地雷テンプラーと呼ばれる。
そう、サガ兄弟がパーティーも組まずに二人だけだった理由がそれである……。
だが、今は違う。理想的なタンカーとして覚醒したのだ。
鉄製の円形の盾、ラウンドシールドを構えるサガ・ソウジ。
スキル『フォートレス』の効果で今まさに彼は黄金色に輝いて見える。
「さあ、来いでござる! 黄金の鉄の塊である真のテンプラーの防御力、とくと見せてやるでござる!」
【殺戮の天使・メレンゲは痛恨の一撃を放った!】
ズドーン!
振り下ろされた巨大な斧とラウンドシールドがぶつかる。
名前:ジェミニ=サガ・ソウジ
職業:テンプラー
レベル:24
HP:394/556 【-162 クリティカルダメージ!】
「ふふふ、なかなか痛いでござるが耐えられないダメージではござらん!」
「ナ―イス! やればできんじゃん! 少し見直しちゃったかも? そんなアンタに感謝の『ヒール』!」
すぐさまシズカはソウジにヒールを掛ける。
再び、殺戮の天使・メレンゲはギロチンアクスと呼ばれる大きな斧を天高く持ち上げる。
【殺戮の天使・メレンゲは力を溜めている】
当然、敵のスキルにも再使用時間がある。
斧を構えたまま微動だにしない殺戮の天使・メレンゲ。
滑稽に見えるが序盤のボスなので攻撃パターンは単純である。
「よーし、今のうちにドンドン攻撃しちゃおう!」
次の攻撃が来る前に出来るだけダメージを稼ぎたい。
「了解でござる! いくでござるよ、パワーストライク!」
「ふっ、我が剣を喰らえ! パワーストライク!」
「よーし、やるぞー、おりゃー! ハイヒールキーック!」
「おらおらー、銀の弾丸を喰らえー!」
……。
…………。
人型の敵に対して集団でタコ殴りにする姿は、いじめに見えてビジュアル的にはよろしくないがボス戦とはこういうものだ。
ざくざくと敵のHPを削る。
一方的に殴り続ける一行。
剣で切り裂き、ハイヒールのとがった部分で蹴飛ばし。
至近距離から銃を連発でぶっ放す。
……だが、シズカは少し違和感を感じた。
その違和感の正体、一方的に攻撃をしているはずなのに、ボスのHPバーが1ミリも減っていないのだ。
正確には少し減っては、また元通りに戻っている。
つまりは常時回復をしているということだ。
「あれ? 敵のHP全然減ってないんですけど? どういうこと?」
シズカは攻撃を止めると少し考える。
「……そうだ! こういう時こそ……『サーチ』!」
プリーストとローグが使える『サーチ』のスキルは敵のステータスや弱点を知ることが出来る探知系スキル。
未知の敵を相手にするのに有効なスキルである。
【スキル『サーチ』が成功しました】
名前:殺戮の天使・メレンゲ
種族:人間
装備:防弾キャソック ギロチンアクス
スキル:痛恨の一撃 リジェネレーション ???
悪魔に魂を売った人間。
闇の儀式により、魂のストックを持っており、異常な回復能力をもっている。
魔法攻撃全般と毒攻撃が有効。
「なーるほど、こいつ人間だったんだ……。
どおりで銀の弾丸のダメージが低いと思ったよ。
それにしても……防弾キャソックって何? 宗教差別か? それとも運営になんか思うところがあるとか?」
実家が教会のシズカにとっては突っ込まざるを得ない設定であった。
「……まあ、確かにアクション映画に出てくる神父様は、銃撃戦とかしちゃいがちだからなー。しょうがないっちゃしょうがないかー」
そう、シズカとて自身のアバターの装備、シスター服のスカートから拳銃を取り出すアクションが気に入っているであまり他人のことは言えなかった。
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