第11話 ログオフ
【ゲームを終了します。お疲れさまでした。フルダイブゲームの後は適度な運動を心掛けて健康な日常をお過ごしください】
「うーん、確かに、現実に戻ると体に違和感があるなぁ。なんか重いって言うか。やっぱリアルでも運動しなくちゃ……」
シズネはベッドから起き上がると時刻を確認する。
もうすぐ12時だ。
「シズネ―! 起きてるー! お昼ご飯よー」
「あっ! はーい! 今行くー」
一階から母親の声に答えるシズネ。
シズネの部屋は二階にある。
もし、ゲームをしていたら母親は二階まで起こしに来なくてはならない。
シズネは親に迷惑が掛からないようにゲームの時間はしっかり決めている。
ゲーム機の電源を落とすと一階のリビングへ向かう。
「おっと、……危ない。階段を飛び降りようなんて、ゲームじゃないんだから」
シズネはまだ自分がワーキャットのつもりで階段から飛び降りようとしたのだ。
(これがネットゲーム症候群なのかな、たしかに危ないかも。……でも、嬉しかった。
少しだけ自分に自信が付いた気がする。現実でもそういうふうになれるように頑張らないと!)
階段を降り。リビングルームの扉を開く。
テーブルには父親が座っていた。
「お! シズネ。体の調子は大丈夫かい? どこか変なところはないかい? お父さん今日は偶然にも有給休暇なんだよ。ははは。
ところでゲームの調子はどうだい? ネットゲーム症候群ってのがあるくらいだからね。でもちゃんとお昼に来てくれたってことは平気なんだよね?」
「お父さん……?」
いつもの穏やかな性格と違って、やや取り乱し気味な父親に困惑するシズネ。
しかも今日は平日である。会社に行っているはずなのだが……。
「うふふ、シズネ。お父さんはね。ゲームを買った後にネットゲーム症候群っていう病気があるって聞いたのよ。でね、心配で心配で。
うふふ、仮病をつかって会社を休んだの、うふふふ」
「お、おい! 母さん、ネタバレは……。こほん、シズネ。体は大丈夫なんだよね? お父さんは心配で心配で……」
「うーん、お父さん、私は大丈夫です。ネットゲーム症候群は現実が嫌になった人がなる病気でしょ? 私は全然現実に居たいですから」
そう、さっき階段を飛び降りようとしたが、自然とストッパーが掛かった。
現実に生きようとする意志があれば無茶な行動はしない。
それこそ現実が嫌になるほどに追い詰められた人間ならば、ネットゲーム症候群に簡単にかかってしまうかもしれないが。
シズネにとっては大好きな人達が居る現実の世界の方が大切なのだ。
「はーい、その話は後でしましょう。今日のお昼は冷や麦ですよー。
さっきサンジョウ神父様が家に来ましてね。
娘のわがままでゲームにつき合わせて申し訳ないって、高級な冷や麦をたくさん頂いたんです。
ちなみにカステラも頂きました。三時のおやつにいただきましょう!」
「え! ほんと? やったー。カステラだー!」
「うふふ、シズネはカステラが本当に好きなんだから」
アーススリー。ニュージャパンシティーの銘菓としては聖アマクサ教会のカステラは人気が高い。
もっとも本業ではないためお店には流通しておらず、滅多にお目にかかることはできないが、1000年以上も変わらない素朴な味は一度食べたら忘れられないと評判である。
シズネは昔からこのお菓子が大好きであった。
-------------------------------------------------------
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回から新メンバー登場。
いよいよMMORPGらしくパーティーを組むようになりますが果たしてどうなるでしょうか。
そしてシズネの進化したゴブリンクイーンの実力はいかに!
続きもぜひお楽しみいただけたらと思います。
また、本作品を面白い、続きが見たいと思って下さる方、できれば★★★レビューあるいは♡応援を頂けると今後のモチベーションに繋がりますので何卒よろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます