ランニング30:レベル90→100
レベル90で得たサブスキルは、自己強化系ではなく、支援系とも言えるのでしょうけど、使い所を選びそうでした。レベル70の時に得たサブスキルは言わば操作系だったのだけど、その反対というか。
まあ、その内使う機会もあるだろうから、使い方とかを想像しながら、ひたすらに走り続けました。
お日様が空の頂点に向けて、ゆるやかに昇っていってる筈が、どれだけ頑張っても追い抜かれました。(瞬足を使えばまた別だけど、あれは本当にズルしてる感じなのでノーカンで)
空を走っていると、星々の運行とかにも関心が湧きます。地球の自転速度も、確か、ものすごく速い筈だったし。この星と比べてどうなのか、今の自分には分かりませんが、ショートカットコンボを決めても、先行し始めたお日様に追いつける様子が欠片も無い事から、やっぱりすごく速い、というのは分かります。
96を過ぎ、97になって、90以降だけで1302km以上を移動した頃、時折警戒に使ってるサーチに反応がありました。それも複数。進行方向と速度からすると、斜めにすれ違うか、もしくは正面からぶつかる事になりそうです。
ワールドマップ上に表示された距離からすると、向こうの飛行速度のが速いらしく、カーソルがぐんぐんと近付いてきてましたが、遭遇までにはまだ1、2時間ほどはかかりそうです。
面倒そうな相手なら避ける事も考えておいた方が良さそうです。怖い物見たさもあったりはしますが、互いの姿が見えてから見えなくなるまでは、おそらくほんの数分とかかな?超加速とか使えば一瞬だろうし。
レベル98。相手との距離は半分ほどに縮まりました。どうしてだか、相手は少し進路を変えて、こちらの正面から向かってきてるみたいです。こっちが進路を変えても追ってこられる可能性があるので、正面から突っ切る事にしました。
レベル99に上がった頃には、ワールドマップ上の表示ではすぐ近くだったので、レベルアップ直後のショートワープと超加速はまだ控えておきました。
「みんな、備えておいて」
影の中からは、マッキー達の同意の声が聞こえてきました。
レベル90で得たサブスキルを使っておくか悩みましたが、敵の姿も能力もまだ分からない段階では尚早かなと控えておきました。
そして走る事数分。
正面の空に、鳥の群が見えました。十数羽くらい、かな?
高度は海上千メートルくらい。向こうは何かに追われているようで、ぼくの倍くらいの速度で飛んでました。バラバラに散りながら、でもぼくの方に向かってきます。
意図は不明ながら、点でしかなかった相手の姿がだんだんと見えてきて、それが大きなツバメっぽい存在であることがわかりました。体だけでも人の何倍かは大きく、頭や喉元や羽の付け根は黄金色、羽とか体全体は群青色っていうのかな?尾羽の先は二股に分かれてそうでした。
彼らの姿がくっきりと見えるようになって初めて、彼らを追い立ててる何者かの姿も見えました。雲の様な細長い体を持つ、竜。和風ファンタジーとかに出てくる竜その物の姿とは違いますが、全長が軽く百メートル以上はありそうです。
「あれは、ヤバそうだね。いったん、駆け抜けられるか試してみよう」
海燕?さん達は、たぶん、ぼくに竜の標的をなすり付けたかったのでしょう。ぼくに助けを求めるように飛んできてましたが、ごめんなさい。
いつでも何度死んでも良い時ならともかく、今はちょっと都合が悪いんです。あの甘々な三人との時を何度も繰り返さないといけないとか、会話パートをスキップするような心境にもなりたくないし。
超加速起動。とりあえず1秒で、5.4kmほど進みました。時速約19600km。マッハ換算で16近く。衝撃波とかで海燕さん達がどうなったかは不明ですが、無事でいてくれる事を、大して望みませんでした。厄介者をなすりつけに来てましたしね。
そのまま本来の進行方向へと進みましたが、サーチスキルを使うと、やっぱりさっきのが追ってきてますね。暇人なのか?いや暇竜か。
音速は超えられるのか、数秒で追いつかれそうです。
さっきの海燕さん達も遊ばれてる感じだったけど、猫がネズミをいたぶる感じでもあったから、ほんわかコミュニケーションが出来そうかは望み薄です。
ショートワープは最後の命綱、超加速の残り時間もそこへの布石でまだ取っておく事にして、これまでに与えられてまだ使ってなかったサブスキルを使うチャンスとして捉えてみる事にしました。
チラチラと背後を振り返りつつ、相手の姿が見えたら、正面から向き合う形で、歩いて行きました。正面からなら押し切れても、背後からだと影響受けちゃったりするからね。
向こうはこっちが観念したとでも思ったのでしょう。
こちらの正面ギリギリまで接近して止まりました。本来なら、衝撃波とかで酷い事になったのかも知れませんが、全く影響受けないのはさすが神様のユニークスキルです!感謝!
向こうもそれが不思議だったようで、話しかけてきました。
「お主、何者だ?人のように見えるが、なぜ空を歩き、駆けておる?それも、我よりもずっと速く!何故そんな事が出来る?許される?!大空は我の領域ぞ!」
「初めまして。なんでそんな事が出来るかっていうと、神様からそういうユニークスキルをもらったから。それで、何のご用ですか?」
竜のお顔は、まあ和風の竜といえばそれが近いのだけど、全体がふわふわしてるせいか、不思議と怖みは感じませんでした。
「大空ははるか昔から我の領域だったのだ。それを断り無く進み、さらに我よりも速くなど許される筈も無い!我こそが、最速なのだ!」
ヤンキーみたいだな、というのが正直な感想でしたが、こんなのでも何かの役には立ちそうな感じがしました。
峠の走り屋とかとは違うでしょうけど、こういう類には勝負をふっかけるのがテンプレだとラノベとかから学んでいるので実行します。
「そしたらさ、勝負しようよ?」
「勝負だと?まさか、さっきまでのが我の全速だと侮ってはいまいな?」
「そっちも、ぼくの全速を見てないからおあいこだよ。それで、ゴールくらいはぼくが決めてもいいよね?」
「ふん、空の果てまででも我が負ける筈も無い。好きに決めるが良い」
「じゃあ、ここから一直線に海の底まで。出来るよね?」
「えっ?」
「出来るよね?」
「我は大空の支配者であって、大海にはまた別の」
「あー、出来ないんだー。威張ってるくせにー、自分の縄張りで吠えてる子犬ちゃんなんだー。ごめんねー。出来ないことを振っちゃってー。たかだか、ここから海底まで行ってまた戻ってくる程度も出来ないなんて想像もしなかったわー。悪い悪いー」
ぐぬぬぬぬ、という擬音がピッタリ来る表情を浮かべた竜さんは、ぶち切れた様に叫びました。
「良かろう!その勝負を受けてやる。ここから大海の底にまで達し、またここまで戻ってくる」
「勝者は敗者に何でも言うことを聞かせられる。それでいい?」
「ああ、構わぬ。我が勝った時には、その生意気な顔ごと全身を文字通り千の肉片に千切って塵にしてやろう」
「じゃあ、そっちも、ぼくが勝ったらずっと手下として従ってね」
「良かろう。そんな奇跡が起きればな!」
「じゃあ、どうやってスタートするかだけど」
ダグラスにマッキー乗せて、なるたけ公平になるような合図出してもらおうか考えてもらってたけど、この竜がヤンキー気質なのを忘れてました。
「フハハハハ、油断したな!勝ちはもらった!」
とか言って、海面に向かって飛んで行きそうになった、のですが、その速度はノロノロで、ぼくが歩いてるのと同じ速度です。
「な、何をしおった?卑怯だぞ!」
「抜け駆けしようとした人が、いや竜か、何言ってるの」
レベル70で得た操作系のサブスキル『調整』。
その効果は、視野内にいる自分以外の誰かの速度を自在に変更できるというものです。レベル数xメートルの範囲内にいてもらう必要はありますが、それ以外の制限はありません。
まあこれもチートスキルですね。神様万歳!
ぼくは戸惑ってる竜に歩み寄り、その体にペタペタと触りました。
「へえ、実体はあるんだね。じゃあ掴めるってことで」
「な、勝手に我に触れるな!我は崇高なる大空の覇者ぞ!」
「その大空の覇者さんも、これからぼくの手下になるって事で、覚悟しておいてね」
喚き続けるのを無視して、その角の一本を掴んだら、海面に向かって超加速を起動。高度千メートル近くから、一気に海面を突き抜けました。
レベル80の水中走行は思った通り、パッシブの常時起動なので、着水時の衝撃なんかもまるで無視できます。水中は大変なことになりそうだけど、まあそこはご勘弁を。
この竜はそこら辺どうするつもりだったんだろ?魔力を放出して自分への衝撃を緩和とか出来るのかな?魔法があるファンタジー世界だからなー。
とか考えながら海中を突き進んでいくと、程なく海底が見えてきたので、竜から一旦手を離して、海底にタッチ。水圧とかで竜さんがエラい事になってそうですが無視無視。
今度はその角ではなく長い
「ぼくの勝ちだよ」
「ぐぬぬぬ、さっきのは何なのだ!?思うように体を動かせなかった」
「あれはぼくのサブスキルの一つだけど、ぼくが誰かというのと併せて追々説明してあげるよ」
「我はまだ納得しておらぬ!」
「大空の覇者さんなのに、約束も守れないんだ?」
「くっ・・・」
コロさんでは無いよね。でもそれに近いこと言うけど。
「どうしてもって言うなら、死んでもらって、アンデッドとして眷属になってもらうけど?」
「はっ!我をどう殺すと言うのだ?ひ弱な人間如きが!」
「さっきみたく、大海の底に置き去りにすれば死ぬよね?ぼくは平気だったけど、そっちは平気じゃなかったみたいだけど?」
またしばらく唸ってた竜さんは、身を翻して逃げようとしましたが、余裕で回り込んで、顔の正面を押さえつけて言いました。
「選んで。死ぬのと、死なずに従うのと、どっちがいいの?」
「くぅ、しかし我には大空の支配という役割が」
「普段は好きにしてていいよ。というか普段は何してるの?ただ方々をほっつき歩いてというか飛び回って、好き勝手に暴れてるだけじゃないの?」
「そ、そんな事は・・・」
「あるんだね。で、最後の問いかけになるよ。ぼくは急いでるからね。従う?死ぬ?どっち?」
「・・・汝が天命を使い尽くして死ぬまでは従おう。でも、それ以上はダメだ」
「ぼくを殺そうとしたりしたらダメだからね。そしたら、アンデッドにして永遠に隷従させるから」
「分かった。では、契約だ。汝は我を支配する。我は汝の寿命が尽きるまで従おう。汝の不利益になるようなこともしない。それでどうか?」
死んでチェックポイントに戻ったら契約も白紙に戻るというか、時間ごと巻き戻るから、必要ならまた同じ手順で契約し直せばいっか。
「いいよ。じゃあ、それで契約だ」
「良かろう。我主人となる者の名は?」
「カケル」
「良かろう。カケルよ。空竜ル・ホラィは今より其方の配下となる」
すると、ル・ホラィの額に複雑な紋章が浮かんだと思ったら、同じ紋章が拳の方にも浮かんで消えていきました。
某有名英霊系アニメとかゲームの令⚪︎みたいのが近いけど、消えていってしまってるので少し違います。ちょっと残念。
「ええと、これからぼくはまた旅を続けるけど、普段は好きにしてていいよ。呼びたい時にどうすればいいかだけ教えて」
「その拳の契約紋に向かって呼び掛けよ。さすれば我は汝の声を聞き、万里の彼方にいても駆けつけるであろう」
おお、そのまんま即時召喚みたいな!?
「まあ、しかししばらくは同行しよう。そちらの事情とやらをまだ聞かせてもらっていないからな」
「構わないよ。しばらくは普通に走るから、遅いと感じても少し我慢しててね」
まあそんな訳で、空竜をゲットだぜ! これから色々役に立ってくれそう!
彼?の角を掴んでショートワープしたら、自分のこれまでの経緯とか、これから先やろうとしてる事とかを語りつつ、レベル100までに必要な距離を走り、超加速の残りで締め括ったら、レベル100に到達しました!
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