ランニング39:黒騎士ゲットだぜ!
さすがに疲れていたぼくは、イルキハで一泊。
リーディアと添い寝というか、ソファでイチャコラしてましたが、もちろん最後の一線には迫りません。そこら辺の対策というか演習?も兼ねてた行いですから。
「確かに、ポーラ姫は、他の誰よりも執着し、嫉妬してしまう可能性がありますね」
「最初にポーラと、次にリーディアと、そういう関係になるのは既定路線で良いと思うんだ。それから随時、他のお嫁さん候補達とも、って感じになると思うけど」
「普通なら、目も耳も手も届かなければ諦める状況でも、彼女なら届いてしまう。体の関係や順番などはそれなりに調整が出来るでしょうけど、子供は授かり物ですからね」
「そこ、怖いよね。何かあった時に、何もしてなくても疑われてしまうかも知れないし、それが暴走のきっかけにすらなってしまうかも知れない」
「カケル様の逆側に身を置く勢力からすれば、そういった所こそが正に狙い目とされるでしょうしね」
「ワルギリィさんや、ラガージャナさん、それにエフィシェナ達にも手伝ってもらうつもりだけど、やっぱり、同じ場所に住んでた方が守りやすくはなるよね?」
「先日の爆発物の様に、一度の機会で狙われやすくもありますが」
「そこは守りやすさとの交換条件でもあるから、なるたけ警戒を厳しくするしかないね」
「そうですね」
「ミル・キハ公爵その人にも訊いてみたけど、国としては関わってないって。たぶん、最近勢力を増している殉教派の仕業じゃないかって言ってた」
「私どもの取り調べでも、やはりミル・キハの宗教関係者の関与までは追えたものの、イルキハ王都の教会在職者達ではなく、そちらとも協力して捜査を進めています」
「うん。ミル・キハ側で何か分かればまた知らせるよ。さて、今日も一日動き始めないとかな」
薄布越しでもリーディアの柔らかな体のあちこちが触れていて、とても幸せなひと時でした。ずっと触れてもいたいのですが、それこそ我慢が効かなくなっちゃうかもだし、それは怖いのです。
「もう少しお休みになられてもよろしいのでは?」
「これ以上このままでいると先に進みたくなっちゃうかもだけど、一番最初はポーラというのを守らないと、たぶん酷いことになるよね」
「はい。まあ、残念ながら、そこは同感しか無いので、順番待ちはしますが、待ち遠しいです。他の奥方候補も増えていく一方ですし」
ちょっと拗ねた顔をしたリーディアはやっぱり可愛いので抱きしめてしまいますが、脇を抓るのは止めて欲しいです。地味に痛いので。
二人で朝食をとり、今後というか今日の予定についても話したのですが、その中でリーディアのレベル上げもできないのかなと気になりました。
「ポーラも、たくさん殺したり、眷属を増やす度にレベルが上がって出来る事が増えたらしいから、リーディアにも試してもらいたいかな。殺すとかじゃなくて、よりたくさん誰かをヒールしたりすると上がる?」
「戦闘における貢献度とかによりますね。それが他傷行為である必要性はありませんが、武器や魔法による攻撃が貢献度を稼ぎやすいのも事実です」
「光魔法にも攻撃手段はある?」
「ございます。武器も多少は嗜んでいるので、連れて行って頂けるのなら、レベルも上げていけるかと。女王としての務めとの兼ね合いが難しいですが」
「いつもは無理だけど、たまになら、って感じになるかな。でも、エフィシェナの目の治療もあるし、明日迎えに行く約束してるから、今日できれば少し行ってみる?」
「はい、是非!」
「じゃあ、クラーケンのところ以外にもダンジョンが無いか、探してみるから少し待ってね」
「では、私は今日カケル様と外出する旨を臣下に伝えて参ります」
という訳で、ルンルン姿でスキップして去るリーディアの後ろ姿を眺めながら、サーチしてみました。
驚いたことに、世界中で十ヶ所ありました。
その大半は、この大陸の外側にあったのですが、この大陸にも二つありました。その内の片方は、なんと、イルキハ領と言えるか微妙な、北西の、龍の背と尾の間くらいの山間部のどこかにあるようです。もう片方のはドースデン帝国のデモント領のどこかにあるようで、こっちも確認しておきたいですね。
戻ってきたリーディアに聞いてみました。
「あのさ、ダンジョン、イルキハの山奥の方にもあるみたいだけど、知ってた?」
「いいえ!あの、本当なのですか!もしそうなら、一大事ですよ!」
リーディアの食いつきが凄くて怖いくらいでした。
襟首掴んでガクガク言わされたので、手を外してどうどうと宥めてから説明しました。
「サーチにかかったから確実ではあると思うけど、その様子だと、ダンジョンって滅多に見つからないの?」
「この大陸のどこかで、数十年に一度見つかるかどうかという程度なので、ほとんどお伽話レベルの存在ですね」
「現れてしばらくすると消えてしまうとか?」
「私が聞いた話の中では、長くても5から10年ほどで消えてしまっていました。しかし、その短期間だけでも、ダンジョンから得られる富などは特別です。早速参りましょう!」
「最初は様子も勝手もわかってないから危なくない?ぼくが様子見してからの方が安全だと思うよ」
「気を遣って頂けるのは嬉しいのですが、私の得意な魔法は守りと癒しですよ?」
「そうか。じゃあ、一緒に行ってみよう!」
「はい!お役に立って見せます!」
と二人してテンション上げてダンジョンに向かってみたのは良かったんだけど。イプシロンやマッキーだけでなく、ハーボやドロヌーブも参戦表明して、みんなで意気込んで、奥深い山中の、土砂などに埋まった山腹のさらに奥に入り口は隠れていて、これじゃ見つかるはずも無いかと納得したのはさておき。
坑道の様な入り口を潜って進んだ先に待ち受けていたのは、ロックゴーレム達で、イプシロンでも噛み砕くのは多少苦労するらしく(普通、狼に岩は噛み砕けないですしね)、ハーボの鋼鉄のガントレットや、リーディアのモーニングスターでは、表面を少し砕くくらいが精々の、序盤にしてはなかなか手強い相手でした。
マッキー曰く、ゴーレムは無機物がベースになっているので、呪いや闇魔法の類も聞きにくいそうです。光魔法の攻撃手段も、例えそれがレーザーの様なものでも、体内の魔力濃度が濃いとかで、貫通できないみたいで。
となると、ぼくの出番になる訳で。
ヒョイと近寄って、ポンっと押すだけ。それだけで壁や床へとすっ飛んで行ってバラバラに砕ける様を見て、リーディアだけでなく、イプシロンやハーボにも責める様な眼差しを向けられてしまいましたが、これぼくのせいじゃ無いよね?
まあ、ロックゴーレムの落とす魔石を取り込んで行って、イプシロンやハーボは徐々に強化していけましたが、リーディアについては貢献度が微妙そうでした。
そして大きめなロックゴーレムのボスを倒して階層を降りると、現れたのはブロンズ・ゴーレム。青銅の巨躯がスムーズに動いて襲ってくる様は迫力があったし、イプシロンは文字通り歯が立たなくなったし、ハーボにしても使ってるガントレットの拳の部分がひしゃげてしまったので後ろに下がってもらいました。ハーボの体が人間にしては大きいと言っても、ブロンズ・ゴーレムはその1.5倍以上ありましたから、力押しも無理です。
リーディアの攻撃では、武器でも魔法でも擦り傷すらつかず。
ブロンズでこの強さなら、この先どうなるんだ?という感じでしたが、ぼくは突き押し一つでどんどんゴーレムを魔石化していき、時々落ちる銅のインゴットにリーディアは狂喜したものの、イプシロンとハーボは微妙な雰囲気で魔石を交互に吸収して強化に努めて、ボスにも立ち向かってみたのですが、蹴散らされた感じでした。ぼくのユニークスキルは、このダンジョンの壁や天井の頑丈さとも相待って、ゴーレム達との相性が良すぎるみたいですね。
それは次の階層のアイアン・ゴーレムでも、さらに下層へと降りていくにつれて登場したシルバー、ゴールド、クリスタルと続いても変わりませんでした。シルバーやゴールドなとと名前は付いていてもアイアンよりは随時硬くなってた様ですし、クリスタルに至っては魔法の完全防御や任意の反射機能まで付いてたようで、リーディアが危ない目に逢いかけたりもしました。(そういう危険性があるよと伝えて、弱めのを打ってもらったので浅い傷で済みました)
さて次は、オリハルコンや、アダマンタイトかなー、と期待しつつ、長い階段を降りていくと、これまでのボス部屋に比べても格段に大きな扉が待ち受けていました。
扉の重厚さや装飾の立派さなどから、より警戒が必要だなと感じたので、マッキー達にはぼくの影から離れてもらい、リーディアが今掛けられる最高の
さらには、万が一の保険として、まだ『共有』のスキルがあとしばらくは残っているポーにも控えておいてもらいました。
「イプシロンとハーボは、相手に潰されないように注意しつつ、リーディアのサポートお願いね。リーディアも隠れてるくらいでよろしく」
「分かりました。しゃしゃり出て狙われないように気をつけます」
重そうな扉(ぼくが歩きながら押せば重さは感じないので)を開いて、中に進むと、大部屋の中央にいた黒い人影、ゴーレムなのでしょうけど、これまでに見たどれとも違ってかなりスマートです。
で、見えたと思ったら、一瞬で目の前にまで来ていました。
部屋に足を踏み入れる瞬間に、『瞬足』を起動していなかったら危なかったでしょう。具体的には、頭をぱあんと破裂させられて、この黒いゴーレムはぼくの背後にいるリーディアもその防御結界ごと打ち砕いて血の霧にでも姿を変えさせていたでしょう。
ぼくは、目の前にまで伸ばされてきていた黒いゴーレムの拳と手首を掴むと、少し離れた奥の壁に向かって全力で放り投げました。
普通なら目に留まる筈の無い速度で、おそらく自身以上の硬度を持つ壁に叩きつけられたラスボスは、全身に亀裂を走らせた後に、ガラガラと崩壊していったので、その欠片がダンジョンに吸収される前にマッキー達に影空間に保管してもらいました。
ドロップアイテムは、鑑定メガネで見ると、アダマンタイト・ゴーレムのコアと表示されていました。ここのダンジョンマスターになる事で利用可能だけど、ダンジョンコアを別の場所に移動するとリセットされてしまうとの事でした。
ボス部屋の奥に通路の入り口が開いていたのでそちらに向かい、その先の小部屋にあったダンジョン・コアでマスターとしての登録を行い、ダンジョンの情報を一通り見たらボス部屋に戻り、影空間に収納しておいたアダマンタイトのかけらをゴーレム・コアの周囲に置いてもらってから、アダマンタイト・ゴーレムを起動してみました。
周囲にアダマンタイトが無ければ、ダンジョンとしてのリソースを使って補充して起動した様なのですが、今回は、先ほど戦闘開始前の姿を段々と取り戻して、ぼくの
アダマンタイト・ゴーレムは、鈍く光る双眸でぼくを見つめ、胸に手を当てながら訊いてきました。
「ご主人様。ご下命を」
「喋れるんだ。名前はある?」
「名付けして頂ければ、新たなマスターを得るまでの間は、その名を名乗ります」
さて。ここでぼくの名付けセンスが試される機会が久々に来たか。
黒、安直過ぎ。
ノワールとかも、同じ理由で却下。
影とかも、イプシロン達が嫌がりそうだからNG。
ふむ。黒くて硬くて速くて強そうで。
高さは2mくらいかな。細身で、マントとか被ってれば人に見えなくも無さそう。
黒騎士。武器とか持ってないけど、イメージ的には、それが近い。ので、前世で好きだった漫画の中から名前を拝借することに決めました。その姿にこのゴーレムの姿は似てないけどね。
「バッシュ。君の名前は、バッシュだ」
「バッシュ。承知しました。私の個体名として登録します」
「それで、バッシュはこのダンジョンから外に出れる?」
「問題ありません」
「外に出ると稼働時間に制限とかかかる?」
「ダンジョンマスターを通じて稼働に必要な魔力は伝送されます。待機状態であれば離れていても問題ありませんが、戦闘など激しい活動を連続して行うのであれば、24時間から48時間以内に補給することが望ましいです」
「特定の人達の護衛や警備を任せることは可能?」
「可能です。名前や姿、魔力などを事前に登録しておく必要はありますが」
なるほど、これは良い拾い物をした様です。
狭い室内の護衛や戦闘を考えると、もう少し小さくても良いかなとも思えたので、
「バッシュは、姿や装備を変える事は可能?背の高さとか」
「追加のアダマンタイトが無ければ、背丈の上限は今のサイズになりますが、装備品に体積を削れば、それだけ小さくなれます」
という事で、早速試してもらいました。ぼくの脳内イメージをなんとなく掴んでくれたのか、片手剣と黒盾という、もう本当にありがとうございますとしか言えなくなりました。
そのままワープで外に出ても良かったのですが、ちょっと試したいことがあったので、歩いて帰路を辿りました。
ボスたちはリポップしていなかったものの、雑魚敵はいたので、リーディアにバフをかけてもらったバッシュに倒していってもらいました。
そうして出口に戻るまでにリーディアのレベルはそこそこ上がったようで、エクスヒールという、これまでなら治せなかった様な傷でも治せる魔法を覚えられたようで何よりでした。
山腹の入り口は、誰かが間違っても入らないよう埋め戻しておいてもらいました。
「私はしばらく通いたいくらいなのですが。イルキハの命脈になるかも知れませんし」
「そうなるとしても、もう少し先の将来になるかな。今だと、ぼくかバッシュが同行してないと厳しいだろうし、食糧確保とかのが優先事項だしね。だからダンジョンに関しては、あまり情報を広めない様にね」
「すみません、既に家族には」
「そこくらいまでを限界にしておいて。大っぴらに通い始めるまでは」
という事でイルキハ王都に戻り、リーディアの護衛にバッシュを付けておいたら、今日の単独行動の開始です。(マッキー達は影の中に同行してもらってますが)
デモントのダンジョンも気になりますが、場所的に一番厄介そうな気もしたので、一旦後回しにして、残り7つの位置を確認していきます。
クラーケンの所以外にも、あと一個か二個は、食糧が確保できるダンジョンを探しておきたいのですよね。
北極にもある様なのですが、距離的な問題から、これも後回しにします。防寒装備も準備しておかないと厳しいかも知れませんし。
残る六つの中から、現在いる所か、緑の魔境と呼ばれていた地から近い二つをピックアップして、カーミーサーマーのーいーうーとーおーりー、と指差しして、緑の魔境から更に大きく西の方に外れた、別の大陸にあるらしいダンジョンを選びました。
サクッとワープしてから、およそ5000キロの旅です。
レベルも141まで上がってるので、この旅で150に近づける事でしょう。
141x141x2=時速39,762km。マッハ換算でも32、秒速11kmを超えました。ショートワープで一度に282km進めるので、普通に走る141kmと、超加速の155.7kmを合わせて、580km近く。
昨日の無茶な進行が可能になった訳だと、今更ながらに思ったりしました。
142x142x2=時速40,328km。超加速で159km。通常走行142kmとショートワープの284kmを合わせて、585km。
143x143x2=時速40,898km。超加速で162km。通常走行143kmとショートワープの286kmを合わせて、591km。
144x144x2=時速41,472km。超加速で165.8km。通常走行144kmとショートワープの288kmを合わせて、597.8km。
たった4時間で2353kmと少し。
145x145x2=時速42,050km。超加速14.5秒で169.3km。通常走行145kmとショートワープの290kmを合わせて、604.3km。
146x146x2=時速42,632km。超加速14.6秒で172.8km。通常走行146kmとショートワープの292kmを合わせて、610.8km。
147x147x2=時速43,218km。超加速14.7秒で176.4km。通常走行147kmとショートワープの294kmを合わせて、617.4km。
148x148x2=時速43,808km。超加速14.8秒で180km。通常走行148kmとショートワープの296kmを合わせて、624km。
149x149x2=時速44,402km。超加速14.9秒で183.7km。通常走行149kmとショートワープの298kmを合わせて、630.7km。
レベル149に上がった時点で、残りは210kmくらいだったので、通常走行でほぼ走り切ってから、超加速で目的地上空に達し、ほんのちょっと付け足しで走ったらレベルは150に上がりました!
イエイ!
と自分で自分を褒めてあげながら、目的地付近を上空から偵察。
ここはいわゆる、砂漠の地でした。つまり、外から見る限りは緑地など一切見えないので、食糧確保という意味では大外れかも知れませんが、中身を見てみないとなんとも言えません。
また何か拾い物があるかも知れないし。
そして入り口は砂に覆われた地表のかなり下にあったので、ここもまた誰かに普通に見つけられる事は無かったダンジョンでしょう。
そんな砂漠の地下に埋め込まれたダンジョンのテーマ?は、ズバリ、古代墳墓。罠とアンデッドがてんこ盛りな感じで、こここそリーディアやワルギリィさん他のレベル上げには向いてそうでした。
汚い感じのアンデッドに触りたくないぼくには逆に不向きですね。
でもまあ、さっき活躍できなかったイプシロンやハーボ、それからゼータやシータやハーボの手下達もどこからか(まあ影からだけど)湧いて出てきて、みんなで和気藹々と?賑やかにダンジョンを攻略していきました。
手分けして迷路を解き明かし、トラップにかかっても影に逃げ込み、幸い物理攻撃が効くアンデッドしか出てこなかったので、マッキー他にマッピングを頼みながら、サクサクと攻略を進め、下へ下へと降りていきました。
下層へと降りるごとに、罠も通路ごと落とし穴とか、部屋ごと砂に埋まるとか凶悪さを増して行ったのですが、影空間に逃げれるアンデッド達の理不尽さよ。まあ、アンデッドを排除するような罠の有無だけはぼくがサーチスキルで探して先に潰しておきましたが。
ぼく自身は床を踏まずに進んでいけるので、魔力感知型の罠でも無い限りかかりませんでしたし、何よりみんな先へと競って進みたがるので、まず罠にかかる機会が無かったです。戦闘なんてずっとお任せ。
先へ進むほど狭くなる構造、多分逆さピラミッドな感じでしたが、終盤になるとやはり物理攻撃が効かないアンデッドも出てきたので、ぼくはワープでイルキハへと戻り、リーディアとバッシュを連れて瞬足で戦列復帰しました。このコンボ、マジで距離を殺しにかかってますね!神様には感謝しかありません!
リーディアの神聖バフをかけられたアダマンタイトの剣は、それがゴーストやレイスやリッチだろうが問答無用に浄化していく危険物で、ハーボ達は悔しそうに影の中に退避せざるを得ませんでした。
リーディアの浄化魔法も、アンデッドにはマジ凶器で、近寄る事さえ出来ずに消されていきました。バッシュとのコンビは悪夢と言って良いでしょう。
そんな最強コンビを投入したパワープレイを展開した甲斐あって、ボスラッシュな最下層の辺りも最速で駆け抜け。
ただ、最後のボス、スフィンクスらしき魔物は知性を持ってそうでいきなりは襲いかかってこなかったので、対話を試みてみました。
「侵入者よ。何を求めてここにやってきたのだ?」
「何って、どんなダンジョンなのか確かめに来て、レベル上げに向いてそうだったから、経験値になるのかな?」
「ここは構造物としては確かにダンジョンではあるが、この地で亡くなった魂を休ませる鎮魂の地でもある」
「という事は、モンスターはリポップしない?」
「まだこの世界に執着し続ける者は再度姿を現すだろうが、無限ではない。倒される度にこの世界への縁を減じて、いずれ現れなくなるだろう」
「ふーん。じゃあ、それはそれでいいや。でも、あなたはそう言ったのとは違う存在ですよね?」
「そうだな。私はここの管理人に近い存在だ」
「でも、ダンジョンマスターではないし、倒せばいずれリポップしますよね?」
「確かにそうだが、それはこのダンジョンと呼べるかも知れない施設の寿命を縮めてしまうだろうな」
「それだけリソースを割かれてる存在って事ですか。ふむ。経験値は他所でも手に入るでしょうし、一旦後回しにできます。
スフィンクスは物知りだという設定な場合が多いですから、ダメ元で聞いてみましょうか。あなたはどんなことを知っていて、どんなことなら出来ますか?」
「質問が漠然とし過ぎている。先ずそちらがどんな答えを望んでいるかを知れれば、望まれている問いもまた明らかになるだろう」
それもそうかと納得して、今一番困っている問題について質問してみました。食糧不足とその原因となっている土地枯れへの対処策です。あ、一番と二番になってしまいましたが、スフィンクスさんは気にしてない様なのでOKでしょう。
「土地枯れか。この世界を
「でしょうね。まあそちらは予想通りではあるので、もう一つの方は?」
「普通の土地は多かれ少なかれ神気の現象の影響を受けているのであれば、普通でない土地で食料を得ていくしかなかろう。それですら無限では有り得ぬが、無いよりはマシ程度には得られるであろう」
「それって、ダンジョンを指しているのなら、どこにどんなのがあるか教えてもらえますか?時短にもなるだろうし」
そうして教えてもらった中には、海底にあるクラーケンのも、イルキハの近くにあるのも含まれてましたが、デモントにあるのは知られてませんでした。つまりそれだけ新しいのかも知れませんね。
「大量の食料を継続的にたくさん得られそうなのは、あと二つくらいですか。結構厳しいかな」
ドースデンの人口がどれくらいかにもよりますが、ダンジョンが五年や十年でリソースを使い切ってしまうような存在なら、それよりもっと早くに消えてしまうことも考えておかないといけません。
神様の気が向かなければ、新しいダンジョンも生まれないでしょうし。
「ふむ、情報ありがとうございました。食料を得られそうなダンジョンに向かってみようと思いますが、最後にもう一つ聞いても?」
「答えるかは質問によるが」
「ダンジョンマスターの登録も済ませておきたいので、ダンジョン・コアのある小部屋へ通じる道へ入り口を開いてもらえませんか?」
「・・・・・」
「開けてくれないなら、闘っちゃおうかなー。どうせあと数回くらいは余裕で蘇れるでしょうし」
「私は、弱くはないぞ」
まあ、時間稼ぎなやり取りで、なんとなく、察せてました。
「たぶん、それは本当なのでしょうね。でも、ぼくらは負けないでしょう。だから、次来るでの間に、決めておいて下さい。ダンジョンマスターをぼくらの前に出すか、部屋を空にしておくか」
「・・・わかった」
帰り道も経験値を稼ぎながら帰ろうかとも思いましたが、余計なことをせずに帰って欲しかったらしく、地上への転移魔法陣を用意してくれたので、それに乗ってダンジョンから退去しました。
瞬足とワープを再度使う為に外を走って条件をクリアしたら、リーディア達をイルキハに送り届けておきました。
レベル150で新たに得たサブスキルも試しておきたかったし、残るダンジョンをどの順番で巡っていくかも大きな違いをもたらしそうでした。イルキハのダンジョンは、食糧難にも土地枯れにも役立たずでしたが、バッシュをゲットできただけで大当たりでしたし。
そういうのが、他のダンジョンにも眠ってておかしくは無いので、一通り全部巡っておくのは既定事項です。スフィンクスさんのところには、ワルギリィさん達も連れて再訪しておきたいですしね。
というわけで、残る二つのダンジョンの内、直線距離で近い方へとぼくは向かったのでした。
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