2 独白


 ただ、助けたいと思った。

 前の前で誰かが転んだ時、そっと手を差し伸べてあげたくなるように。私もただ、そこで転んだ人が居たからそっと手を差し伸べた。

 人と人は助け合う物だってお兄ちゃんがよく言っていたから、私も。

 お兄ちゃんが私を助けてくれたように私も誰かを助けてあげたいと思った。


 最初の一歩は凄く勇気が必要だった。

 なかなかその一歩が踏み出せなくてずっとずっと足踏みしてた。


 どうにかしなきゃ、どうにかしてあげなきゃって思いながらどうしてもその一歩が踏み出せなくて、気付いているのに気付いていないフリをしてた。

 だから、その一歩が踏み出せたのだとしたら。


 もし、最初の一歩を「えいやっ」て踏み出せたとしたら私は何かを帰る事が出来るんんだろうって、ただ漠然と期待して――、やっぱりその一歩を踏み出せないでいた。



 だけど、ある日、そうじゃなくなった。



 キッカケは何だったか分からなくて。ただ夢中で手を差し出してた。

 気持ちよりも先に体が動いていて、頭より先に心が動いていた。


 ――ああ、これでよかったんだ。って自然と涙が零れ落ちた。


 あったかいそれが頬を伝って流れ落ちた。

 

 私は、人を救う事が出来るんだ。

 きっと。


 それを今日、私は知る事が出来た。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る