第18話 上位モンスターに進化!
「ふう、えらい目に遭った。まあ、シズネッチのレベルが20まで上がったし、サブクエスト完了できたなら無駄ではないかな」
乱戦ではあったが、それなりに戦果を上げたシズネは無事にレベル20に到達していた。
「あれれ? おかしいな。ガーゴイルの肉はさっき食べたはずなのに進化しないよ?」
サブクエスト関連だと捕食しても影響が無いのだろうか。
疑問に思ったシズネの目の前に突然メッセージが届く。
『おめでとう、シズネッチ。見事に悪魔の遺伝子を取り込みましたね。
進化の為の儀式がありますから。一度研究所に戻ってきてねっ!』
「あ! モンスターの研究所に戻れって、NPCのお姉さんからメッセージがきてる」
どうやらサブクエストは完了していたようだ。
――バイオ研究所ベヒモス。
地下に入るとシズネの前にはチュートリアルクエストでお世話になったNPCのお姉さんが出迎えてくれた。
「シズネッチ、よくぞここまで成長しましたね。
今まで大変だったでしょう。でも、アナタは無事試練を乗り越えました。
シズネッチはモンスターの新たなステージへ進化することが出来るでしょう」
【サブクエスト『ガーゴイルを捕食せよ』を完了しました。
シズネッチはモンスターの上位クラスへの進化が可能になりました。
上位クラスのモンスターは多種多様なユニークスキルを持っています。
パーティーで有効な支援スキル、敵のモンスターに様々な状態異常を与えるスキル等、その種類は多岐に渡ります。
使い方次第では他の職業のスキルを遥かに越えるものになるでしょう。
シズネッチの今後の活躍に期待を込めて……。
今すぐ上位進化をしますか?】
「は、はい。よく分からなかったけど、お願いします!」
「うふふ、悪魔の力……楽しみだわ。
でももし、気に入らなければ新たにモンスターを喰らいなさい。一度悪魔の肉を喰らったアナタですから、進化の可能性は無限大だわ。
ああ、そう、もう一つ言っておくことがあったわね。
新たな力に目覚めたことで進化前の種族のスキルを一つストックすることが出来るになりました。
何が今のアナタに必要か、よく選んで決めなさい?」
【現在保有しているスキルの中からストックするスキルを一つ選択してください。
『こん棒』『ウォークライ』『ぶん殴る』『蹴る』『体当たり』】
「うーん、この中だとウォークライかなー。パーティーで役に立ちそうだし」
【スキル『ウォークライ』をストックしました。これよりシズネッチは進化を開始します】
次の瞬間シズネの身体に変化が訪れる。
ゴブリンクイーンの全身が光り輝き、身体は大きく変化していく。
「お、おおお! 背中に違和感? あれ、羽が生えてる。コウモリっぽい?
うふふ、ちょっとくすぐったい……うん、あ! 羽は自由に動かせるっぽいし何か凄いかも。
……でもお腹はぷにぷにで筋肉は無くなっちゃったかー。でも頭に角も生えてるし、これって結構かっこいいかも?
私、悪魔になっちゃうのかー、うふふ、シズカちゃんの反応が楽しみだなー。でもシズカちゃんって宗教的な価値観は軽いんだよねー、教会の娘なのに……」
【おめでとうございます。シズネッチは『サキュバス』へ進化しました】
やがて全身を覆っていた謎の光は収まる。
今まさに進化した上位モンスター、シズネッチのお披露目だ。
シズネは見える範囲で自分の全身を確認する。
身に着けているのは黒いレザーで三角のブラのハイレグビキニ。
太ももから下は網のニーハイソックスに先の尖った黒いハイヒール。
ゴブリンクイーンの時はかろうじでビキニアーマーのカテゴリーだったが、今は正真正銘のセクシーな黒い水着であった。
それに加え肌の色と髪色は現実の自分とおなじである。
ふと研究所のガラスに写る自分の姿を見る。
……ぎょっとした。
(あれ? 私がいる……)
顔は悪魔らしく切れ長のアイメイクに紫色のグロスを施されているが、目鼻口から輪郭全てのパーツはリアルの自分と全く同じだった。
唯一の違いは耳の上に生えている角と背中の羽、お尻から伸びる尻尾だけである。
もちろん、自分の容姿を知ってるのはシズカだけではある……。
……だが、この羞恥心。
なぜ、自分はこんなハレンチなコスプレをしているのか……
そう、これは紛れもなく、やり過ぎコスプレをしているだけのシズネであった……。
「おお、シズネッチ殿、もの凄い美少女モンスターに進化したでござるな! さすがは上位モンスターといった風格でござる!
さすがは人気ナンバーワンのMMORPG『ヘルゲートアヴァロン』キャラデザに金を掛けているでござる。
サキュバスのデザイン一つにもこだわりが溢れているでござる!」
「たしかに、中級モンスターである敵側のサキュバスとは随分デザインが異なりますね。
黒髪で顔はアジア系、実に日本人向けのデザインですね。
サキュバスの新解釈ですか……なるほどさすがはヘルゲートアヴァロンですね、デザイナーが素晴らしいのでしょう」
「うむ、セイジの言うとおりでござるな。
正直言って欧米系のサキュバスは解釈違いで拙者はごめんでござるからな。
こういうので良いのでござる。日系サキュバス、安心感でござるなー」
先ほどから、サキュバスのシズネッチをガン見しながら褒めたたえるサガ兄弟。
だが、ここはあえて微動だにしないシズネ。
さすがに学習している。
そう、あえてゲームの仕様として、こういうものだと自分に言い聞かせて両手を腰に当てて胸を張るのだった。
豊満な胸を強調するその姿は、傍から見れば実にサキュバスらしい堂々たるダークファンタジー的なエロスである。
「…………。シズカちゃん……。これはさすがに、本当に……恥ずかしいんだけど……」
周りに聞こえないように、そっとシズカにだけ耳打ちをするシズネ。
「いやー、私は可愛いなーって思うよー。
ほら、男共はガチのシズネッチのエロビキニ姿だなんて気付いていないし?
キャラデザインとして美しいって評価なんだからさ! つまりイケてるってこと! もっと自信もちなって!」
パンッ! とお尻を叩くシズカ。
プルンと波打つ肉の質感はヘルゲートアヴァロンの物理演算のクオリティーの高さを証明していた。
「ひっ! もー、いくら同性だからってセクハラはだめだよー」
騙された気はする。
だがありのままの自分で堂々としたいという願いは叶えられた……。
そう、現実では絶対にありえないことだ。
まるでクラスの男子たちが毎日夢中になって見ている、雑誌に登場するアイドルの様な格好を今まさにゲームとはいえ自分がしているのだから。
…………シズネは百歩譲って、肯定的に思い込むことにしたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます