27. 廃棄王女、愚者の企てを知る
「カザリアの王女と言うと、もしかして大国の威を借りギルス殿下に輿入れした醜女のことか?」
「そうそう、その悪女のことさ」
ずいぶんな言われようですね。
「ギルス殿下とリアム嬢の恋仲を引き裂くなんて人の心が無いのかね?」
「まったく冷酷非道とは、あの女を指す言葉だな」
この縁談は別に私が望んだわけでもありません。それどころか、オスカー様と破談となった私にとっては良い迷惑なのですが。
それにしても、ロオカの貴族はみな脳内がお花畑なのでしょうか。王侯貴族の婚姻に国よりも色恋沙汰を優先するなんて。しかも、政略を悪とみなす風潮でもあるみたいです。
それにリアム様は帝国の回し者。彼女に恋愛感情なんてあるわけもありません。完全に利用されていることに気がつかないのでしょうか。
「あの女、陛下との謁見ではずいぶん生意気な発言をしたらしいな」
「ギルス殿下のことなど愛していないだとか、ロオカを帝国と戦争させるために来ただとか……」
「王子妃の座と帝国との戦争にしか興味のない冷血女かよ」
どうやら、私が申し上げた内容をずいぶん曲解して流布されているみたいです。
話を歪曲した犯人は、私を嫌っているギルス殿下かカザリアを快く思っていない宰相のデュマン卿あたりでしょうか。あるいは帝国の回し者であるリアム様の線もあり得ますね。いえ、もしかしたら、その全員という可能性もあります。
「それで、その顔も心も醜い王女がどうしたって?」
「ああ、そんな女だからな、ギルス殿下もほとほと愛想を尽かしたらしい」
はぁ……愛想を尽かせているのは私の方なのですが。
「まあ、気持ちは分かるな。俺だってそんな女ごめんだ」
「お前もそう思うだろ?」
私だってギルス殿下なんてごめんです。帝国との戦争下でもなければ、本当に逃げ出していたかもしれません。
「そこでどうやら殿下がどうやら仕掛けるらしい」
「仕掛ける?」
「ああ、明日の夜会でさ」
夜会?
ロオカでは毎夜の如く夜会があちらこちらで催されております。ロオカに来て五日経ちましたが、その間に開催された夜会は私の知る限りでも両手で数えきれないほど。
明日も幾人かの貴族が夜会を開くとは耳に入っておりますが、いったいどの方の夜会なのでしょう?
「カザリアの王女を歓待する王宮の夜会のことか?」
「そうそう、それだ」
私を歓待する夜会……そのような話は私のところへ届いていませんが?
「そこでカザリアの王女に恥をかかせる企てがあるらしい」
「何だそれ、面白そうだな」
二人が下卑た笑いを浮かべておりますが、なんとも品性を疑います。
「まず、王女には夜会があるのを当日まで伏せておくらしい」
なるほど、それで私の歓待式のはずなのに、本人である私が知らなかったわけですね。
「それでは王女は夜会の準備ができないではないか。夜会に出る時の女の支度は一日がかりなんだぞ」
「そう、それこそが狙いなんだ。どう
「それはそうだろうな」
「王女は満足に時間をかけられず、会場でみっともない姿を晒しすことになる。それを会場のみんなで笑い者にするのさ」
ギルス殿下は十歳児ですか。ずいぶん幼稚な嫌がらせを思いつくものです。
「それだけじゃないぞ。どうやらギルス殿下はリアム嬢をエスコートするらしい」
「なるほど、カザリアの王女を冷遇することで、ギルス殿下はご自分のお相手はリアム嬢だけだと喧伝するおつもりなのだな」
「さすが察しが良いな」
何がさすがですか。
私に準備期間を与えないのは、きちんと主催できず迎賓も満足にできない国と自ら喧伝するようなもの。
それに仔細がどうであれ、現在は私の輿入れを受け入れたと諸外国は見ているのです。私のための夜会でギルス殿下が他の女性をエスコートなどすれば、堂々と浮気を宣言しているようなもの。
国賓をまともに歓待できない。約束も簡単に破る。そう自らの恥を諸外国に晒してしまうことになるのです。
察しが良いと言うになら、その愚行が何を
あっ、眩暈と頭痛が……
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