第9話 ゴブリンリーダーとの戦い
「やってやるんだー! さあこいやー!」
「その意気だ! そんなシズネッチに神の祝福を『ブレス』! 説明は不要のプリーストの支援魔法のひとつ。
痛覚鈍化の効果があるよ、あとは若干の身体能力の強化かな。がんばれシズネッチ!」
シズカは両手を合わせ祈る。
【シズネッチは『ブレス』の効果を受けました】
「シズカちゃんありがとう! 暖かい、なんかポカポカするね」
「うほ、いちいち可愛い反応ありがとう。じゃあ、あたしは本来のプリーストの立ち回りをするから。
シズネッチ、ゴブリンリーダーとガチバトル、頑張れ!」
ゴブリンリーダー。
ゴブリン戦士よりも一回り大きな身体。
身長は日本人女性の平均程ではないだろうか。
つまりシズネとの体格差は無い。
さらに剣と盾、鎧で武装している。
シズネは自分の爪を伸ばしながらジリジリと距離をつめる。
互いに緊迫する場面だ。
「おりゃー!」
シズネは先手をとる。
キンキンキン! キンキンキンキン!
ワーキャットの爪とゴブリンリーダーの剣はぶつかり合い火花を散らす。
「にゃー!」
キンキンキン! キンキンキンキン! キンキンキンキンキンキン!
火花を散らす。
…………。
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!
……火花を散らすだけだった。
「……ちょっとー。シズネッチー。もうちょっと腰に力を入れないとだよー。
さっきからキンキンキンって、それじゃ戦いが薄っぺらいってー……」
シズネとて理解している、だが、敵は強い。
剣と盾を持った相手がこれほどまでに強いとは思わなかった。
キンキンキン!
シズカは傍観している。
ときおり退屈そうにあくびをしている。
「むー、シズカちゃん。私だって頑張ってるのにー。……いや、頑張ってない。さっきからキンキンやってるだけだ!」
一歩後ずさり、ゴブリンと距離を取る、大きく深呼吸をするシズネ。
「シズカちゃん。何となく分かったよ。これは戦いなんだ、肉を切らせて骨を断つ、だぁあああ!」
防御を無視したシズネの一撃。これがモンスターであるワーキャットの本領である。
右手の鋭い爪がゴブリンリーダーに襲い掛かる!
だがゴブリンリーダーは盾でそれを防ぐ。
カウンターの剣の一撃がシズネの腹部を貫く。
【クリティカルヒット!】
名前:シズネッチ
レベル:9
HP:46/180 【134ダメージ!】
「痛ー! これは結構くるね。でもこれを待ってたんだ。おりゃー!」
シズネは痛みに耐え、今度は左手の爪でゴブリンの無防備な顔面をひっかく。
「ごぶぶううあああ!」
ゴブリンリーダーのHPバーが半分以下になる。
「おっしゃ! やったねシズネッチ、ちょっと待ってて。……『ヒール』!」
シズカはセプターを握りしめて祈りの様なポーズをとると、シズネの周りに光のシャワーが降り注ぐ。
名前:シズネッチ
レベル:9
HP:180/180 【+256回復】
「すっごーい。シズカちゃん、回復魔法ができるんだー」
「出来るんだー、じゃなくて。アタシの本職はヒーラーだから。忘れちゃったの?」
「そっか、でも忘れちゃうよ。シズカちゃんずっと暴力的なシスターさんだったし……」
「……まあね、それもそっか。でも私がまともに戦えるのは序盤だけだと思うから。よし、シズネッチとどめやっちゃって!」
ゴブリンリーダーは顔面から流れる血を片手で抑えている。
その片手で持っていた盾は地面に転がっていた。
そして、覚悟を決めたのかゴブリンリーダーは剣を両手で構え、シズネに突進を繰り出す。
中腰に構えた剣、おそらく最後の一撃だろう。
対するシズネは、自身の身軽さを再度認識する。
モンスター、ワーキャットの瞬発力はゴブリンよりも高い。
「よーし、結構なれてきたぞー!」
シズネはゴブリンの渾身の刺突を紙一重でかわす。
腰を深く落とし、拳に力をこめる。
全身のばねを使い。
「くらえー! 猫パーンチ!」
カウンターのアッパーカットはゴブリンリーダーの顎にクリティカルヒット。
【おめでとうございます。クエストボス、ゴブリンリーダーの討伐に成功しました。次のメインクエストが開放されます】
「やったね、シズネッチ。結構頑張ったじゃん!」
「シズカちゃん、ありがとう。……って。私レベル10になったよ。これで進化できるんだよね」
「うむ、その通り。とりあえず、そのゴブリンリーダーを食べてみれば良いんじゃない? ボスモンスターを食べれば強くなれるって仕様じゃないけど、せっかくだし……」
「うん、そうだね。じゃあ、食べる。……えっと、食べるんだよね……。うーん、やっぱり私はそう言う趣味はないんだけど……」
「もう、さっき説明したっしょ。ガブってかみつくだけでいいって、捕食シーンはショートカットすればいいじゃん」
「あ、そうだった。そうだね、じゃあ、失礼して……」
シズネはゴブリンリーダーの死体に軽くかみつく。
いくらショートカットが可能とはいえ最初のひと噛みは回避できない。
ブシュル!
「うーん、味は美味しいんだよねー。……あれ、ああ。なんか私の身体、光ってない?」
「うん。光ってる。魔法少女の変身シーンみたいだねー。
さて次の進化はどうなることやら。ゴブリン……シズネッチがゴブリンかー、ありかもだ、グヘヘ、そそるぜ!」
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