24.幼い女神と空駆ける冒険者達
大型アップデートから早三日。
ウルは『ブイブイゲームス』の社内で、『でん六』のポリッピーをポリポリ摘まみながらネットサーフィンをしていました。ちなみにウルはシンプルな「しお味」派です。
『おぉ~、みんな仲良くしてるみたいね』
本日のウルの関心事は実装されたばかりの『ペット』システムへの反応です。ごく少数の鳥類が苦手なプレイヤーを除けば、現時点での感触は概ね良好。メニュー機能で撮影した写真や動画をアップしている人も多くいました。
ゲーム内の食材店やレストランでペットに食べさせる分まで注文する人も増えてきているようです。現実の料理屋でやったら迷惑行為扱いされそうですが、ゲーム世界の中であればペット由来の病原菌なども心配無用。
『ペット』システムで呼び出せる生き物は現実の動物と違って、どんな物を食べさせても健康状態への影響はありませんし、むしろ食べさせるほどにステータスの値が上昇して攻略に有利に働きます。
その餌付けの成果も早くも出つつあるようです。
【すげー、人乗せて飛んでる】
【けっこう速いし高くまで行けるっぽい】
【戦闘中に爪とかクチバシで攻撃してくれるのね】
と、この通り。
ステータスが一定以上まで上がることがペットの鳥の背に乗って空を飛べる機能、並びにイベントの進行フラグとなっているのです。
ペットの鳥達はプレイヤーが乗る時は騎手の体格に合わせて巨大化し、街中などでは生まれてすぐと同じくらいに縮小、あるいはメニュー画面の中に入り込んでの待機状態となります。
待機状態から呼び出す際はメニュー画面の項目をタップするか、自分で設定した名前を呼ぶだけで出現。もし高所から落下するようなトラブルが起きた際は、自動的に愛鳥が出現して落下死を防げるようにもなっています(※システムで自動出現をオフに設定することも可)。
しかしイベントを最後までクリアするまでは、ペットの能力にはある程度の制限がかかったまま。ペットが件の空中都市群から離れるのを嫌がり、一定範囲より遠くのマップでは自動的に呼び出し状態が解除されてしまうのです。
場所を選ばず騎乗できるようにするためには、一連のイベントを進めてカラス達の『ハシブト帝国』を支配するボスを倒さねばなりません。
『ふむふむ、攻略の進みは思ったより遅めかしら?』
が、まだ実装されたばかりの新ダンジョンということもあり、ボスを撃破したプレイヤーはまだ出ていないようです。
もっと攻略情報が集まってくればペースも上がるのでしょうが、今はまだペットの育成途中のプレイヤーがほとんど。すでに騎乗可能なまでに育てた熱心なプレイヤーも、これまでに例のない空中ダンジョンということで攻略はあまり進んでいない様子。
ペットに乗って飛べる限界高度にも制限がかかっているため、ダンジョンをショートカットして一気にボスに挑むということはできないのです。
途中で足を踏み外したり、トラップや敵モンスターの攻撃で空中に放り出されることもあるでしょう。環境に慣れるまでは思うように攻略が進まないのも無理はありません。
もちろん、そういった試行錯誤の過程もゲームの楽しみの一つ。難しいからといって、安易に手助けすればいいというものでもありません。
『ふっふっふ、ここは我の出番みたいね?』
が、しかし。
楽しみを損なわない程度の、ネタバレにならないヒントを出すくらいならきっと大丈夫、のはず。ウルは人助けをして感謝されたりお礼を貰ったりするのが大好きなタイプの女神なのです。
次の瞬間、ウルの姿は『ブイブイゲームス』の会社ビルから消え、足裏からジェット噴射のごとく炎を噴き出して超加速。音速の壁もラクラクとブチ抜いて、『ダンジョンワールド』世界の空を超音速でかっ飛ばしていました。
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