第04話:その夢と、その現実と
赤茶色の陶器の
そして聞こえてくるのは、高笑いや
そんないつもの
磨き上げられた
「大丈夫だよ、
そう優しく話しかけてくれるのは
しかし私が気になるのは奥の席。張
「
「あ、はい。
そのとき急に耳に入ってくるのは
「ほんとうに大丈夫?
「え、
そんな意外な一言に、私は思わず面をくらってしまう。
「あははは、まぁ、いいじゃない、そんなことは……。と、とにかく、いつも通りに弾ければ大丈夫だから、自信をもって、ね」
そう言って話題をそらす
この会話で少しは落ち着けた気はするけれど、失敗したらどうしよう……。そんな不安が私の中をよぎる。
お役人さまを怒らせてしまったがため、理不尽な目にあった庶民はたくさんいる。いや、問題はそこじゃない。私だけだったらともかく、私を拾ってくれた李
だからこそ、張
でもここで認めてもらえれば音楽宴に出ることができる。そこで優勝すれば夢である宮廷楽士にも手が届く。そんな希望が暗闇に差し込む一筋の光のように私を照らす。けれども失敗すればすべてを失う。その現実が私に重くのしかかる。
そんな希望と不安が波のように交互に押し寄せて、私は思わず
ダメだ、こんな気持ちじゃ演奏できない。頭は真っ白だし、足もすくんでいる。そんな絶望に心が支配されそうになった時、ぎゅっと私を抱きしめてくれる
そのぬくもりは徐々に私の中に広がってゆき、硬直していた私の体がほぐしてゆく。そしてその瞬間、私の中に小さな勇気の炎が灯る。動悸は激しいままだけど、呼吸だけは少しずつ整ってゆく。
「ありがとうございます、
そう
今、笑顔は震えているかもしれないけれど、演奏が終わったら心から笑えるようにしよう。だから、今、やれることを全力でやってみよう。何度もそう自分に言い聞かせ、私は静かに椅子にすわる。
そして背筋を伸ばし、
しかし私は心を決意で満たし、震える手で、ゆっくりと弓を弦にかける。心臓の鼓動が、ごうごうと耳に響く。
そして弓を引いたその刹那、かすかな振動とともに
その旋律は深い憂いと優美さを兼ね備え、小さく水面を揺らす風のように繊細に音楽を紡いでゆく。まるで湖に投げ込まれた小石が描く波紋のように広がってゆく。そして余韻を残しながら、静かに夜の空気の中へと溶け込んでゆく……。
しばらくのち、私は大きな吐息と共にその演奏を終える。しかし沸き起こるのは数人の気まぐれな拍手。目に入るのは、酒家の隅で退屈そうにあくびをするお客さま。そして私を襲うのは「仙術を使わないとか舐めてるのか?」という怒号。
そんな反応に私は心が潰れそうになる。しかしすぐ横で大きな拍手をくれるのは
すると
しかし私は恐ろしい現実に気がついていた。これから向かうであろう円卓で、張
これからきっと何か恐ろしいことが起きる。そんな暗い予感が私の体を鉛のように重くする。
それが証拠に、私の足はすでに震えはじめていたのだから……。
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