第10話:冒険者たちのフルコース体験
光三郎は、フルコースダイニングの完成を見届けて満足げに笑った。
「炊飯部屋やデザートエリアで腹を満たすだけじゃなく、今回は腹ペコの状態でフルコースを楽しませてやる。だから、あえてこのエリアはダンジョンの序盤に配置したんだ!」
フルコースダイニングは、ダンジョン侵入後の最初の休憩ポイントとして設計された。そのため冒険者たちは空腹の状態でこの部屋に到達するようになっている。
ギルドから派遣された四人組の精鋭冒険者たちが、ダンジョンの最初の罠を抜け、フルコースダイニングに到達した。彼らは異質な空間に驚きの声を上げた。
「なんだここ……まるで貴族の晩餐会みたいだ」
「ダンジョンの中にこんな場所が……これは一体どういう仕掛けなんだ?」
そこに現れたのは、笑顔を浮かべたリリィだった。小さな翼を羽ばたかせながら、冒険者たちの前で優雅に一礼する。
「ようこそ、フルコースダイニングへ!本日は特別なお料理をご用意しております。こちらのお席へどうぞ」
妖精が言葉を話す姿に驚きつつも、
「お腹もすいたし、妖精なら脅威にならないから言うことをきいていみるか」
と冒険者たちはリリィの案内で席に着いた。
リリィが最初に運んできたのは、新鮮な野菜を盛り付けた特製サラダ。
「こちらは本日の前菜、特製サラダでございます」
冒険者の一人が恐る恐るフォークを手に取り、一口食べた瞬間、目を見開いた。
「……何だこのシャキシャキ感。こんな野菜、村の市場じゃ絶対手に入らないぞ」
「ドレッシングも、甘さと酸味が絶妙に混ざってる……こんなの初めてだ」
他のメンバーも次々と手を伸ばし、前菜をあっという間に平らげた。
「次にご用意しましたのは、特製のコンソメスープです」
リリィが丁寧にサーブしたスープの香りに、冒険者たちは思わず深呼吸をした。
「この香り……野菜と肉の旨味が凝縮されてる」
「スープだけでこんなに贅沢な気分になれるなんて……ここ、何なんだ?」
スープを飲み干し、体が温まった冒険者たちは、さらに期待を膨らませる。
「お待たせしました。本日のメインディッシュ、ステーキでございます!」
リリィが運んできたのは、ジューシーなステーキ。香ばしい香りと肉汁が溢れる見た目に、冒険者たちは完全に魅了されていた。
「これは……ナイフがスッと入る。こんな柔らかい肉は初めてだ」
「噛むたびに肉汁が溢れてくる……こんな料理が食えるなんて……」
豪快に肉を食らう冒険者たちは、すでに警戒心を忘れ始めていた。
「最後にご用意しましたのは、特製のプリンでございます。お口直しにどうぞ」
カラメルソースがかかった特製プリンに、冒険者たちは思わず手を伸ばした。一口食べると、その甘さと食感に表情が一変する。
「……何だこのとろける感じ!甘いのにしつこくなくて……すごい」
「締めにこのプリンを持ってくるセンス……完璧だ」
デザートまで堪能した冒険者たちは、すっかり満腹になり、警戒心を忘れてリリィにお礼を告げた。
「最高の料理だった……ありがとう、妖精さん」
「お客様が満足してくださったなら、私もうれしいです!」とリリィは笑顔で答えた。
フルコースで完全に油断した冒険者たちが次の部屋へ進むと、待ち受けていたのは罠とモンスターの猛攻だった。
「くそっ……満腹で動きが鈍い!」
「さっきの料理で完全に油断してた……」
満腹感が仇となり、冒険者たちは次第に追い詰められ、撤退を余儀なくされた。
《侵入者が撤退しました。獲得DP:500》
光三郎はダンジョン核でステータスを確認し、笑みを浮かべた。
「リリィも大活躍だし、フルコース作戦は大成功だな。次はもっと驚くような空間を作ってやる!」
リリィが嬉しそうに光三郎に微笑む。
「これからも頑張ります!お客様をもっと喜ばせたいです!」
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