第10話:栄光の瞬間(とき)
そうだ、早く
小さいながらも拍手を貰えたと話したら、
そして
そんなことを想像すればするほど、私の口元から笑みが
そうだ、今日、私は全力を出し切ることができた。もうそれだけで充分、充分じゃない。そんな清々しい気持ちで前を見つめると、急に舞台の上があわただしくなってゆく。
そっか、そろそろ結果発表の時間なんだ。
今回、宮廷楽士になれなかったという悔しい気持ちはあるけれど、それ以上の気持ちが今の私にはある。
たとえ数が少なかったとしても、
そう、これから地道に練習を続けていけば、きっとそれは多くの人に届くようになる。だから、いつか、きっと、宮廷楽士になるという夢は
「皆様、お静かにしてください。これから順位の発表をおこないます」
そんなことを考えていた私の耳に、そんな司会者さまの声が飛び込んでくる。その声を聞いた私は、ゆっくりと舞台に目を向ける。するとなぜかそこに立っている
「な、なんで……、どうして?」
そんな信じられない驚きが私を襲う。
確かこの音楽宴は、高官や貴族、皇族の方しか参加できなかったはず。そんな音楽宴で司会者さまを差し置いて舞台の上にいるなんて、もしかして
「それでは
その司会者さまの声に、
「それでは発表します。まず第三位」
司会者さまがそう声を張り上げると、
そんなやり取りが目の前で行われているものの、私の混乱はまだ収まらない。
「
そのとき叫ぶような司会者さまの声が私の耳に入ってくる。
私はとっさに「はい」と手をあげて、それに応えてみせる。すると「ほっ」と安堵の表情をみせる司会者さまと
「あぁ、よかった、よかった。
そんな司会者さまに言われるがまま私は舞台へ向かう。しかし観客のみなさまは、なぜか道をあけてくれるし、私に拍手を送ってくれる。
その状況に戸惑いながら私は舞台に辿り着く。そして言われるがまま、すでに舞台に上がっている二人の楽士さまの横に立つ。もちろん舞台の中央から一番遠い隅っこに立つ。
するとその瞬間、
「
司会者さまはそう言って私の手を強引に引っ張ると、私を舞台の中央に導いてゆく。私は訳も分からず、司会者さまの言われるがままの位置に立つと、そこには小さな微笑みを浮かべている
「
私がそう言葉を続けようとした瞬間、
「優勝おめでとう、
そんな
その瞬間、私は自分の体が無意識に小さく震えていることに気がついた。そしてそのとき初めて理解する。この音楽宴で優勝したという事実を……。あれほど遠く感じていた夢が一つ
「
そんな言葉にならない言葉を
「ほら
その優しい一言に導かれ、私はゆっくりと観客席へと視線を向ける。するとその瞬間、さらに大きな拍手が巻き起こり、私は自分の視界が徐々に滲んでゆくのを感じずにはいられなかった。
「
そのとき私の口から
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