19話.衝撃の事実
「終わったか…?」
人狼は炎で黒焦げになって、無機質に地面へと倒れる。
手元の点数は……207。確か最後に確認した時の点数が82だったな。群れ全体の点数は確か黒人狼3匹の50点と白毛の人狼一匹の100点の計250点だったから……俺が獲得したのは半分の125点。多分ルベラと討伐点数が折半されているのだろう。
俺は今まで興奮して強張っていた筋肉の力が抜ける。
「や、やりましたぁ……」
ルベラももう疲労困憊の様で、その姿からは一切覇気を感じられない。
「…強かったな。」
人狼達は間違いなく強敵だった。もし最初からあの白毛の人狼が戦闘に参加していたら俺達は手も足も出せずに負けていただろう。
「ルベラが居てくれたお陰で勝てたよ、ありがとう。」
「いえいえそんな……ケイさんが助けてくれなかったら私は今頃どうなっていたか…」
奴を倒せた安堵感からなのか、その様な他愛のない会話をルベラと繰り返す。
まだ時間はあるが、もう駄目。これ以上の運動は危険だと体が信号を鳴らしている。
俺は地面に頭を突っ伏し、達成感にただただ浸るのだった。
・~・~・~・~・~・~
そして数分程経った後……30分の試験が終わったらしく、足元に魔法陣が現れて俺達は元の場所へと転送される。
「あっ、戻りましたね。」
俺は立ち上がって状況を確認する。
転送された場所は……元いた試験会場の集合場所。
……人数が少なくないか?試験が始まる前は30人位集まっていた受験生は見る影も無く、今はぽつぽつと数人受験者がいるだけだ。
『えー、試験お疲れ様でした。全員集まったので今から話を始めます。」
試験官らしき人物が前に立ち、話をしだす。
……今全員と言ったか?
「ちょっ、全員って……他にもいたでしょう!」
ルベラがそう叫ぶ。俺も同感だ。余りにも人数がいなさ過ぎる。
『ああ、ここにいない方は皆棄権又は試験続行不可能と私共が判断し今頃病棟か帰路に着いている筈ですよ。』
「なっ……」
そして試験官が続けてこう話す。
『貴方達も遭いましたでしょう、あの狼に。実を言うとアレは私達が受験者と確実に遭遇出来る様に細工をしていたんですよ。つまりここに居ないと言う事は……もうお分かりですよね。』
噓だろ…
俺は信じ難い事実を前にし呆然とする。
『殆どの方は一人で狼を対処していましたが……中には協力して討伐した方もいらっしゃいますね。受験生…と言う敵対関係ながらも手を取り合って討伐する様子には目を見張る物がありました。』
………………。
『……ああ、安心して下さい。点数は全くもって無関係って訳じゃ無いんですよ。これからの面接と今持っている点数を使ってクラス分けをしますから。』
ギギギ、と今まで閉じていた入口のドアが開く。
『さて、無駄話はこのくらいにしておいて、そろそろ面接に入りましょうか。皆さん、ついてきて下さいね。』
そう言って、試験官は入口へ向かう。最初は皆戸惑っていたが…そのうち他の試験合格者がぽつ、ぽつと部屋を出て行く。
「…私達も行きましょうか。」
ルベラがそう言って入口に向かう。
「ああそうだな……今度は龍とかと戦う事にならなきゃいいんだが。」
俺はこれ以上戦闘試験はやめてくれと願いながら試験会場を後にしたのだった。
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