第02話:招かざる客人
「これはこれは、張
李
「どうしたもこうしたもない。先程まで
激しい怒号が店内に響き渡り、思わず私は
そしてその温もりは、まるで遠い故郷の記憶のように懐かしく胸の中へと染み入ってゆくものの、私にその記憶はない……。
「先程の
李
「とぼけるのもいい加減にしろ! さっきまでここで
そんな張
でも、そんな私を心配するかのようにじっと見つめてくれる
そして
「あぁ、さっきまでここで
いつの間にか私と李
すると張
「いやぁ、私達も困っていたんですよ。子供たちに飯を食わせていたら、急に旅の楽士が入ってきましてね。『金がなくて困っているから、ここで雇ってくれ』と言うんですよ」
矢継ぎ
「この店には、もう専属の楽士がいるから必要ないと断ったんですが……。どうしても一曲だけは聞いて欲しいと言うんですよ。だから一曲だけという約束で弾かせてやったんです。そしたらまぁ、あんな斬新奇抜な旋律を奏でていくものですから、反応に困ってたという訳でして……」
李
「だから張
そんな李
しかし張
「すまない店主、そういう話ではないんだ……」
張
そして、何かを決意したかのように李
「実はもっと深刻な問題があってだな。明日の迎暑節のお祭りのことなんだが……。あ、そうだ、店主、一つ相談に乗ってもらえるだろうか?」
「なんなりと、私でできることであれば……」
そんな李
「実は、迎暑節の目玉である音楽宴に欠員が生じて困っているのだ」
張大人はそこで言葉を区切り、店の入り口に視線を向ける。そして誰かに聞かれていないかを慎重に確認する。
「知っての通り、この音楽宴は宮廷楽士の選抜試験も兼ねる大切な国の行事でな。皇族も直接関わるほどの国事でもある」
その言葉を聞いた瞬間、李
「この行事での失敗は、我が
張
でも、そんな李
「先程、ここで演奏をしていた旅の楽士程度の腕前でいいのだが……。って、待て待て、店主。さっきこの店にも専属の楽士がいるといっていなかったか?」
そんな張
しかし張
「はい、確かにいるにはいますが……。ただ、張
そう苦しそうに、なんとか断ろうと必死に言葉を紡ぐ李
「いやいや、ある程度の実力があればこの際かまわない。この店で専属ができるほどの実力の楽士だったら問題ないであろう……」
張
「……って、そうだ。今日の夜、ここに
そんな強引な一言に、李
しかし店に残された沈黙は、まるで
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