18話.畳み掛け
【!سحر اللهب... نار الإدانة】
ルベラが何か俺には理解出来ない言葉で魔法を唱えると同時に、人狼達の体が一気に燃え上がる。
「……バウッ!?」
体がいきなり燃え上がった4匹の人狼は暴れ回り、何とか火を消そうと俺が魔法を使った事で出来た水溜りに飛び込むが……それで火は消えることなく煌々と燃え続けた。
熱さに人狼達は耐え切れず1体、また1体と倒れる。
……残り…1体を除いて。
「ここまでやってもまだっ……」
燃え上がる白い体は火の赤と組み合わさり朱色に光っている。
その姿はまるで幾つもの死線を乗り越えた孤高のハンターの様だ。
「…しぶといな。」
しかし、他の人狼を指揮していた時の余裕に満ち溢れた表情とは違って、鬼気迫る顔からは以前の余裕は微塵も感じられない。
「意地でも倒れないってか。」
俺は胸の痛みを抑えながらも奴と相対する。
「ケイさん…その傷……」
「大丈夫、そこまで傷は深くない。」
魔法ストックは…あと一本。次の攻撃で決めなければ。
「…来るぞ。」
人狼が俺達の方へ踏み込んで攻撃し、戦闘が再開する。
「私達に炎は燃え移らないので気にせず攻撃して下さい!」
常に挟撃出来るよう人狼を囲う。
そして気を取られている隙を突いて攻撃を……
攻撃を……
「………」
隙が無い。
俺が何か動きを見せると人狼は俺の方へ攻撃を集中させて魔法をだす暇を消し、かと言ってルベラが攻撃する構えを見せるとすぐさまそちらに行って妨害して来る。
「コイツ……手負いでここまで…」
数的不利をものともしない圧倒的強さだ。俺達とは踏んできた場数が違う事が分かる。
「ケイさんすみません私魔力がもう……」
くそっ、どんどん物事が悪い方へ進んで行く。俺ももう残りの杖が一本なので魔法をあと一回しか使えない。
……何か起死回生の一手は無いのか?脳味噌をフル回転させて考える。
その時俺にある妙案が浮んだ。
「ルベラ!今出せる最大の魔法出してくれるか?」
「…!はい、やって見ます!」
ルベラは俺の意図を汲み取ってくれて、すぐさま杖に力を込め始めた。
しかし人狼はルベラが見せた魔法の構えを見逃さず、魔法を阻止する為に凶爪がルベラに振るわれる。
……が、その行動が人狼にとって仇となった。
俺の水弾が人狼の背中を撃ち抜いたのだ。
「ルベラに夢中で俺の微弱な魔力で作った魔法に気付かなかっただろ?」
人狼はいつも……魔法を使う瞬間出だしを潰す様に攻撃を放っていた。
俺は考えたのだ、もしかして人狼は魔力の起伏を見て魔法が来るかどうか判断していたのでは無いか、と。だから、俺は賭けた。
人狼は突然の攻撃に体がよろけ、膝を地面に着ける。
「決めろっ!」
強力な魔法を揺動に、威力の弱い魔法で奇襲。
そして、
「……行きます。」
冥府に送る灼熱の業火が人狼に直撃したのだった。
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