第6話 交渉成功♪



「エイド~~会いたかった!!」


 書庫の扉を開けると、愛おしいエイドの姿を見つけて大声で叫んだ。


「あ、お嬢。おかえりなさい」


 エイドにおかえりと言ってもらって一日の疲れは全て消え去っていた。これほどの癒し効果がこの世にあるだろうか、いやありはしない!!

 私はエイドに駆け寄りながら尋ねた。


「ただいま~~!! エイドは何をしてるの?」


 私がエイドの手元を覗き込むと、エイドはお父様の使ったと思われる資料の返却をしていた。


「お嬢なら見てわかるでしょ?」


「うん!! わかる。手伝うから、終わったら一緒におやつ食べましょう?」


 エイドは深いため息をついた。


「制服……着替え」


 私はエイドの持っていた資料を奪うと、資料を書棚に戻していく。


「これ終わったら着替えるわ。そして、エイドがお茶の用意をしてくれているうちに着かえちゃうから」


「はぁ、わかりました」


 私は早くエイドとお茶を飲むために急いで資料を棚に戻したのだった。




「どうかな? 美味しい?」


 私は緊張しながらエイドに味を尋ねた。


「……この茶葉の蒸らしの時間、短いと思いますので65点です」


「精進します!!」


 私も自分の入れたお茶を飲んだが、確かに少し蒸らし時間が短い気がした。


(なるほど、この茶葉はもっと時間をかけて蒸らす必要があるのね……)


 改善点を考えながら飲んでいると、エイドが呆れたように言った。


「普通、執事が入れるんですが……」

 

「エイドにお茶を入れてもらうのも嬉しいけど、いつか私のお茶を飲んでおいしいというエイドの顔が見たいのよ!!」


 エイドが呆れたように言った。


「そうですか……ご苦労なことですね」


 エイドは相変わらずの態度だが、エイドに『迷惑かな?』と聞いても『別に』と答えてくれるのでお言葉に甘えて可能な限りエイドの側にいる。


「あ、そうだ。エイド。今度の週末ダンスパーティーの衣装選びに行くからよろしくね」


 エイドは、お茶の入ったカップを置くと私を見ながら答えた。


「ええ。執事長から聞いています。護衛と、あと荷物持ちとして行きますよ」


 私としてはエイドとのデートのつもりだが、エイドにとっては仕事だ。

 少し淋しいが、エイドと一緒に出掛けられるだけで最高に幸せなので問題ない。


「その日は、一緒にご飯も食べて、最近話題のケーキを食べられる喫茶店にも行くからね」


 エイドに遠回しにデートだと伝えるとエイドが眉を寄せながら言った。


「昼食の後に、デザートを別の店で? ……お嬢ドレス大丈夫ですか?」


 エイドが心配してくれてる!!

 嬉しい!!


「大丈夫!! お昼は控えめにするし、デザートは食べるけど、その日の朝稽古と夕稽古はいつもより長めにするから!!」


 エイドは「ああ、なるほど」と言うとわかりました、と答えた。

 どうやら私とのデート(向こうは仕事)の件を了承してくれるようだ。

 

(やった~~~!! 無駄なことに費やす時間はありませんって断られなかった~~!! 最高!!)


 私はエイドに却下されなかったことが嬉しくて、週末がさらに待ちきれなくなったのだった。

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