第17話 初めてのパーティー戦

 翌日。


 ガーゴイルは強かったが、得られる経験値は高い。おかげでシズネッチのレベルは上がっていた。

 一対一なら勝てることが分かったので、昨日の夜に少しだけ一人でレベリングをしていたのだ。


 名前:シズネッチ

 職業:モンスター

 レベル:19

 種族:ゴブリンクイーン

 HP:384

 力:202

 素早さ:160

 防御:112

 魔力:67


「シズカちゃん! 私だいぶ強くなったよ、ガーゴイルだって一対一なら楽勝だし」


「おー、確かに強くなったね。じゃあ、そろそろメインクエスト攻略と行きますか!

 ……そういえばシズネッチ。サブクエストはどうしたの?」


「あ、そうだった。確かガーゴイルを捕食して上のクラスのモンスターに進化するだっけ。

 もうすぐレベル20だし、その時にまたガーゴイルを食べるよ」


「そっか、よし、なら今回はガチで攻略といきますか。パーティーでの立ち回りも練習したいし。

 今回は敵をリンクさせて戦おっか。正攻法ってやつだ! オタク兄弟! 昨日はゴメンね。今日こそはいいとこ見せてね!」


 シズカはやはり社交的だ、昨日台無しにしたのはシズネだというのに真っ先に謝るのだ。


「あ、あの。私、昨日は本当にごめんなさい! つい、感極まったって言うか、シズカちゃんにも迷惑かけたし。ほんと私どんくさいっていうか。

 その、今日はよろしくお願いします!」


「うむ、こちらこそよろしくでござる。昨日の件は全然大丈夫でござる、むしろシズネッチ殿の人格に我らも感極まったでござる」


「そうですよ。私達としては大変よいものを見せていただきました。純真……ピュアーな乙女の心を踏みにじる行為は万死に値しますからね」


「……げっ! やはり弟の方がキモさでは一歩上って感じか、伝説の少女漫画『月の水兵』に登場するマスクド・タキシードのモロパクリで、キモさが100倍増しじゃん」


「ふっ、シズカちゃん殿……パクリではありませんよ。リスペクトと言ってほしいですね……」


「あはは、そういえばシズカちゃん。小学生の時はマスクド様と結婚するって言ってたよねー」


「ちょ! それは黒歴史だってば! あたしだって忘れてたのにー。

 ……でも言っとくけど同級生、いや同世代の女子は皆、タキシード様に憧れてたんだからね! シズネッチだって……あれ? シズネッチは……」


「うん、私はキザな感じが少し苦手だったなー、できればお父さんみたいに優しい人がいいかな?」


「お、おう。そうか……さすが過剰梱包箱入り娘だ。

 おっと、その話はお互いに墓穴を掘りすぎる……。


 こほん、では今日も一狩りいきますか!」


 …………。


 再びメインクエストに挑戦するパーティー一行。


「さてと、では今回はパーティー戦ということで正攻法でいくでござるな?」


「うん、引き狩りに頼ってると、この先詰みそうだしね、パーティースキルってやつを磨かないとだめっしょ?」


 テンプラーであるサガ兄弟。

 ソウジとセイジは同時にヘイトのスキルを使用する。


 ヘイトとは敵のターゲットを自身に集中させるタンカー専用のスキルで防御力の低い後衛を守るために存在するのだが……。


「来ますね、全部で10匹ってところでしょうか」


 教会から石像のガーゴイルが解き放たれ、一斉にこちらに向かって飛んでくる。


「あれ? 思ったより数が多くない? このままだとヤバいかも? ほらオタク兄弟! 男を見せなさい!」


「シズカちゃん殿。地球では男女同権なんでござる、アーススリーでは違うのでござるか?」


「ぼんくらどもが! お前等テンプラーだろうが! タンカーの仕事をしろっていってんの!」


「ふふ、ソウジ兄さん。ここはダブルテンプラーの本領をお見せしようじゃないですか」


「うむ、セイジよ、職業被りでも枠割を分担すれば役に立つというのを証明してやるでござる!」


【ジェミニ=サガ・ソウジはスキル『マイトオーラ』を使用しました。パーティーメンバー全ての攻撃力が向上しました】


【ジェミニ=サガ・セイジはスキル『シールドオーラ』を使用しました。パーティーメンバー全ての防御力が向上しました】


「おお! たしかに攻撃と防御の両方をカバーしている。

 なるほど、二人のテンプラーが居れば、どちらか一つしか使用できないオーラスキルの重ね掛けができるか。

 確かにこれはありかも?」


「セイジよ。我らはタンカー二人にヒーラーが一人、アタッカー一人。

 なかなかに堅牢なパーティーでござるが、攻撃力不足は否めない」


「ふ、その通りですね。……分かりました。

 まずは私が戦端を開くとしましょうか。

 行きますよ! 装備ツーハンドソード。スキル『パワーストライク』!」


 両手剣でガーゴイルに斬りかかるセイジ。

 攻撃力の高い両手剣ではあるが、物理防御耐性のあるガーゴイルを倒すには威力が足りない。


「おいセイジ! 抜け駆けするなでござる。拙者も、装備ツーハンドソード、スキル『パワーストライク』!」


 ソウジも両手剣を持ち、ガーゴイルに斬りかかる。


「げ……こいつらタンカーの意味をまるで分かっていないじゃん! なんで囲まれてるのに両手剣なのよ! 盾は? 馬鹿なの? 死ねば!」


「ふふふ、我ら兄弟は職業が被りましてね」

「テンプラー二人だと。攻撃力が低いのであえての両手剣でござる」


「ちなみに一度ソーサラーを試してみましたが、二人ソーサラーは火力はあるのですが防御が紙でして、最終的にテンプラー二人がもっとも安定したのですよ」


「だから、どっちかテンプラーで、どっちかがソーサラーやれって話じゃん!」


「ふっ。それだとソーサラーが一方的に活躍するので悔しいじゃないですか……」


 先程から会話についていけないシズネではあるが、双子は色々と大変だということは分かった。


「ガ、ガンバレ! ガンバレー!」


 ウォークライは発動しなかった……。

 もはや鼓舞できる状況ではないほどにグダグダであったからだ。


 パーティーバランスは本来良いはずなのに……結果は最悪である。


 円を描くように飛行するガーゴイルの群れは一斉に襲い掛かってきた。



 …………。


 ……。



【パーティーは全滅しました】

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