第18話 お茶会への参加
ハンス様と婚約をした翌日は、学園でハンス様と一緒に昼食を摂って話をした。だが、途中でハンス様は人に呼ばれ、中断することになった。
それからも、お互い学年が違うので予定が合わない。
実は学園ではお昼の食堂などの混雑を避けるために学年でお昼休憩の時間を少しずつずらしている。
それにハンス様は侯爵家ということもあり、生徒代表として活動されており、とても忙しい。
結局学園で一緒に過ごすことはほとんど出来ずに、私はハンス様の家のお茶会に呼ばれた。このお茶会は、親戚にハンス様のお兄様が陛下との謁見の権利を得たことを報告する会なのだそうだ。
ちなみに私の家は参謀の父以外は陛下に謁見などできない。
しかも世襲制ではなく実力で参謀にならなければ陛下にお目にかかれることは生涯ない。
「ようこそ、シャルロッテ!! 待っていました」
アイバル侯爵家に到着すると、ハンス様が嬉しそうに出迎えてくれた。
「本日はお招きいただきまして、誠にありがとうございます」
私が礼をすると、ハンス様が私を控え室に案内してくれた。
階段を上がると、窓から庭が見えた。
前回案内してもらった噴水広場がお茶会の会場のようだった。
「今日のお茶会は、庭で行われるのですね」
私が何気なく言うとハンス様は頷きながら「はい」と答えた。
そして、私を二階の端の部屋に連れて行ってくれた。
「二階にはシャルロッテの控室しかありません」
「え? そうなのですか?」
私はてっきり皆も二階に通されているのかと思っていた。
「はい。二階には執務室や、私たちの私室もありますので一般のお客様はお通ししていません」
「私はよろしいのですか?」
恐れ多くて声を上げるとハンス様がにこやかに言った。
「もちろんです。ここは、あなたがこの家に滞在する時の私室になります。今はまだ家具が搬入されてないのですが、ベッドや文机なども届く予定です。そして……隣は私の私室です」
私は心臓が早くなるのを感じた。
自分の滞在する部屋を用意してもらうことに罪悪感を覚えたのだ。
しかも隣はハンス様……
私はエイドを思い出して、声を強張らせながらハンス様の言葉に答えた。
「あ、ありがとう……ございます」
私の態度を疑問に思うこともないようで、ハンス様に促されてソファーに座った。すると、ノックの音が聞こえた。許可を伝えると執事が入って来た。
「ハンス様。奥様が、ベアトリス様にごあいさつするようにとのことです」
ハンス様は「わかったすぐに行く」と言って、私を見た。
「シャルロッテ、一人にして申し訳ありませんが、私はあいさつに行ってきます。お茶会が始まる時に迎えにきますので」
「はい、いってらっしゃいませ」
私はハンス様を見送って息をついた。
そして部屋の中を見渡した。
質が良いと一目でわかる家具に絨毯。
掃除も行き届いており、使用人のレベルの高さもうかがえる。
(これが侯爵家……本当に凄いわ……)
王国を支える侯爵家の一角、アイバル侯爵家の強大さがこの部屋を見ただけでよくわかる。
私は立ち上がって窓の外を見た。
お茶会の規模もさることながら、招待客の身なりも一流だ。
この方々がみんな親戚なのだ。
今日はお茶会の場で、ハンス様のお兄様の陛下への謁見を許可されたことを報告すると言っていた。陛下への謁見を許されるといことは、次期侯爵はハンス様のお兄様に確定したことを意味する。とても重要なお茶会なのだ。
窓から外を見ていると、噴水がとても美しく輝いていた。
「本当にきれいね……」
そう呟いた時だった。
ノックの音が聞こえて、入室の許可を出すと扉が開いてハンス様が入って来た。
「シャルロッテ、お待たせしました。さぁ、いきましょう」
私はハンス様の手を取りながら言った。
「はい」
そして私はお茶会へと向かったのだった。
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