第2話 休み明けがつら過ぎる
休み明けはいつもつらい……
(ああ、休日が終わってしまった……今日からまた学園が始まる……)
私が重い足取りでのろのろと準備をしていると、侍女のアイリーンが笑顔で言った。
「お嬢様。また、五日間学園に行けば、お休みが来ますよ!!」
私は一度アイリーンを見て、視線を逸らすと肩を落としながら言った。
「はぁ~~休み中はすぐにエイドを見に行けるのに……学園だと半日もエイドの顔が見れない……それが五日間も……苦行……ああ、エイドが一緒に学園に通っていたらよかったのに……」
私がげんなりしていると、アイリーンがさらに、にっこりと笑いながら言った。
「お嬢様の悲しむお気持ちはわかりますが……いいのですか? そんなに準備に時間をかけていると、朝のふれあいの時間が減ってしまいますよ!?」
私はすぐに姿勢を正した。
「そうだわ!! 今日は週の始め!! いつもはこの時間は庭掃除をしているエイドがエントランスで見送りをしてくれる日!! 早くエイドに会わなきゃ!!」
「(執事長、ナイスシフト変更です!!)」
アイリーンがニヤリと笑った気がしたが問題ない。
私は一秒でも早くエイドに会いたいのだ!!
そして私はまんまとアイリーンに乗せられて、高速で準備を終わらせると、エントランスに走った。
するとエントランスには大好きなエイドが立っていた。
「エイド!!」
私は階段を走る時間が惜しくて、二階から手すりを超えて飛び降りると、空中で一回転をして一階に着地するとそのままエイドに抱きついた。
「エイド、会いたかった!! おはよう!!」
もちろん、エイドが私を抱きしめ返してくれる……なんてことはない。それでも引きはがさせられないので僥倖だ!!
今日は最高の一日だ。
神に、いや、エイドに見送りをするように命じてくれた執事長のロック(64歳)に感謝しかない。
エイドは相変わらずの冷たい声で言った。
「は~~朝から身体能力の無駄使いしないで下さい……おはようございます」
それでもエイドから『おはようございます』とあいさつをしてもらえれれば嬉しくて気分は最高だ!!
私はエイドに抱きつきながら言った。
「だってこれから半日はエイドに会えないのよ!?」
「朝にお会いしたので、正確には8時間です。お嬢」
8時間と聞いて私は絶望的な気持ちになった。
「そんなにエイドに会えないの!? ああ、昨日に戻りたい」
昨日は何かの作業が終わる度にエイドの顔を見に行ったり、お昼ごはんもおやつもエイドと一緒に食べることが出来た。
休日……それはエイドと過ごせるステキな日……
私が、昨日のエイドと過ごした時間を思い出していると、頭上からエイドの声が聞こえた。
「ああ、ほら時間ですよ、お嬢」
エイドにそう言われて私は名残惜しいが、仕方なくエイドから離れた。
「お嬢様~~~鞄、お弁当~~、訓練服~~、ヴァイオリン~~とにかく全部忘れています~~!!」
侍女のアイリーンが学園で必要なものを持って来てくれた。
私は、慌ててアイリーンの元に向かった。
「ごめんなさい!! エイドのことしか頭になかった!!」
そんな私の後ろでエイドが溜息をついた。
「お嬢って、ちゃんと学園生活送れているんですか?」
私はその一言に感動して再びエイドに抱きついた。
「エイドが私のことを心配してくれたぁ~~~嬉しい~~大好きエイド、もう激好き」
「いや……別に心配なんて……」
エイドが眉を寄せると、奥から双子の弟たちが歩いて来た。
弟たちもこの春から一緒に学園に通っているのだ。
おおらかな性格のエラルド。
「あ~姉さん、おはよ。今日の髪型も可愛いね」
絶賛姉の私に反抗期中のジーノ。
「また、エイドにくっついてる……脈なしなのに、よくやるよね? メンタル鋼」
そして、エラルドが私の鞄とお弁当を持ち、ジーノが私の訓練服とヴァイオリンケースを持つと、それぞれ空いている方の手を私の腕を掴んだ。
「はいはい、行くよ。姉さん」
ジーノに容赦なく引っ張られる。
「みんな~~いってきま~~す」
エラルドはにこやかにみんなにあいさつをしているが決して掴んでいる手を緩めることはしない。
私はエイドとの別れが名残惜し過ぎて叫んでいた。
「エイド~~大好き~~いってきます~~」
そして私は二人と共に馬車に乗り込んだのだった。
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