無課金最強の男〜膨大なプレイ時間とプレイヤースキルで廃課金のPKどもを徹底的にぶっ叩く〜
yatacrow
無課金最強の男〜膨大なプレイ時間とプレイヤースキルで廃課金のPKどもを徹底的にぶっ叩く〜
VRMMOが世の中に配信されて数十年。
各社、とんでもない開発費用の回収を巡り、どうやってプレイヤーから金を巻き上げようかと頭を捻る課金乱世の真っ只中。
課金者優遇、廃課金者は神様です。
お靴を舐めますペロペロペロ。
無理のない課金はまあいいとして、課金を一切しないモニター系プレイヤーは廃課金者様方の優越感を満足させるためだけに存在するがいい。
そんな運営方針が当たり前の昨今、無課金者の遊び方は、配信すぐの序盤だけ必死でレベル上げをして、微課金者たちに時間で勝つ! というものが主流となっていた。
さて、運営会社が少ないパイを取り合うゲーム業界だが、やはり最初のブルーオーシャンで手を付けた企業というのはとても強い。
VRMMOのパイオニアとして、この数十年の間、こまめにアップデートを繰り返し、無課金者を生かさず殺さず遊ばせつつも、廃課金者様方に媚びへつらって尻尾をフリフリする運営〝アーカシエル〟。
〝なりたい自分になれる。なんでも出来る。オールフリーなVRMMO〟というキャッチフレーズで売り出した『AFF――オールフリーファンタジー』はいまだに根強い人気があり、新規プレイヤーもぼちぼち確保しているやり手の企業である。
そんな企業のAFF運営には、一つの大きな悩みがあった。
配信開始から今まで一銭も使わず、異常とも言える常時ログイン――生体反応はあるのでロボットでもなく、もちろんチート要素は検出されない――により、スタートダッシュから課金者と対等、いやそれ以上に立ち回るプレイヤーがいるのだ。
運営の〝初期調整〟〝スキル
通常、AFFのゲーム機器には健康上の観点から、どんなに長くても8時間で安全装置が働き、ログアウトを強制する。
ログアウト後は3時間の休息時間がないと、再ログインはできない仕様になっているはずだった。
しかし、当該プレイヤーはプレイ時間を監視するAIの目をすり抜け、ずっとプレイをし続けているのだ。
もちろんゲーム内では睡眠や食事は取っている。
現実の身体はおそらくだが、AIコンシェルジュやロボットを利用した日常生活の補助により、ひたすらゲームに没入できるような体制を組んでいると思われる。
昔の廃人プレイヤーのように、股間にペットボトルをガムテで固定する時代は終わったのだ。
AFFのゲーム内の時間は通常の3倍である。現実時間が1時間すぎると、ゲーム内では3時間すごしたことになる。
がっつりハマって遊ぶトップランナーたちが現実の時間でMAX8時間遊べば、ゲーム内では24時間ぶっ通して遊んだことになる。
3時間の休息時間とは、ゲーム内の宿屋で眠る時間であり、ゲーム内の
配信開始から露骨な課金者優遇は使えない。
無課金者よりスタートダッシュが多少良くなることは間違いないが、やはり序盤はゲームに時間をどれだけ費やすかでプレイヤーの優劣は決まるのだ。
――現実の3時間はゲーム内で9時間。常時ログインした場合、毎日9時間のアドバンテージを持つことができる。
だからこそ、運営はこの当該プレイヤーがプレイ時間の異常さによりトップに立ち、廃課金者を超優遇できるようになる運営にとっての安定期――武器、スキン、課金アイテムによるインフレしても無課金プレイヤーが逃げなくなる時期を指す――に入る短期間で、彼の独自ルールを敷くことを許してしまった。
このゲームの売りは、キャッチフレーズにもある〝なんでも出来る〟だ。
運営が当該プレイヤーを悩みの種とする原因がここにある。
大人用の破廉恥な要素もR指定サーバーで解決し、普通のライトなプレイから、犯罪系のロールプレイ――例えば盗賊となり、NPCのキャラバンを襲う。護衛をしているプレイヤーを殺すことも出来る。
狂った戦士ロールで、その辺を歩くプレイヤーを軒並み殺して笑みを浮かべる。
プレイヤーがプレイヤーを殺し、金品や経験値を奪うことを生業とする行為を〝
そんな日常ではできない犯罪プレイを堂々と行えるというのは、一部のプレイヤー層の心をがっちりと掴んでいた。
ところが、この【とりあえずお試しプレイ中】は、悪役ロールのプレイヤーたちの存在を一切許さなかった。
PK行為を異常なまでに憎み、相手が引退するまでPK返し――いわゆるPK
もちろん運営サイドも、ある程度のプレイヤー間におけるルールが出来るのは想定していたが、PKを根絶する勢いでルールで縛り、NPCたちまでも扇動し、PKが発覚した時点で、そのプレイヤーの城や町村への出入り禁止、アイテム交換の禁止、NPCたちも取引に応じるどころか、拠点――ログイン、ログアウトを安全に出来る場所──に設定できるはずの宿屋の主人までが敵対行動――食事に毒を入れてデバフを与える――を取るところまでは想定していなかった。
繰り返すが、キャッチフレーズは〝なりたい自分になる。なんでも出来る〟である。
行き過ぎた行為は自由度を大きく狭め、新規プレイヤー――廃課金者様方の確保を阻害することになってしまった。
運営の行為としては賛否両論はあったものの、デスペナ解消効果を持つ〝時の砂時計〟やPKプレイヤーになると目印としてキャラ名が赤くなる通称レッドネームを黒色に戻す〝隠蔽シール〟、PK時に経験値3倍になる〝殺戮の腕輪〟など、PK優遇するアイテムを売り出す対策を打ったが、焼け石に水だった。
前述した課金アイテムを使用したプレイヤーの情報は、ネットの海で拡散され、例え黒色ネームになっていても、当該PKプレイヤーが一度ログアウトして、ログインする頃には宿屋周辺にPKKプレイヤーたちが待機し、宿の店主がPKプレイヤーを宿の外に叩き出した途端に、汚物として消毒するのだ。
プレイヤーが死ねば復帰する場所は町中にある教会となり、PKKプレイヤーが交代で教会から出たところで粘着消毒をするため、PKプレイヤーがまともにゲームを遊ぶことは不可能となる。
彼らPKKプレイヤーたちは、運営規約のなかで正義のロールプレイを楽しんでいるところもあり、運営も露骨なPK優遇はできず、お願い通知を送るに留まっている。
正義のPKKギルドのマスターでもある【とりあえずお試しプレイ中】は、ギルドメンバーさえドン引きするような報復行為が有名である。特に自分に攻撃を仕掛けたプレイヤーに対しての報復行為が苛烈なのだ。
ギルドはもちろん、肩をポンと叩くだけでも国王暗殺の犯人認定を行い、国中総出で犯人のポータルを探し出し、ポータルが他国であれば他国ごと滅ぼして犯人を追撃、粘着する。
廃課金者、課金者、無課金者、仲間であっても許さない。一度でも自分の生命の危機を感じさせるプレイヤーに一切の容赦はしない。
――ゲームなんだから大人気ない。
――やり過ぎは良くない。
PKKギルドの仲間たちから何度も諭されることもあるが絶対に改めない。聞く耳を持たない。
運営からの警告も届いていないかのように無視をする。
運営としてはアカウント停止をしたいところではあるが、ゲームの規約違反はしておらず、彼を崇拝する廃課金者もいる手前、そこまで踏み込んでの制裁は出来なかった。
曰く、洒落が通じない男。
曰く、PKに両親を惨殺された男。
曰く、デスペナ0の男。
曰く、激安のネーム変更チケットさえ買わない徹底した無課金男。
曰く、聖騎士のくせに1ダメージさえ許さない超痛がりの男。
ネットの海で呼ばれる彼の特徴はそのままで、プレイ開始から
PK行為は絶対に許さず、たとえ同じギルドのメンバーであっても、冗談で後ろから頭を剣で叩いたときには、痛覚遮断設定をし忘れたかのように大げさに痛がり、即座にPK行為として苛烈な報復を行い、メンバーを引退するまで追い込んだ。
仲間であっても、自分に危害を与える者を絶対に許さないマンである。
そんな彼の口癖は――
『お家に帰りたい、死にたくない、運営さんタスケテ……』
各方面を綺麗に煽るロールプレイは流石だと、仲間達からこういうところも尊敬されている。
また一方で、この口癖からネットの海で浮上してはどこかに消える考察がある。
『一人だけゲーム内に閉じ込められてる説www』
彼の名は【とりあえずお試しプレイ中】――無課金最強のプレイヤーである。
―― fin ――
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無課金最強の男〜膨大なプレイ時間とプレイヤースキルで廃課金のPKどもを徹底的にぶっ叩く〜 yatacrow @chorichoristar
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