第9話 第三者の意見



「姉さん、アイバル侯爵家のハンス殿の最後のあいさつ……どういうこと?」


 学園のダンスパーティーの帰り道、馬車の中でジーノが尋ねた。


「ああ、それは僕も不思議に思いました」


 二人にそう言われて、私はアイバル様との別れを思い出した。





「ありがとうございました。とても楽しかったです」


 私は最後の曲を踊り終えて、アイバル様にお礼を言った。


「私の方こそ、とても楽しい時間でした。特に毒に関する植物の話は大変勉強になりました。また機会がありましたら、毒(の植物)について教えて頂けますか?」


 私は笑顔で答えた。


「ええ、毒(の植物)については勉強しておりますのでぜひまた」


「楽しみにしています。では、名残惜しいですがここで」


「ええ。本日はありがとうございました」


 私はそう言って笑い合ってアイバル様と別れたのだ。




「え~と、最後のあいさつ? もしかして毒(の植物)のこと?」


 私が尋ねるとジーノが呆れたように言った。


「そう、それ。なんだか、二人に最後にあいさつに言った人たちが凍りついてたよな。まぁ、おかげでさっさと姉さんと合流出来たけどさ」


 エラルドも困ったように言った。


「う、うん。みんな顔が引きつって、二人に話かけられなかったみたいだったよ。そもそもどうしてハンス殿と、毒の話なんてしてるのさ……」


 私は少し考えながら言った。


「アイバル様と一緒に庭を散策していたら、カブトリの花が生えていて……」


 私が思い出しながらゆっくりと話をしていると、エラルドが途中で話を遮りながら言った。


「え? ハンス殿と庭の散策!? ちょっと待って、姉さん、どうして??」


 私が口を開こうとすると、ジーノも口を開いた。


「いつの間に二人はそんな関係になったんだ? 普段はエイド、エイドしつこく耳にタコができるくらい言ってるくせに!!」

 

(私、耳にタコができるくらい……エイドの名前連呼してるかな? 普通だと思うけど……)


 若干引っかかることはあったが、二人の問いかけに答えた。


「踊り疲れて、バルコニーで休もうと思ったら、恋人たちがイチャイチャラブラブしてて、居たたまれないな~と思ってたら、同じように困っていたアイバル様と会って、あの方の盾として二人で庭に避難したのよ」


 私がアイバル様と庭に行くことになった経緯を話すと、ジーノが頷きながら言った。


「ああ、なるほど……姉さんもハンス殿も前半見た感じ休みなしだったからな~~」


 するとエラルドが小声で言った。


「(はぁ、きっかけができちゃったな……)」


 私はエラルドの言葉が聞こえなかったので「ごめん、聞こえなかった」と言うとエラルドは困ったような顔をした。

 そんな話をしているうちに屋敷が見えたので、窓の外に視線を移すとエイドがエントランス前で待ってくれていた。


「あ、エイド。今日はお迎え担当なんだ!! 嬉しい!!」


 私はエイドに会えることが嬉しくて、意識をエイドに向けてしまったのだった。

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