20話.真面目な奴
『っと、皆さんはここで待っていて下さいね。準備が完了次第お呼びしますので。」
試験官は俺達を魔法学校校内の廊下に連れて行った後、そう言って目の前にある部屋の向こう側へと姿を消す。
「一体全体どういう事なんだ……」
俺は愚痴を漏らす。流石にあの試験官の発言には動揺した。吃驚したよ、俺がやっていた試験は用意された台本の上でただ踊らされていただけなんて。
「私もです……まさかこんなにも脱落した人が多かったなんて。…まあ、あの狼の強さからしたら納得だなって思う部分はありますけどね。」
「はは、それは確……」
「五月蠅い。」
突然横にいた男が会話に割り込む。
「今も試験中だぞ、言葉を慎め。」
男からの言葉を受け、俺とルベラは会話が止まる。
「ああ……ごめん。」
「す、すみません、、」
「お前らはもう少し緊張感を持て。」
話が途切れ、そのせいで緊張感が周囲を漂い陰鬱な雰囲気が流れ始める。
…ったく何だよ、感じ悪い。初対面からいきなり険悪ムードじゃん。
そんな事を思いながら暫く待っていると、試験官が部屋から出てきた。
『準備が整ったので今から面接を始めますよ。…先ずは君、あ、それと君も。』
試験官は今さっきのやり取りでも見ていたんだろうか、俺とあの真面目君を指名する。
『二人は部屋の中に入って来て下さいね。』
……ツイて無いな。
俺は嫌々ながらも一緒に面接会場の部屋へと入室する。
『よし、ではそこに座って。』
部屋に入ると、これから合否を判断するのだろう、3人の試験官が並び立って中心にある椅子に腰掛けていた。
「失礼します。」
俺と真面目君は用意された席に座る。
『では、今から面接試験を開始します。…先ずはこの学校への志望動機について聞かせて貰えるかな。』
試験官3人の視線が俺の方へ向く。
……どうやら最初は俺が話すらしい。目線の圧に答え、俺は話し始める。
「はい、自分が志望した理由は……」
一通りの理由の説明を今俺が出せる最大限の敬意を持って話す。
「……と言う理由で志望致しました。」
『ほう、なるほどね……」
これは我ながら中々に良い志望理由を話せたと思う。かなりの好感触だ。
そして次に、真面目君が話題を振られて話し出す。
「はい、私が貴校を志望した理由は……」
奴の喋りは、俺が今まで聞いてきたことが無い程に洗練されており、そして美麗だった。
「……以上です。」
『素晴らしい!』
俺と比べて試験官の反応が明らかに違う。
……負けた。
『では次の質問をしましょうか。』
俺は試験官から出された質問に次々と答えて行く。が、俺が回答すると、全て真面目君にワンランク上の答え方をされ、試験官の真面目君に対する評価が上がって行く。
……俺は試験官からの評価が逆に下がって行っている様で何だかやるせない気持ちになる。
『では最後の質問です。』
そして面接は最後の質問に入る。
『私は何故あなた二人を最初に指名したでしょう?』
……?
試験官が発した余りにも突飛な質問に、俺は少しの間硬直する。
「性格が真反対だから……とかですか?」
俺は戸惑いながらも答えたが、
『うーん、違いますね。君はどう思います?』
間違っていた様で、今度は試験官が真面目君に意見を求める。
真面目君は質問を振られた瞬間、考える素振りも無くこう答えたのだった。
「優秀生と劣等生、と言った所でしょうか。」
……ん?
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