第19話 リベンジ

「とりあえず、ステータスを確認しないと……ステータスオープン!」


 名前:シズネッチ

 職業:モンスター

 レベル:21

 種族:サキュバス

 HP:350

 力:150

 素早さ:178

 防御:90

 魔力:256

 スキル:『ウォークライ』 『エナジードレイン』 『誘惑』 『ブリザード』 『ヒールキック』 『かみつく』



「うーん、魔法使いっぽいのかな。スキルの詳細を見てみないと……」


 シズネはスキルヘルプを開く。


・『ウォークライ(ストックスキル:ゴブリンクイーン)』

 パーティーメンバーの攻撃力と素早さの向上。

 発動条件:味方に聞こえるように鼓舞する言葉を叫ぶ。


・『エナジードレイン』

 対象の精気を奪いダメージを与えると共に自分のHPに還元する。

 発動条件:敵一体を視界に捕らえ『エナジードレイン』と詠唱する。


・『誘惑』

 対象全てを魅了状態にし同士討ちを誘発する。

 発動条件:こちらを視認している敵に向けて任意のセクシーポーズをとる。


・『ブリザード』

 広範囲に冷気属性の魔法ダメージを与える。

 発動条件:両手を前方に構え『ブリザード』と詠唱する。


・『ハイヒールキック』

 格闘スキル。ハイヒールのつま先、踵にダメージ判定有り。


・『かみつく』

 モンスター固有スキル。捕食の際に使用。



「うーん、いくつかツッコミどころはあるけど、まあ魔法スキルが充実してるって感じかな? シズカちゃんはなんか思うことあるかなぁ……?」


 シズカはシズネのステータスウインドウをのぞき込む。


「どれどれ? ………ふむふむ、……なるほどなるほど。

 魔法特化って感じだね。同士討ちを狙いつつ魔法攻撃って何気に良い感じかも?

 ……でもさー、果たしてシズネッチにセクシーポーズができるかなー? ふへへへ」


「ちょっと、なにニヤニヤしてるの? ……こほん、私だってそれなりに出来るんですー!」


「ふーん、それは楽しみにしてるよ。

 ……さてと、んじゃ、メインクエストのリベンジといきますか!

 野郎共! 準備はいいか!」


「おうでござる! 今度こそはツーハンドソードの錆びにしてくれるでござる!」

「うむ、我が剣、ツーハンドソードに斬れぬものはない!」


 自慢の両手剣を高らかに掲げるサガ兄弟。


 だがシズカの顔は暗い……。


「…………おい、戦犯兄弟。お前等その剣、今すぐ売ってこい…………」


「シズカちゃん殿、急に何を……武人の魂を売れとは……死刑宣告と同じですよ?」


「馬鹿が! 売った金で、盾と片手武器を買ってこいって言ってんの!」


「ひっ言葉遣いが……。辛辣でござる……もしかしてあの日でござる――」


 パァンッ!

 ソウジが言いかけた瞬間、シズカの拳銃が火を噴く。


 もちろん街中では攻撃判定にならないためダメージは無いが、近くで使えば大きな音はする。

 無駄口を叩いている奴を黙らせるには充分である。


「あん? 今なんか言ったか? 殺すぞ!」


「いいえ、何でもないでござる……今すぐ行ってくるでござる!」


「兄さん……今のは最低だよ、デリカシーの欠片もない発言。これだから童貞だって馬鹿にされるんだ……

 女性にとってはデリケートな話題――」


 パパパンッ!


「おら! 無駄口叩いてないでさっさと走れ!」


「「ひっ! イエス、マム!」」


 猛ダッシュで中央ポータルに向かうサガ兄弟。


「シズカちゃん……今のはさすがに言い過ぎなんじゃ……」


 普段聞いたことのないシズカの暴言に少し不安になるシズネ。

 本当に体調が悪いのかと心配になるくらいだ。


「いーえ、あれくらいで丁度良いの! あいつ等、あのままだと役立たずだし?

 優しくするとすぐにつけあがるし? オタクにやさしいギャルなんて幻想だってことを思い知らせておかないとね。

 何事も距離感が大事ってやつよ、うん」


 シズカは目をつぶり両腕を組むと、頷きながら持論を展開する。


「ふーん、そうなんだー」


 シズネは直ぐに安心した顔に戻る。


「なーに? その顔はー」


「うふふ、何でもないよー」


 なんやかんやでシズカは面倒見が良いのだ、本当に嫌いならアドバイスはしないし、パーティーはとっくに解散している。

 悪態を吐いているのはシズカなりの愛情の裏返しなんだと思うシズネであった。


「このー、なんか見透かしてる感じ? シズネッチの癖に生意気だぞー。おしおきだー」


 シズカはシズネの脇腹をくすぐる。


「きゃっ! あはは。くすぐったいってー」


「おらおら、こんないけない体をして可愛い事いうやつはこうだー!」


「あはは! やだーそこはダメだってー!」


 ……。


 …………。


「兄さん、やはり2.5次元って最高だろ?」


「あ、ああ。たしかに尊いでござる……女の子同士……ありでござるな」


 急いで買い物を済ませたサガ兄弟は、遠くから二人のやり取りをじっと見ていた。

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