第05話:届け、私の音
「店主さま、店主さま!
目の前に張
そして
残された私は、張
「おい、店主!」
ふいに、そんな重苦しい雰囲気を破るのは張
その声には明らかな怒りが含まれている。そしてそれは声だけじゃない。その目も怒りに震え、顔は朱に染まっている。
「さっきのあの娘の演奏はなんなんだ。仙術のない音楽なんて聞いたことないぞ。いいか、俺は国事である迎暑節の音楽宴で演奏できる楽士を探しているといったはずだ。それなのに、よりにもよって……。いいか、お前たちは神聖なる
張
「おい、おまえ! あの酷い曲はなんなんだ。我らが帝国を象徴する山河を渡る風や皇帝陛下の臣民を想う深い気持ちも何も感じることができない、おおよそ
そんな張
「張
そんな李
「でも、李
そう私が言葉を続けようとしても、李
その瞬間、私の胸は氷の刃が突き刺さったかのように鼓動を止める。体中の熱という熱が奪われ、冷たい感覚が全身を包みこんでゆく。しかしそんな私と李
「あら、張くんもしばらく見ない間に随分と立派になったじゃない」
その恐ろしい一言に慌てて振り返ると、そこにいたのは他の円卓から持ってきた椅子に腰を掛け、大胆不敵な微笑みを浮かべる
「お、おい。
そして
「で、
その言葉に、小さくため息を返す
「ほんと
「私のことはどうでもいいの」
「ね、どうだった? どう思った? この娘の音楽」
そんな
「大丈夫。この娘の音楽は最高だった。あの頃と何も変わりはしない。こんな素晴らしい音楽を否定できるほど、私は厚顔無恥ではないよ」
「それじゃあ……」
「あぁ合格だ。迎暑節の音楽宴には
「やった、やったよ。
そのとき私の肩に冷たい
そして、そのあと私の体にじんわりと広がってゆくのは
「しかし、
その決定に不満の声をあげるのは張
「仙術で奏でる神聖な旋律こそ、我が
そんな反論に、大きなため息で返す
「そうだな。この
「今まで多くの業務を任せすぎてすまなかった。今日から一週間、休暇を与えるから迎暑節の音楽宴は後任にまかせてくれればいい。そして今日はご苦労だった」
「すまない、張、これは俺が言い過ぎた。本当にすまない。ただ、これから明日の音楽宴にむけて、
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