第5話 魔族の姉妹5
「貴様! 何を……」
「ああ、そういうのいらないんで」
僕は右手の掌を相手に向けてレーザーで相手の頭を撃ち抜いた。
『ナイス! ヘッショ!』
『グロくならないように一発で撃ち抜く配信への配慮助かる』
『絶対ナナくんはそんなこと考えてないぞ』
うん、向けたらたまたま頭だっただけ。まぁ、無意識って言ってもいいけど。
「よっし、ミヨさんはどこかなぁ?」
眼の前にある大きな建物を見上げる。
『でっけぇ城……』
そう建物というか、まさしく城である。王城ってやつ。
さっき頭を撃ち抜いたのはその城門を守ってた兵士。
「……あれ? ドアってどうやって開けるんだ?」
門が閉まってるんだけど?
鉄でできた扉は頑丈に侵入者からその中を守っている。まぁ、僕のことだけど。
「しまったなぁ。開けさせてからヤるべきだったか」
押してみたり引いてみたりするけど、門が動く様子はない。
『多分、鍵がかかってるんじゃないかな?』
『さっきやった兵士とか持ってない?』
『流石にこの手の門の開け方なんてわからんなぁ』
うーん……
「めんどい。壊そう」
僕は右の肘を門に向ける。肘の関節がパカっと開き、そこから大型のミサイル砲が発射された。
「よし、ドーンと」
爆音を立てて、門が吹き飛んだ。
『うっせぇえ!!!!』
『音がないなった!』
『音量注意』
『劇遅音量注意ニキ(#^ω^)』
『耳がないなった!』
『おい、耳落としたやついるぞ』
『大丈夫換えの耳はコンビニで買っておいてある』
うんうん、視聴者さんも随分と慣れてるねぇ。僕? 僕は音を完全に遮断できるから全然困らないよ。
この程度の爆風だったらボディになんのダメージもないしね。
「よっし、扉も開いたし。お邪魔しまーすと」
爆風の中を突っ切って城の中へ入る。
「さてさて、ミヨさんは……おっ?」
爆風を抜けると。そこには、驚愕の目でこちらを見る兵士らしき人間がいた。
「~~~~!」
すぐさま手に持っていた棒を僕の方に向けて何事か喋る。
「何言ってるかわからん」
右手のレーザーでヘッショ!
「あ、またヤっちゃった。さっきのやつに聞けば良かったか」
次に出てきたやつに聞くか。おっと、噂をすれば……
「~~~~!」
「~~~~!」
「~~~~!」
なんかまとめて3人も出てきたんだけど?
全員がこっちに向けて棒を向けている。
「~~~~!」
その中のひとりがこちらに突っ込んで僕のお腹に棒を押し付けてきた。
何がしたいんだ?
『その程度の槍でナナちゃんの身体に傷がつくはずないんだよなぁ』
あ、これ棒じゃなくて槍か。ふむ……
「あの、聞きたいことがあるんですけど?」
優しく笑みを浮かべて問いかけてみる。
『ひえっ!』
『おろろろろっ』
『ナナちゃんの悪魔の笑みで条件反射に吐いたやつがいるぞ!』
失礼だね。君たち。
「~~~~!」
僕の問いかけに何事か返してくる兵士。
「うーん、やっぱり会話が通じないなぁ」
うん、お話にならんですね。
というわけで、グッバイ。
3人は仲良く、上半身と下半身がさよならした形で横たわりましたとさ。
「どっかに、話が通じる人とかいないかなぁ」
こういうのはきっと偉い人がいるところに行けばいいよね。定番だと、きっと偉い人は高いところにいるはず。バカと一緒だね。
階段を見つけて上がっていく。そうしてたどり着いたのは、いかにも豪華そうな部屋だった。
「ん……あ、いた」
部屋の中には、一人の裸の男とその前に屈んでいるミヨさんがいた。
『あかん!』
『これはそういう場面では!?』
『BANになる前に消すんだ!』
ふむ、なるほどね。
「それじゃあ、消しますね」
僕は左手を男に向ける。
その手から発射されるビームはただのビームではない。
「……!」
ビームが当たった瞬間、男の身体が砂のように崩れ落ちた。
「この分解装置はエネルギー消費が大きいからあんまり使いたくないんだけどなぁ」
でも、視聴者さんのお願いされたらしょうがないよね。
『消せってそういう意味じゃなくてだな……』
『映像じゃなくて、BANの対象を存在ごと消しおった』
『相変わらずえげつない武装しておるわ……』
あ、そういう意味だったのかぁ。まぁ、やっちゃったもんはしょうがないよね。
「おっと、大丈夫ですか? ミヨさん」
屈んだままのミヨさんは、目をパチクリさせて僕のことを見ている。
ちなみに、こっちは服を着ているからBANの心配もなくて安心。
「~~~?」
「あら? 何言ってるかわからない?」
『ナナちゃん、ひょっとして翻訳機能オフになってたりしない?』
『もしくは、音量オフにしてるか』
『声聞こえないからオフになってる可能性が大』
あ、そっか。さっき城門破る時にオフにしてそのままだったか。
そっかそっか。それでここに来るまでの兵士たちからも答えをもらえなかったんだなぁ。うっかり、うっかり。おかげで余計な殺生しちゃったよ。
『うっかりさんだなぁ』
『よく考えろ、ナナちゃんだぞ。絶対計画的だ』
『なんだったら、最初からサーチでミヨさんの場所わかってただろ』
君たちみたいな勘のいい視聴者は嫌いだよ。
まぁ、溜まったストレスが悪い。
「これでOKと。ミヨさん。喋ってもらえますか?」
「あ、あの……ナナ……様?」
よっし、聞こえた。
「様はいらないんで。ミヨさん。お迎えに来ましたよ」
「お迎え……? いったいどういうことですか……? さっきの人間様は……」
おっと、ミヨさんが混乱しておる。
ここで説明してもいいけど、なんか音が聞こえるようになったからか、部屋の外で凄い騒ぎになってるなぁ。
「ひとまず、ここから脱出しましょう。捕まってください」
「は、はい……」
ミヨさんの手を掴んで扉の外へ出ようとしたその時だった。
「王! ご無事ですか!?」
なんか純白の鎧を来た男が部屋の中へ飛び込んできた。
「……貴様ら! 王はどこだ!」
そいつはキョロキョロと周りを見回した後、僕の方を睨んだ。
「あ、あの方は! 人間族の英雄! ヒーロー様です!」
ミヨさんが驚きの目で人間の方を見る。
「……英雄のヒーロー? えっと……意味被ってない?」
『異世界だからwww』
『こんな偶然あるのか?』
『きっと神様のいたずらだwww』
そうだね。きっと神様もネタに走りたかったんだろうね。キャラの名前考えるのめんどくさかったのかな?
「質問に答えろ! 王をどこにやった! そこの魔族もどうするつもりだ」
英雄様がお怒りで僕に剣を突きつけてきた。
「王? ここには裸の変態男しかいなかったよ? 変態は消却したからもういないけど」
「何を馬鹿なことを! 王の私室にそんな男がいるはずがなかろう!」
うーん? ここって王様の私室だったんだ……へぇ……
「つまり、あの変態が王様だったってことかな? あ、裸の王様ってやつか! うまいね!」
『誰がうまいこと言えとwww』
つまり、王様をどこにやったか? って英雄様からの質問にはこう答える。
「王様ならその辺にいますよ。塵になってそのあたりでも漂ってるんじゃないですかね?」
まぁ、塵どころか粒子レベルでだけど。
「貴様っ!」
怒った英雄様が剣を振りかぶって襲ってきた。
「そんなに大きく振りかぶっちゃ駄目でしょ」
すいっと避けて、足をかける。
「ぐっ……」
前のめりに倒れた英雄様だったけど、流石英雄様と言うべきか、すぐに身体を回転させて僕に剣を向けてきた。
「貴様! いったい何が目的だ! その魔族をどうするつもりだ」
「うーん、さっきから気になってたんだけど、魔族ってミヨさんのこと?」
ちらっとミヨさんの方を見ると、ミヨさんは震えていた。
かわいそうに、いきなり襲いかかられたら怖いよね。
『多分、ナナちゃんが怖いんだと……いや、なんでもない……』
はは、僕が怖いわけないじゃない。僕は助けに来た側なんだから。
「妹さんからの依頼でね。この人を連れ戻しに来たんだよ」
「えっ……イク……が?」
「そうそう。イクちゃんがどうしてもって言うからね」
『……どうしてもっていうか……言わされてたような……』
そんなのは知らんなぁ。
「つまり貴様はその魔族を助けに来たわけかっ……くっ! しかし、そんなことをしても何も変わらんぞ! この世界では人間が魔王に勝利して魔族を支配している! その構造は今更変わったりしない!」
なんか勝手に喋りだした。
『あー、なるほど……よくある人間と魔族との戦争が終わった後の世界だったのか』
『んで、敗者である魔族が非人道的扱いをされてると』
『多分この国だけの問題とかじゃないんだろうなぁ』
「俺を一人倒したところで無駄だ!」
なるほど、なるほど。よくわかったよ。うん。でも……
「で? だからどうしたって?」
この世界の構造はよくわかった。ありがちなやつだなぁっていうのが感想。ただそれだけ。
「僕の目的は今、この場にいるミヨさんを送り届けることだけだからね。それ以外はどうだっていいんだよ」
それが、今回の僕の目的だし。
この世界の構造? そんなの勝手にやってくださいって感じ。
「まぁ、とりあえず貴方は邪魔なんで消しときますね」
「なっ、やめ……」
はい消去っと。王様と一緒に漂ってるといいんじゃないかな。
「んじゃ、行きましょう。イクちゃんが待ってますよ」
「……わかりました。お願いします」
ミヨさんを連れてお城を出た。
「おっと、ついでだから……」
「ナナ様?」
「これで良しっと。ごめんごめん。それじゃあ、ここからは飛んでいくからね」
「えっ? 飛ぶ……あらっ!」
ミヨさんを抱えて、僕は空へと飛び立った。
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