ランニング24:第六チェックポイントと、土地枯れの原因とか
「さて。ラグランデや東岸地域を見て回った感想は、それぞれ聞かせてもらったよ。君たちからは、私に何を聞きたいかな?」
「農作物の育ちが悪くなったというか、土地が枯れていってしまう原因って、やっぱり」
「カケルにはわかってしまうよね。そうだよ」
「どういうことなの、カケル?」
「神様は、この世界に愛想を尽かしていた。ってことは、星の営みとか管理とかだって、もう続ける必要が無くなってしまってたって事じゃないかな。だから何を育てても育ちが悪くなったり、土地そのものが枯れてしまっていったんじゃないかな」
「だいたい合ってるよ。でもだから、そちらの方は、しばらくはどうにもならないと思う。カケル次第なところもあるけど」
「無茶ぶりありがとうございます、と言っておきます。
で、ぼくもテキトーに言い散らかしてましたけど、そんな都合が良い食糧が、この世界というか星のどこかにあったりするんですか?」
「まあ、一箇所でというのは厳しそうだけどね。カケルにも想像してた何かがあったんじゃないかな」
「ラノベというか史実でそういう例がありましたから。
それで一つお願いがあるんですが」
「カケルの想像してるワールドマップ的なものなら、レベル60に上がって得たサブスキルを起動した時には任意で表示できるようにしておくよ。拡大縮小なんかも思いのままだ」
「大変助かります。ついでで、一番近い目的地まで、どれくらいの距離になるかも教えてもらえると」
「だいたい10,000kmくらいかな」
「ははっ、桁がぶち上がりましたね。まあ、走って走れないことはないから、何とかなるでしょう!うん」
「そんな前向きなカケルにアドバイスをしておくよ」
「ぜひ、お願いします」
「君のユニークスキルもまだまだ成長過程にあるから、一万キロを移動するとなると、それなりの日数がかかるだろう。だから、こちらをしばらく離れておいても平気な様に、出発前に根回しを済ませておく事が一つ」
「わかりました。他には、何があるんでしょうか」
「しばらく、チェックポイントの更新をしないことだ。それだけ、リトライが面倒になるかもだけど、リトライして済むなら、そちらの方が良いだろう?総走行距離なんかは巻き戻さないからさ」
「わかりました。でも、そしたら次のチェックポイントをどうするかは、合図とかをもらえるんですか?」
「君の知るRPGとかのセーブポイントを更新しても大丈夫と自信が持てたら、私を呼ぶといい。そうしたらまたこの空間に呼ぶから」
「ありがとうございます!」
任意のセーブポイント設定は、確かに大きい。
それに根回しについても、みんなを頼ればある程度漏れなく出来るだろうし。アガラさんもいるしね。
「ああ。アガラには余り頼りきらない様にね。試されているのは、カケル、君なんだ。アガラではない」
「わかりました。頑張ってみます!」
「うんうん。その調子で諦めないで、私を楽しませておくれ」
そうして、ぼくとポーラは元の空間と時間に戻りました。
時間としては連続してるので、イドルは、ぼくとポーラの様子がついさっきまでと何か違うことに目敏く気付きました。
「もしかして、神様のところに行っていたの?」
「行っていたというか、呼ばれたというか」
「そうね。それで、カケルが話してた様な食糧がこの世界というか星のどこかにあるから、カケルはそれを探しに行く事になったわ。出発前にあちこちに色々根回ししてからね」
「それは、かなり遠い場所なのでは?」
「普通に船とか陸路で向かうとしたら、気が遠くなるレベルだね。一番近いのでも、一万キロは離れてるってさ」
「一万キロって・・・」
今更ですが、こちらの世界と元の世界の単位とかは当然違うものの、神様による自動翻訳で、理解に齟齬が生まれないよう自動調整されてるみたいです。
「一万キロをただ走るだけなら、今のレベル60だとそれなりにかかるかも知れないけど、超加速もショートワープもあるからね。そんなにかからない気がするんだよね。ちょっと紙と書くもの貸して」
計算そのものは神様補助のほぼ暗算で出来てしまうので、その結果をメモしていきます。
まずは超加速から。
レベルxレベルx2の速度で、レベルの数の1/10秒走れます。レベル60なら、60x60x2=7200。時速7200kmで6.0秒だと12km走れる計算になります。
同様に、61から69と計算しメモしていき、70の時なら7秒で約19km、80の時なら8秒で約28.4km、90の時なら約40.5km、100の時なら55.5kmで、60−100レベルの超加速での移動距離を合わせるだけで、1242kmほどになりました。全体の一割と少しですね。
次に、ショートワープです。
レベルx10mの上限の高さから、見える範囲の、レベル数と同じ距離までを一瞬で移動できます。このやり方だと走行距離にカウントされないのが痛いですが、今回の様に長距離を急ぐ場合には助かります。
レベル60なら600mの高さから見えるのは・・・
「マジか。92.7km先までってやばくない?」
そう呟いてしまったほどです。一瞬で100km近く転移できるなんて強スキルもいいとこですね。やっぱり神様に感謝です!
レベルが上がる毎に限界高度も上がっていきますから、より遠くが見えて転移していける様になる訳で、レベル70の時に100km先、80の時で107km、90の時で113km、100の時で119kmですよ。
というかですね。そこまで上がらなくても、ショートワープは一時間に一回使えるんです。一日で24回ですね。
まあ超加速を含めると、レベルアップに必要な走行距離は実質一時間未満で済んでしまうのですが、計算、というか考えるのを単純化する為に、一時間ごとレベルアップする度にショートワープを使ったとして、その距離を足すだけで、レベル100までだと4378kmほど。全体の4割超ですね!
超加速のと合わせると5.5割ほど。
レベル60から100までは40ほど上げる必要がありますが、その40時間未満で着いてしまいそうです。
「え、嘘、1万キロ踏破するのに二日かからない、かも」
「・・・・・」
ぼくと一緒に音速超えたりショートワープを何度も体験してるポーラとイドルでさえ、何言ってんだこいつ、的な眼差しを向けてきました。
そこでぼくは、こちらの文字と数字で書き直したメモを二人の前に差し出しました。二人とも目が点になって言葉を失いました。
「レベル100になった時の新しいサブスキルが、たぶんとても便利な物になると思うんだ。だから、レベルは100まで上げ切ると思うけど、日数にしては、往復を考えたとしても、たいした感じにならないと思う。途中で何らかの妨害とか事故とかでもない限りね。
まあ何かあってもここからリトライになるだけで、その時はもっと早くに到着できるようになるだけだから、心配無いよ」
固まっていた二人のうち、イドルの方が先に再起動がかかって、ぼくの手を取って言いました。
「死んでもやり直せる、というのが事実だったとしても、慣れ切ってしまって良い筈がありません。お手伝いできず申し訳ありませんが、道中お気を付けて」
「ありがとう。イドルには、こちらの根回しとかを進めてもらっておいてもらえると助かるかな。マシーナとカローザの国境付近の状態も先に確かめておいた方がいいかも知れないしね。1万キロ先へと出発する前に、ポーラもキゥオラに送っておこうか?」
「私も、あなたと一緒に行きたいと思っているのだけど」
「ポーラは何かあった時のためにこっちに残ってて。眷属を通じて、離れたところにいる誰かともやり取りできるし、いざとなれば、眷属がいる場所には移動できるんでしょ?」
「まあ、そうね。でも、カケルも眷」
「ポーラ!」
突然イドルがポーラを大声で叱りつけたのでびっくりしました。
その目付きはいつもと違って、優しさや甘さのカケラもありません。
「じょ、冗談、だよ」
「冗談でも口にしてはいけない事はあります。今後二度と繰り返さないように。いいわね?」
「・・・・はい」
「いいわね?」
「はい」
なぜか二度繰り返して確認を取ったし。
イドルは皺を寄せた眉間に指先を当てて深い溜息を吐いてました。
なんか触れたらいけない雰囲気だったので、突っ込まずに話題転換というか、話を戻しました。
「えーと、ぼくにはマッキーと、後はワイバーンの一頭でも付けておいてくれればいいよ。何かあって走れなくなっても、ワイバーンの背で休んだり、マッキーに治療したりしてもらえるだろうし」
「わかった。カケルに付けておくのは、他のより強化しておくから」
「ええと、強化もそこそこでいいからね?戦うのも移動するのも基本的に自分で出来るから」
「出番が来るとしたら、カケルが自分でどうにか出来なくなった時だけでしょう?だとしたら、出来るだけ強化しておく」
「わかった。それはじゃあお任せするとして、根回し、どうしようか?」
「食糧難を当面の間だけでも解決する兆しがあるかも、って情報は伝えて良いものかどうか、悩ましいですわね」
「そうね。だけど、ガルソナの略奪部隊が全滅したのは、マーシナの対カローザの前線やキゥオラとかには伝えておいた方が良くない?」
「マーシナは、特にそうですね。私が救出されたのに、カローザに救出の為の軍勢を差し向けてそうですし」
「ガルソナから侵入した傭兵部隊はまさにその後背を突く感じになってたからね。そっちを先に伝えようか」
二人も頷いたので、地理的にも近いだろう、カローザ国境近くにある城塞と、キゥオラと、それからマーシナの王都を巡ってから、1万キロ踏破の旅に出発することになりました。
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