第17話:興味本位の訪問者たち

冒険者たちの間で噂となり、癒しと宿泊が楽しめる「飯ダンジョン」。宿泊施設の豪華さに感動した冒険者たちが次々に訪れ、ダンジョンの人気はますます高まっていた。


その噂は、冒険者以外の耳にも少しずつ届き始めていた。


近隣の村では、冒険者たちが「飯ダンジョン」の話をしている姿が目撃されていた。


「温泉や豪華な料理が出るダンジョンなんて聞いたことがないぞ」

「罠も危険もほとんどないらしい。でも、本当にそんな場所があるのか?」


村人たちはその話に興味津々だったが、ダンジョンと聞くだけで身の危険を感じるのが普通だった。

そんな中、一人の冒険者が村の酒場で話しているのを聞いた村人が、意を決して声をかけた。


「すみません、その……噂のダンジョンって、本当に安全なんですか?」

「ああ、怪我をするような仕掛けはほとんどないし、飯もうまいし、温泉も最高だぞ。ただ、ギルドには秘密にしてくれよ」


その言葉に興味を抑えきれなくなった数人の村人たちは、冒険者たちにこっそり同行させてもらうことを決意した。


ダンジョンに向かう道は決して楽なものではなく、村人たちは普段の生活で経験することのない過酷さに息を切らしていた。


「これがダンジョンに向かう道か……冒険者って大変だな」

「でも、温泉や飯の話が本当なら……頑張ってついて行こう」


冒険者たちは振り返り、村人たちを励ますように笑った。

「まぁ初めてのやつにはキツいかもしれないが、着けば全部報われるさ」


ダンジョンが見えた瞬間、村人たちは足を止めた。洞窟の入口から漂う雰囲気に、身構えてしまう。

「こ、ここが……ダンジョン?」

「大丈夫だ。俺たちが一緒にいる限り、怖いことは何もない」


飯ダンジョンの入口は、冒険者たちが訪れるたびに整備され、親しみやすさが増していた。しかし、初めて訪れる村人たちにとっては依然として恐ろしげな場所だった。


中に入り、洞窟の暗いイメージとは一転して、柔らかな光に包まれた空間が広がる。宿泊施設へと案内されると、さらに村人たちの不安は驚きに変わった。


木造の温泉宿のような建物が目の前に現れ、入口ではスライムバトラーがトレーを揺らしながら出迎える。

「いらっしゃいませ!こちらはダンジョンホテルです!」


その光景に、村人たちは目を丸くした。

「これがダンジョンの中?信じられない……」

「なんて親切なモンスターなんだ……」


冒険者たちは慣れた様子で中へ入り、村人たちも恐る恐る後を追った。


村人たちは冒険者たちと共に温泉に案内された。湯気の立ち込める岩風呂を目の当たりにし、言葉を失う。


「これは……村の温泉なんかよりずっと立派だ」

「本当に湯に入っても大丈夫なのか?」


恐る恐る湯船に足を入れると、体を包み込むような温かさに感動が広がった。

「すごい……こんな温泉、初めてだ。疲れが全部抜けていく」


温泉から上がった村人たちは、宿泊施設の食事処へ案内された。冒険者たちと同じく、湯気が立ち上る炊き込みご飯や出汁香る鍋、だし巻き卵が提供される。


「こんな飯、村じゃ絶対に食べられない……」

「この鍋のスープ、どんな魔法を使ったんだ?」


村人たちは次々に箸を進め、食事に夢中になった。中には感動のあまり涙を流す村人もいた。


そんな、宿泊施設が村人たちにも好評を博していることを知った光三郎は、次なる仕掛けを考え始めていた。


「宿泊や温泉だけじゃなく、もっと楽しめる要素を作らないと満足させ続けるのは難しい。リクリエーションエリアと追加してみるか」


光三郎は計画を進めながら、さらに多くの人々がダンジョンを訪れる未来を見据えた。


宿泊施設を後にする村人たちは、恐怖心を完全に忘れていた。


「また来たいな……今度は家族も連れてきたい」

「噂だけじゃわからなかったけど、実際に体験してみるとすごい場所だった」


冒険者たちは笑いながら注意を促した。

「ギルドには黙っててくれよ。こういう場所は、ひっそり楽しむもんだ」


村人たちは感謝しつつ、満足した表情で険しい道を戻っていった。

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