第07話:迎暑節の音楽宴にて
初夏の高い太陽が水晶のような輝きを放ち、首都・
本来なら私の気持ちも、そんな空気に呼応するように、熱く燃え上がっていなければならなかった。でも……、今、私の心は氷河のように凍てついている、冷え切っている。
この会場に来る前に、みんなから託された熱い気持ちは
「みんな、ごめんなさい……」
私は必死になって、心の中でそう何度も何度も繰り返す。だって今、私の目の前で繰り広げられているのは信じられない光景で、信じたくない現実で……。
そう、今、私が目にしているのは水の幕。見るものすべてを圧倒するかのような水の壁。そしてそれを操るのは、
「これが仙術、これが本当の音楽……」
そんな独り言が自分の中で重たく響く。
いつも
これから私は、こんなすごい楽士さま達と戦わなければならない。そう考えれば考えるほど、心はきゅっと締めつけられて……。
でも、この楽士さまたちに勝たなければ、私の夢である宮廷楽士への道は開かれない。この人達に勝たなければ、
だから私はそんな感情を必死に揺り起こし、ただ椅子の上で、腿の上で、ぎゅっと拳を握りしめる。すると、ゆったりとした純白の
「だめ、自分を強く保たないとダメ、好機から逃げてはダメ!」
私は、そんな独り言を心の中で何度も何度も繰り返す。目を閉じて、今にも逃げだしたい衝動からじっと耐える。
しかし……、モノには限度というものがある。だから私は、そんな重圧に耐えきれず、立ち上がろうとしたその瞬間、私の拳をそっと握ってくれる優しい手、
「演奏中は席を立ってはいけないよ、
私の隣に座っていてくれる
「大丈夫。
「でも、私、仙術が……。あの方たちみたいな壮大な演出は……」
震える声で、そう不安を
「仙術は確かに美しい。でも
夏の鋭い陽の光は
そうだ、今日は年に一度しか行われない迎暑節の音楽宴。帝国内外から、宮廷楽士を目指して世界中の楽士が集まってくる特別な日。
だから音楽の
そう考えが結論に至った瞬間、私の心に再び決意の炎が灯る。そしてその小さな炎は、まるで氷を溶かすかのように、私の
「
そのとき、ふいに聞こえてくる司会者さまの声。
私はすぐに「はい」と返事をして、今できる精一杯の笑顔を作り出すと、それを私に勇気をくれた
「ありがとうございます、
私は、できる限りの元気な声で
そうだ、これから始まるたった五分の演奏時間。その五分で、私の夢である宮廷楽士になれるかどうかが決まる。その好機を決して無駄にするわけにはいかない。
私を支えてくれるすべての人たちのためにも、私は頑張らなければならないのだ。
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