17話.再戦、それは想像以上に苛烈
まさかルベラだったとは……まあ良い、今は人狼達をどうにかする事が先決だ。
「なあ、ルベラは何の魔法使える?」
「えっと、私は炎魔法使えます!」
炎魔法……。俺との相性は最悪だな。
俺も炎魔法が使えない訳ではないが、この一ヶ月間教えて貰ったのが水魔法なので魔法の強さや完成度の高さは圧倒的に水魔法の方だ。
しかも杖のストックはあと三本。その三本で四匹の人狼を狩らなければならない。
「…来るぞ!」
そうこうしている間に人狼から攻撃が襲って来る。
「ルベラ!背中は預けた!」
「は、はい!」
二人で背中預け合いながら後ろ側の攻撃をケアしつつ、二人で強力して人狼達の攻撃を躱す。
「あっ、攻撃来ます!」
「っあっぶね!」
人狼の攻撃が俺の頬を掠めた。
「死角からも攻撃が来るので気を付けて!」
引っ搔き、蹴り、そして場況に応じた撤退。どれも隙が無く完璧な行動だ。
その統率の取れた行動の要になっているのはあの白毛の人狼だ。奴は他の人狼には指示を出すものの自分からは攻め入ってこようとしない。
「お前は部下に指示出して戦闘の鑑賞かよっ……!」
奴に向かって魔法を放とうとするが、気配を察知した残り三匹の人狼によって阻まれる。
「…クソっ!」
このままの状態が続いたらいつか人狼の攻撃をモロに受けて負けてしまう。
何とかこの状況を打破しなければ……
「……ケイさん。」
ルベラから話しかけられる。
「成功するかは分かりませんが…私に策があります。三十秒程時間を貰えますか?」
「……それまで時間を稼いで欲しいと?」
「はい。」
三十秒……正直言うとかなり長い。
ルベラが準備をしている最中俺は1VS4で襲い掛かって来る人狼達を相手にして攻撃を捌き続けなければならないのだから。……だが、かと言ってこのまま戦っても勝機は見えそうに無い。
「……分かった。」
賭け、だな。
「あっ、ありがとうございます!では……詠唱に入るので援護お願いします。」
そう言って、ルベラは俺には解らない異国の言葉で詠唱に入る。
人狼達は俺達が何かしようとしている事に気付いた様で、ルベラに向かって攻撃を仕掛けて来る。
「させるかよ。」
俺は杖を持ち魔法を唱える。
【……
水源から水が溢れ出す……が、一度使った技だからなのか人狼達も対策して木にしがみついてやり過ごそうとしている。
…杖ストックはあと二本。
「ハァ…ハァ……」
魔力消費が激しい。グラフィンともなると1分程度には時間を伸ばせるのだろうが、俺はまだそこまで修練を積んで無いので10秒程出すので精一杯だ。
暫くして水の放水が止まり、人狼達からの攻撃が再開する。
「…くっ!」
人狼の攻撃位置を見定めながら俺が常にルベラの前に立つ様にしてヘイトを集める。
「あと何秒!」
「すみませんあと10秒程……!」
残り10秒。その長いとも短いとも捉えられる時間を必死に耐え続ける。
とその時、
「やばっ……」
今まで静観していた白毛の人狼が突如動き詠唱を妨害する為大きく踏み込んでルベラの前で爪を振るおうとしたのだ。
「させるかっ…!」
俺はルベラを守る為に……身を挺して人狼の引っ搔きを体で受ける。
「……っ!」
痛い。胸元が血で熱くなるのが分かる。
だが、
「ここで引いたら勝ち目が無くなるんだよ!!」
俺は杖を白毛の人狼に向けて放つ。
【…
俺が放った一撃は……白毛の人狼を狙ったものの、他の人狼に庇われてしまう。
くそっ、最後までアイツには敵わなかったか……
……でも、俺達の勝ちだ。
「……準備完了しました!行きます!」
ルベラの長い詠唱が終わり、人狼達に向けて魔法が放たれた。
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