23.幼い女神と空飛ぶ相棒
簡単なイベント戦闘をクリアしたのが孵化のフラグになっていたようです。
自動的に開いたメニュー画面のアイテム欄から先程のタマゴが飛び出してきたかと思うと、驚くプレイヤー達の手の中で殻にヒビが入っていき、中から雛鳥が出てきたのです。
「なにこれ、可愛い……」
「大きいヒヨコだ。あれ、そっちは文鳥? あとはハトにクジャクに、よく分かんないのもいるけど。これって人によってデザインが違うのかな?」
「お、ちょい見てみ。メニューに新しく『ペット』って項目が増えてる。えっと、鳥の種類とかカラーリングはここで変えられるっぽい」
「ふーん? ま、とりあえずデフォで」
タマゴから孵った雛は、普通の鳥類と同じく刷り込みによって最初に見たプレイヤーに懐く設定になっているようです。甘えて顔を擦り付けてくる愛くるしい仕草にプレイヤー達は一様に目尻を緩めてしまっています。
元がダチョウの卵に近い大きさだっただけあって、生まれたばかりの小鳥でもどれもニワトリの成鳥くらいの大きさがありました。
『ピィピィ』
「お、よしよし。ん、メニューに何かメッセージが……『名前を決めて下さい』か。どうしよ、こういうの悩んじゃう
「今どきのゲームで名前がカタカナのみの四文字制限ってのも珍しいね。ああ、説明を流し読んだ感じだと名前で呼び出せるようになるのか。実質、付けた名前がそのまま召喚用の呪文になるって感じなら長いと言いにくいもんね」
「なるほど理解した。よし、それじゃあお前の名前は今日から『カラアゲ』だ。よろしくな、カラアゲ!」
そしてメニュー欄の新機能も同時に解放されました。
新しく追加された『ペット』欄で、プレイヤーの相棒となる鳥の名前や種類、カラーリングなども任意に設定が可能。やりこみ派のプレイヤーはずいぶんと悩まされそうです。
【 カ ラ ア ゲ 】
【酷すぎて草。もっとこう他にあるだろ、ヤキトリとか】
【テリヤキに一票】
【じゃ、俺チキン南蛮ね】
【四文字までだっつってんだろ】
【とり天にビールで】
【鴨南蛮】
【なんか腹減ってきたな。コンビニ行くか】
新要素に対するコメント欄も賑わっているようです。
何故だかペット要素よりも鳥料理の話題で盛り上がっていましたが。
「おっ、食材アイテムやると食べるみたいよ?」
「遠慮するな……おかわりもいいぞ……」
「アボカド入りの料理とか大丈夫? リアルの鳥にとっては毒になる食べ物も結構あるけど」
「大丈夫でしょ。見た目それっぽくてもゲーム内の生き物だし。あ、ちょい注目。何か食べさせると、こいつらのステータスが上がるみたい」
「力とか耐久とかあるし、成長したら一緒に戦ってくれたりすんのかな?」
この場にいるのは、新要素への検証に興味関心があるプレイヤーばかり。
他のゲームで慣れているおかげもあって、新たに実装されたシステムの概要もあっという間にハッキリしてきました。
そして新たな『ペット』システムの内容は凡そ彼らの推測通り。
プレイヤーは相棒となった雛鳥に食材や料理アイテムを与え、それによりペットは見た目だけでなく内部的なパラメータも成長。一定以上まで成長させることがイベント進行のフラグにもなっています。
「あっ、空を飛べる新スキルってこれか!」
「ペットの鳥を育てて、呼び出したのに乗って飛ぶ感じ? こいつら、そこまでデカくなんの?」
「ずっと大きいままだと邪魔そうだし、巨大化能力とかあんのかもよ?」
「で、背中に乗ってあの空の建物っぽいやつまで飛んでくワケね」
それらの予想についても大体正解。そしてシステムへの理解が進んだことで、今後のプレイ方針についても固まりました。
「じゃ、それぞれペットを愛でつつ食い物やって育ててくってことで」
「はい、そんじゃ解散。お疲れっした~」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます