響鳴の奏者 ―鳴玉弦歌―
まぁじんこぉる@中華音楽ファンタジ連載中
響鳴の奏者 ―鳴玉弦歌―
第一章:二胡を弾く少女
第01話:雪梅と二胡(にこ)
「おねぇちゃん、
六月の透き通るような朝の光が、石畳に散らばる
「わかった、わかったから、あまり手をひっぱらないで……」
朝市の
「だ、大丈夫だよ、
両肺が火を吐くような息切れを起こし、私はたまらず足を止める。しかし
「大丈夫だよ。おねぇちゃんの
そんな
「ほらほら、早く行くよ」
「わかった、わかったから、もう少し、ゆっくりね」
そう懸命に抗議をしたものの、私はそれが無意味であることをすぐに理解する。だからゼェゼェと息を切らしながらも、必死に
こうして、ようやく私たちは
そんな様子に乾いた笑いを浮かべつつ、私は長年風雪に耐えてきたその朱色の門をくぐる。するとその瞬間、
香ばしい
その美味しそうな匂いに誘われるがまま入口の扉を開けると、そこにいたのは店主の李
「
その声を聞いた瞬間、私の瞳に飛び込んでくるのは喜びいっぱいの子供たち。
使い古された木製の円卓に並べられるのは、湯気を上げる
「さぁ、お前たち。毎月この食事会の料金を出してくれている
李
「でも、料金の半分以上は李
そんな私のささやかな主張も、子供たちの歓声でかき消されてしまう。そしてそれをあえて聞こえないフリする李
「はいはい、お前たち、ちゃんと手を合わせて、お祈りしてから食べるんだぞ!」
その一言に酒家は一瞬静まり返ったものの、すぐに賑やかさを取り戻す。そして「美味しい」と声をあげながら、一斉に料理をほおばり始める子供たち。
そんな子供たちの笑顔を見て、私は自分の心の中にじんわりと温かいものが広がってゆくのを感じていた。だから私の口角も思わず上がってしまう。
そんな幸せな気持ちを心に抱きながら、私は、ふと壁に立てかけてある
「子供たちは期待していないんだろうな……」
そうぼそりと
その瞬間、私の全身にほんのり伝わってくる「ほっ」という不思議な感覚。音楽を奏でることができるという喜びより先に来る
「じゃ、おねぇちゃん。これから
そんな一言に対して起こるのは、まばらな拍手。
「ほんと、みんな正直なんだから……」
そう心の中で
その
指先から
だから私は褐色の瞳を静かに閉じて、
そして最後の音が時の流れの中に消えさった時、私はゆっくりと瞳を開ける。
その瞬間そこにあるのは、水を打ったかのような
そんな独特の空気と視線に強い照れを感じてしまった私は、頬を
そんな光景をつきつけられてしまっては、私の照れはただ増すばかり。だから私は、すぐにその場にいることさえ耐えきれなくなり、慌ただしく
すると
しかしその瞬間、急に店の入り口から聞こえてくる騒がしい声。怒号ともとれる恐ろしい声。
「さっき
慌てて私が視線を向けると、そこには小太りな男性が立っている。そしてその深紅の絹の長衣が、
次の瞬間、その男の鋭い視線が
そして私の背筋は凍りつく。徐々に全身から血の気が引いてゆき、その後に続いてゆく体の震えに、私はただ耐えなければならなかった。
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