ランニング31:レベル100で起きた変化とか
レベル100になるまではル・ホラィとお喋りしてましたが、しばらくは静かにしててもらうか、放っておいてもらうよう頼みました。
「なぜだ?」
「たぶんいろんな更新が入る筈だからね。先ずはその確認をしないと」
地味に大きな更新点は、上限高度がこれまでのレベル数x10mではなく、100mになった点でした。
さらにその更新に合わせるように、ショートワープで一度に移動できる距離が、レベル数と同じだったのが、レベル数x2kmになったのが大きいです。
しかし、もっと大きな変更が入ってました。
ステータス画面に新設されたお知らせというコーナーに大文字で書かれていたのは、下記内容。
「レベル100以降は、超加速で移動した距離は、レベルアップに必要な総走行距離に含めません。
理由としては、レベル135以降、超加速で移動可能な距離が、レベル数を上回ってしまうからです。」
・・・まあ、確かに、レベル100に至る途中まででさえ、特に終盤は半分以上を超加速で稼いでたし、だからレベルが上がるほどに次のレベルまでの所要時間が短くなっていくのはどうするんだろう?と思ってたので、これが処置というか、今までが温情だったのでしょう。
レベルの上がる速度は鈍化というか遅くなるでしょうけど、一時間走ってれば上がるのですから、上がる早さは元に戻ったと言えます。ショートワープで一度に移動できる距離は倍になったので、一時間辺りで移動可能な距離は、通常速度100km+超加速55km+ショートワープ200kmで、355km。
これが101km+57.2km+202kmで360.2kmとか増えていく訳で、進める距離はむしろ増えてます。文句言えないですね。
三時間で1000km以上を進めるようになったのですから。
レベルが10上がるごとに与えられていたサブスキルが、今後25ごとになるとお知らせに書かれていたとしても。
そして、レベル100で与えられたサブスキルは、やっぱり、ワープでした。
ワープ:今までに行った事のある場所に転移可能。
一度使うと、日を跨ぐか、レベルアップするか、死亡するか、チェックポイントを通過するかしないと、再度使用可能にならないのは、制限としてはおそらく妥当なのでしょう。
一番簡単そうなのは、日付を跨ぐ数時間前にワープして戻って休み、日付跨いだらワープ元地点に戻って走り始めるとか。レベルアップすればまた使えるものの、1時間以上走らないと再利用可能にならないのは、面倒と言えば面倒ですね。まあ、実質的にクールタイムが一時間て感じですか。
「そろそろ移動しないのか?」
焦れてきたロ・ホラィが声をかけてきたので、その角を掴んで言いました。
「お待たせ。大体把握し終わったから、移動再開するよ。1万キロの旅路も、もう四割ほどは消化したから、残り5800キロ、一気に行くよ!」
まずは高度上限に達するように超加速。時速20,000kmで、一秒の使用でも5.5km移動します。今までは高度1000mにいたのが、10000mの上空。星の見え方がまるで違ってきますね!
・・・って、あれ?
もしかしなくても、レベル50のサブスキル使えば、一気に目的地まで行けちゃうんじゃね?、と今更ながらに気付いてしまったりしましたが、レベルはぼくの生命線でもあるので、上げられる時に一気に上げておくべきです。
そう自分を言い聞かせ、納得させて、目的地の方角へ、200km先へとショートワープ!
そこから通常運行速度100kmで走り始めると、ル・ホラィが行く先に見えてきた大陸を見て言いました。
「主よ。あの大陸に向かっているのか?」
「うん。そうだよ?何か知ってるの?」
「地表に近付くと、我でも危ない土地、緑の魔境だぞ?」
「大空の支配者でも危ない目に遭うとか相当だね。何か危ない生き物がたくさんいるの?」
「そうだな。人なら間違っても辿り着けないだろうが、辿り着いたところで即座に殺してくるような動植物に満ちている」
「あそこには食べ物を探しに行くつもりなんだけど?」
「止めておけ。あそこの支配者は、我に並び立つ者。地と緑の支配者。己の支配領域から何かを奪われることを何よりも嫌う」
「つまり、それを狙って、何度もお仕置きされた事が有ると」
「失敬な。最後にはいつも逃げ切ったぞ」
「お前の尊厳の為に、その最後に逃げ切るまでに何があったかは聞かないでおくよ」
レベル100を超えたことで、移動そのものはさらに加速。高度1万メートルとか、まあ普通の生き物はやってこないしね。
三時間で千キロ以上というのは非常にざっくりとした計算で。
通常移動+超加速+ショートワープ=1時間毎の総移動距離
100km+55km+200km=355km
101km+57.2km+202km=360.2km
102km+59.0km+204km=365.0km
合わせて1080.7km。
以下、レベル105までに約2204km。
レベル108までに約3371km。
レベル111までに約4583km。
レベル114までに約5840km。
1万キロの長旅もついにゴールです!
終盤は緩やかに高度を落として行き、緑の大陸のすぐ外側にある小島を上空から偵察。特にヤバそうな魔物とかがいなさそうなのを確認したら、イプシロン達に標識として島の物陰に潜んで待ってくれるようお願いしたら、ル・ホラィにも言い聞かせておきました。
「いったん、ここでワープして本拠地みたいな場所に戻ってくるから、上空で大人しく待っててね。くれぐれも、昔の知り合いに絡みに行ったり、怒らせるような事とかしないようにね」
「我は子供では無いぞ」
「心配じゃ無かったらこんな事言ってないよ。主として命じておくよ。ぼくが戻るまで、この大陸の上空には侵入せず、内側に何かしらちょっかいは出さない事。いいね?」
「・・・わかった」
令⚪︎をもって命じる、みたいなことをやりたかったんだけどね。拳に浮かんできてないので仕方ないね。
言葉でどこまで縛れるのか分からなかったので、とっとと初ワープを試みる事にしました。起動しようとすると、ワールドマップからも選べるのですが、誰かのすぐ傍って感じでも選べるようです。
おおっ!しかも視野内に展開されるワールドマップには、日中時間帯かどうかとか、世界時刻表みたいのも実装されてました!こっちは昼過ぎに海燕さんとかロ・ホラィとかに遭遇した後は14時間ほど走り続けたので、思いっ切り夜中です。というか朝方?
世界時計?的に、キゥオラとの時差は7時間くらい。まだ向こうは夕食後くらいの時間帯なので、マッキーにポーラ達が起きてるか確認してもらうと、全員起きてるとの事でした。
「マッキー、ポーラに、あっちで何か異変とか、取り返しがつかない何かが起きてないか聞いてみて」
「かしこまりました。少々お待ちを・・・」
姿を消して、また戻ってくると、マッキーは言いました。
「キゥオラ、マーシナ、キゥオラに関して言えば異常無し。ただし、カローザとミル・キハが衝突し始めたという情報が入ってるそうです」
「ドースデンの方は?」
「そちらは特に新しい情報は入ってないそうです」
「そう。そしたら。もうしばらくしたらそっちに戻るから、三人ともに起きててもらって。影を通じてやり取りできるように」
「承知しました・・・・。伝えました」
「じゃ、イプシロン、ダグラス、ちょっとここで留守番よろしくね。もしもル・ホラィが言いつけ聞かないようなら懲らしめてあげてね」
「ヴァウワウ!」「グルルゥッ!」
「おい、その犬ころと、羽付きとかげ如きに我を止められる筈が」
「両方とも、影に潜めるの忘れた?絶対に振り払えないんだよ?どれだけ速く飛んでも置き去りに出来ないんだよ?」
イプシロンとダグラスが実際に影に身を沈め、影からル・ホラィの体を突ついたり引っ掻いたりして、その厄介さをようやく思い知ったようです。
これでしばらくは大人しくしてくれてたらいいのですが。
「じゃ、なるべく早く戻ってくるから、ここはよろしくね。マッキー、行くよ」
マッキーがぼくの影に沈んで行ったのを確認したら、ワープを起動しました。キゥオラの王城にではなく、ラグランデの上空へ。
高度も選べたので、レベル114で限界高度の、地上11400m。
そこからサーチでドースデンの首都の方角と距離を確かめたら、およそ東北東の方角に約1200kmの距離でした。まあ、すぐかな。
レベル50のサブスキル、『瞬足』を起動。今の高度から見える約400km先へと、三歩で着いてしまいました。
残りはまだ111秒もあったので、少しずつ高度を一気に落とし、約250mの高度から見ても、軍隊が大集結してる様子はありませんでした。
ここからカローザとミル・キハ国境の紛争の様子でも見てから、キゥオラの方へと戻ろうと思ったけど、思いついてしまいました。
「サーチ。ドースデンの侵攻部隊」
ワールドマップ上に、三箇所。主なのだけで。
北、中央、南方面軍みたいな感じで分かれてて、それぞれの距離は400km以上は離れてそうです。面倒そうですが、みんな見ておきましょうか。
北の方から。これはミル・キハを北の方から攻めようとしてるのかな。南でカローザと対峙してるのなら、挟撃態勢に持ち込めそうです。
中央のは、カローザ方面へ。これもカローザに二正面作戦を強いる為でしょう。
そして最後に南のは、ラグランデ方面へと向かっていて、意外にもこれが一番大きな部隊でした。マーシナ全土の占領でも狙っているのかな?
という事で、見るべきものは見たと思うので、神様に呼びかけてみました。
「こんな感じの状況ですが、チェックポイント、設定して良さげでしょうか?」
答えは、周囲が真っ暗ないつもの空間に転移する事で、ありました。白球電灯みたいな神様の姿もいつも通りでした。
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